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牙狼<GARO> ハガネを継ぐ者 第10話「惑(まどう)」感想

今こそ超える時

幻影の中にオビがいないことにちょっと安心した自分がいたり……

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  • 弱き己を斬り裂け

 ムツギ法師の企みによって誘惑者に惑わされ、闇に呑まれてしまった創磨。今回の牙狼ハガネは暴走してしまった創磨を止める流牙と、ムツギ法師に立ち向かうコヨリそれぞれの戦いが展開されました。形は違えどどちらも仲間を相手に止めることになるという点で、流牙たちにとっては中々に辛い対立を強いられていたのが目に焼き付きます。

 中でも闇に呑まれた創磨が謎の幻影によってサブタイ通りに“惑”わされる様子が印象的。流牙に襲い掛かっているように見えて、その実ロンやコヨリ、ゴドウといった面々を相手に剣を向けているのが珍妙ながらしんどかったですね。彼らの幻影から「所詮はしがないハガネ」「ゴドウを超えられるわけない」「その程度で驕っているのか」と言われる様は、本来の彼らを知っているからこそみんながそんなこと言うわけないじゃん!と内心叫びたくなりました。

 しかしこれらの叫びが創磨が内心思っている自身のコンプレックスだと考えることも出来ます。父の跡を継ごうと必死になるものの上手くいかず苛立ちを募らせていた創磨でしたが、実際は誰よりも自分の未熟さに憤っていたのかもしれません。それでも必死に隠していた弱さを、自分の身近な相手に化けた幻影によって指摘されているのが今の状況なのかと思われます。(ちなみにオビの幻影が出てこなかったのは流石の創磨も彼が悪口を言う姿を想像出来なかったのでしょう……多分)そのため創磨を呑み込んだ闇の悪辣さに反吐が出ると同時に、虚勢と共にさらけ出してしまった彼の心に同情を覚えました。

 だからこそ、創磨が自分の弱さ=闇を乗り越える瞬間に興奮しましたね。流牙が全てを察したうえで稽古のように付き合い、創磨の闇への克服を導く展開は意外ながら胸が熱くなるものがありました。「その苦しみの先に答えがある」というかつて闇を乗り越えた流牙だからこそ言えるアドバイスに加え、ハガネとしての誇りも思い出させる話術もグッド。最終的に創磨が自分自身の幻影を切り裂くことで、彼が乗り越えてみせたのだと実感させてきた時などは感極まってしまいます。幻影ゴドウとの実質的な親子対決のアクションもド派手で、ここまで不遇気味だった創磨の確かな成長を見せつける見事な内容だったと思います。

 

 

  • 師の歪みを正せ

 創磨とはまた別に大きな奮闘を見せていたのがコヨリ。ムツギ法師を止めるべく彼女に果敢に攻撃していく彼女の活躍も今回の大きな見どころでした。何といっても豹変していた師に対しても即座に戦いを挑むスピーディーな行動力に驚きましたね。師匠にして母親代わりと言える存在が、実は裏切り者だったという事実をいきなり突き付けられた直後に動ける点には舌を巻くばかり。上述の創磨が自分自身を乗り越えるまで不安定気味だった分、コヨリのメンタルの強さが際立っていたとも言えます。

 特にムツギ法師の考えを否定し、説得をする姿に惚れ惚れしました。陰我を持つ人間の粛清などという大それた考えを「間違っている」とはっきり口にしてくれた時のブレない目つきなどは素晴らしいの一言。面と向かって言うからこそムツギ法師に確かに伝わってであろうことを実感させられます。(さっきまで笑っていたのにコヨリに否定されてからスン……と黙るムツギ法師が地味にじわる)そのうえで弟子として、娘として家族であるかつてのムツギ法師に戻ってもらうよう必死に呼びかける構図にコヨリの優しさも伝わってきますね。

 結果的にはムツギ法師にボロボロにされ敗北を喫してしまったものの、彼女に効く一言で成果を出しただけでも十分な働きだったと思います。何度攻撃を受けても立ち上がり、視聴者が思っていたことにも触れていくコヨリの頼もしさは十分に描かれたと言えるでしょう。流牙というコーチを経て自身の弱さと向き合っていた創磨に対し、コヨリは万全な精神面で超えるべき師に立ち向かったと言えますね。

 

 

 今回は創磨とコヨリ、2人の若者の成長回とも言える内容でした。自分にとっての弱さと向き合った創磨と師であり母である相手に心の強さで挑むコヨリ、まさに発展途上な魔戒騎士と法師の成長物語とも捉えることが出来ます。それぞれ別の場所で戦っている、似たようなポーズをとる2人の構図が切り替わる演出からも、制作側の若者たちへのエールが感じられたとも言えるでしょう。

 

 そして着々と積み上がっていく創磨のザンゴ装着のフラグが今回もありましたね。破滅の門を封じていた心滅獣身の鎧が飛び散ったこと、そこにゴドウの姿はない(つまり跡形もなく消滅してしまった?)などショックな部分も大きいです。が、その分終盤に創磨のザンゴが拝める可能性が高いです。

 ただここまでくると創磨にはハガネの鎧のままで戦ってほしいところ。というのもタイトルはもちろんのこと、前半で「魔戒騎士の鎧に上も下もない」ことや「ハガネであることの誇り」を散々触れてきて創磨がハガネを捨てるのはあまり想像出来ないからですね。父との継承については閃光剣舞をマスターするなどで十分表現出来ると思いますし、ハガネとしての大きな見せ場に期待してしまいます。

 

 

 さて終盤まで突入してきて次回はムツギ法師との戦いがさらに加速。本来の姿を取り戻したという破滅の門、そこから出てきた禁断の果実を口にした法師が邪悪な怪物へと化すらしいのですが、ここまでくると戻ってこれないことが何となく察せられてしまいますね。コヨリの説得を受けた以上何らかの形で改心する姿を見せてほしいところですが、ムツギ法師相手の決戦はどうなるのでしょうか。

 

 

 ではまた、次の機会に。