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機動戦士ガンダムSEED FREEDOM 感想

そしてそこに君が

必ず待っている

自分たちの正義と運命を決める、自由と愛の物語

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 2002年に放送された『機動戦士ガンダムSEED』。21世紀最初のガンダムとして始まった本作は、続編の『機動戦士ガンダムSEED DESTINY』や他外伝など様々な形で話題を呼びました。僕自身、初めて本格的に視聴したガンダム作品としてこの作品の鮮烈さは今でも印象に残っています。

 そして2006年に発表された劇場版が、約20年の時を経てついに実現。長いこと音沙汰がなかったので頓挫したとばかり思っていた企画の再始動には驚きましたね。というわけで映画館にて鑑賞したわけですが、予想以上に「僕らが好きなガンダムSEED」に振り切っている作品としての仕上がりに大いに感動しましたそうそうコズミック・イラとかSEEDの空気感ってこんな感じだと改めて認識させてくれるだけでなく、こちらが見たいと思っていた要素を拾いテンションを挙げてくれるものがありました。また作品に対して少なからず抱いていた不満や疑問点に対し、本作はある意味力技で解消させてくれるシンプルなパワーに満ちていたように感じます。というわけで今回は、そんなガンダムSEED FREEDOMの感想を書いていきたいと思います。

 

 

※ここから先は映画の内容に触れているのでネタバレ注意!!

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  • 作品に対する“愛”情に気付く瞬間

 本作の魅力といえばまず語るべきはファンサービスの厚さとそこからくるガンダムSEEDの“味”の使い方ですね。冒頭からOP「FREEDOM」をバックに活躍するキラたちヤマト隊の戦闘で観ている側のテンションを上げ、いきなりファンの心を鷲掴みにしてきました。フルCGを駆使することで縦横無尽のバトルシーンを演出出来ていたのも大きかったですね)その後も作中世界の深刻さやキラたちの苦悩を描きつつ、最終的にド派手なバトルで爽快感をもたらしてくれる物語の密度は凄まじかったですコズミック・イラという物語の舞台がどういうものなのか、主人公たちのキャラクターやそれぞれが抱えているものは何なのか。それらをわかりやすく語っており、「『ガンダムSEED』はこういう作品である」ということを再認識させてくれる構成に仕上がっていたと言えます。

 特に終盤の決戦は期待していた多くの人物と機体の活躍が見どころとなっていました。テレビシリーズでは不遇のままで終わってしまったシンとデスティニーガンダムが名誉挽回するかの如くを大暴れするわ、デュエルガンダムバスターガンダムがまさかの改修されて再登場を果たすわ、予想外の連続ながらファンが望んでいた光景をこれでもかと見せてくれたのは感無量と言う他ありません。過去の評価点や惜しいところをまとめて指摘しつつ、昇華してくれた点はまさに清濁併せ呑んだ作風と言えるでしょう。かつてテレビでSEEDを見ていた人たちが「この作品が好きだったんだ」と思わせてくれるほどのパワーが本作にはありました。

 

 

  • 彼らへの“愛”着を抱かせるもの

 他にも全体を通して登場人物の多くに愛着を覚えるシーンの数々も見逃せません。テレビシリーズではイマイチピンとこなかったキャラクターも、丁寧な心情描写で以て観ているものに親近感を湧かせてくる内容がまた魅力的でした。例えば『DESTINY』では達観した態度が多かったキラとラクスの2人ですが、本作ではコンパスでの活動からすれ違うことが多くなり、思うように過ごせない様子が目に付きました。新装備完成に尽力するあまり苦悩し周囲を蔑ろにしてしまうキラと彼を癒そうとするものの上手くいかないラクス……特にキラの帰りが遅くなることでラクスの料理にラップがかけられるシーンは妙な生々しさがあって胸が痛みましたね。

 そんな両者の人並みの姿を描くからこそ、クライマックスで通じ合う瞬間に感動したとも言えます。キラに限らず彼に頼られているかどうかでテンションが異なるシンなど、他の人物たちも等身大の悩みに触れながら後半それを解消していくんカタルシスを用意していたのが素晴らしかったです。おかげでテレビシリーズを視聴していた時以上に、彼らのことが好きになれた気がしますね。それぞれの日常的な描写や他の面々との絡みが濃密に描かれることで、彼らを「その世界に生きる1人の人間たち」として捉えやすくなっていたと思います。そういった意味でも、本作はファンが見たかった・好きだったガンダムSEEDに向き合ってくれていたと言うべきでしょう。

 

 

  • 使命と役割を破るのは他者との“愛”

 本作の語るべきポイントとしてもう1つ外せないのは「愛」の物語であるという点。DESTINYで長いこと語られてきた「デスティニープラン」の是非も含め、SEEDの世界の根本に関わっていくストーリーの答えには思わず膝を打ちました。

 遺伝子操作で生まれたコーディネイターが生まれたことで操作されていないナチュラルとの絶滅戦争が続くことになったコズミック・イラ振り返ってみるとその世界観の多くが遺伝子や才能によって与えられた「役割」に縛られた者たちの物語でした。力を持っているが故にそれを活かさなければならない、組織などにおける自分の使命を果たさなければならないと苦悩する様子が多く見られたと思います。本作においてはまさに上述のキラがそれで、自分が何とかしなければと強迫観念に駆られていたのが印象に残りましたね。そこに本人の自由意志や感情が入る余地がなく、その究極とも言えるデスティニープランを為そうとするファウンデーションの恐ろしさも強調されていたと感じます。

 そんな周囲によって敷かれたレールを否定するのが他者と紡いだ「愛」というのが素敵でした。自分で決めた相手と結ばれることを望むベタな流れはもちろんのこと、仲間と力を合わせたり共に憎悪に耐えたりすることで周囲の流れに反発する過程は中々にスッキリさせられるものでした。「こうしなければならない」という運命に自分の考えで抗うというのは当然の流れながら、それを他人との繋がりで以て証明するのはロマンに溢れていると思います。(逆に「愛が無ければ才能とかに縛られて孤独になる」という残酷な面をアグネスなどで描いていたのがまた秀逸)

 これらの描写からは役割という殻を破るには個人の力では無力、でも誰かと一緒ならば未来を切り開ける……といったメッセージが感じ取れますね。長いこと続いていたSEEDの物語の閉塞感を、どこか夢のある考えでぶっ壊してもらった気分です。自分1人で抱え込んでいったが故に迷走したり失敗したりしてきた登場人物たちに、「1人で悩まず仲間に相談してもいいんだよ」と思っていたことを劇中で形にしてくれたという点で、個人的にも非常に満足度の高いストーリーでした。

 

 

 では以下、各キャラクターと機体についての所感です。

 

 

キラ・ヤマト

 ご存じSEEDの主人公。上述の通り本作では全体を通してキラの苦悩が描かれており、デスティニープランを否定したことでかえって戦争が増加したことに頭を抱えるなど見ていて可哀想になる場面も多かったです。加えて弱音を吐く場面も印象的で、「君たちが弱いから」といったセリフの数々にはSEED序盤で戦うたびに傷付いていた若い頃のキラの面影を見ました。(そのためDESTINY時代の超然としたキラはだいぶ無理していたんだな……とすごく納得させられたり)

 まぁその分彼の人間臭い部分を見れて嬉しかったですし、終盤のラクスとの再会に喜ぶ様子には心の底から感激しました。本作はスーパーコーディネイターとしての力や使命感から、彼を解き放つための儀式のようなものだったのかもしれないと思ったくらいです。ラストシーンのラクスとの逢瀬まで含め、背負っていた多くのものを解消したキラに愛着が湧くと同時にホッとさせられることが多かったですね。

 

 

ラクス・クライン

 本作のヒロイン。彼女に関してもキラと同じく悩み苦しむ場面が多かったですが、こちらは無理を重ねるキラの安らぎになろうと努力する姿が目に焼き付きました。自宅で大量の手料理(キラへのささやかな嫌がらせ故に料理が全体的に茶色いのがじわじわくる)を作って待つものの彼の帰りが遅くなったり、家庭的な場面も増えてお労しい一面も多かったです。そしてこれまたキラと同じように、その辺りがラクスのヒロインとしての可愛らしさに繋がっていたと思います。

 あとはやはりオルフェたち相手に毅然とした態度を見せていたのが最高にカッコよかったです。自分が作られた理由や決められた伴侶がいることなどを告げられても動じることなく、キラへの想いを揺るがず見せつけるメンタルは流石といったところ。「必要だから愛するのではありません、愛しているから必要なのです」という言葉は上述の愛の物語に相応しい名セリフであり、ラクスという人物の心の強さに20年越しに惚れることになりました。テレビシリーズでは何を考えているのか読み取りづらいところがある彼女のことも、いつの間にか好きになることが出来ましたね。

 

 

アスラン・ザラ

 多分この映画で最もFREEDOMな男。中盤まで全く出番がなくて何やっているのかと心配していた中、ピンチのキラたちの前に後述のズゴックで参戦した時は愕然としました。神妙な面持ちで現れどっかで聞いたようなBGMと見覚えのあるユラリとした動きでシリアスな笑いをもたらしてくるのが卑怯です。その後戦闘中にカガリに関するハレンチな妄想を繰り広げている事実も判明しますし、途中まで不穏だった空気感を全てぶっ壊してしまいました。

 しかしそんな自由なアスランだからこそキラの悩みや本作の暗い雰囲気にメスを入れてくれたとも言えますね。キラをボコボコにして説教するシーンはまさに彼の親友であるアスランだからこそ出来るもので、自分1人で悩むことを良しとしない迷いを捨てた強さをここぞとばかりに見せつけてくれました。その他にも「強さは力じゃない、生きる意志だ!」というセリフはSEED最終回にカガリに言われた言葉を意識しているようでニヤリときますし、前向きかつポジティブになったアスランの頼もしさをこれでもかと堪能した気分です。

 

 

シン・アスカ

 まさかのわんこ系後輩と化した主人公。キラと同じ部隊に所属する中で隊長の彼を思いっきり慕い、頼られた時の嬉しそうな返事には思わず顔がほころびました。その他にも立食の席で山盛りのピラフを食べていたりルナマリアに悪ふざけして引っ叩かれたりと、全体を通して子どもっぽい場面が多くて可愛らしかったですね。まさかここにきてシンにこうした愛らしさが生まれるとは思ってもみなかったです。

 一方で終盤の戦闘シーンでは一騎当千の実力を発揮し、DESTINY時代の不遇の称号を見事に返上してみせました。こちらもアスランと同じく迷いを捨てたらここまで強くなること・守るものがある時はとても頼もしいことを見せつけてくれたと言えます。他にも何故か特級呪霊みたいになったステラや闇が深い描写など、可愛いだけではない面も見せてシンの抱えるものの大きさを魅せてきたのも特徴的。結果的にシンという人物の趣深さを味わえましたね。

 

 

オルフェ・ラム・タオ

 ファウンデーションの宰相にして本作の大ボス。登場してからいきなりラクスに近づく様子を連発し、劇中のキラと鑑賞している人たちの心を大いにザワつかせてきました。しかし話が進むにつれ情けない面も目立ち、ラクスを押し倒してもそれ以上はいけないシーンなどは何とも滑稽に映っていたと言えます。見守ってくれていたイングリットの不当な扱いもあり、全体を通して哀れなキャラクターに仕上がっていましたね。

 ただそういったキャラだからこそ魅力的だったとも言えます。母親に与えられた使命に疑問を持たず全うしようとする精神が、キラとラクスの自由な姿によってボロボロに崩れ去っていく過程は中々に悲惨でした。上述の通り役割に縛られた者たちが多いSEED世界において、彼はまさに愛を手に入れられなかったために殻を破ることが出来なかった存在なのでしょう。そういった運命に抗えない心の弱さのおかげで、個人的にどこか嫌いになれない人物になっていました。

 

 

マイティーストライクフリーダムガンダム

 キラの「ストライクフリーダムガンダム弐式」のパワーアップ形態とも言える最強の機体ラクスが搭乗した「プラウディフェンダー」と合体し、歴代のフリーダムの中でも屈指の豪華なビジュアルに変化した時の衝撃は計り知れなかったです。合体してからの圧倒的な戦闘力も壮観で、敵の攻撃を一切通さず自分は周囲の戦艦などを一掃する絵面のインパクには度肝を抜かれましたね。(あとどっかのジャンク屋が関わっているであろう日本刀の装備にクスっときたり)フリーダムもついにチートガンダムの仲間入りを果たしたか……とちょっと感慨深いものを覚えつつ、映画だからこそ許されるような超絶戦闘力に見惚れることとなりました。

 

 

インフィニットジャスティスガンダム弐式

 アスランの「インフィニットジャスティスガンダム」を改修した機体……なのですが、これをまさかの「ズゴック」の中に隠していたという事実には色んな意味でびっくりしました。SEED世界に突如現れたズゴックだけでも強烈なのにこれは本当に卑怯(誉めてます)です。中身が現れてからの近接戦闘での強さはさらに極まっており、インフィニットジャスティスの全身ビームサーベルがより凶悪になっていた印象です。敵のシュラへのトドメとなった頭部アンテナのビームサーベルが『ウルトラマンガイア』のフォトンエッジみたいだな~、とか思いつつ、こちらの強さも味わった次第です。

 

 

デスティニーガンダムSpecⅡ

 シンの「デスティニーガンダム」の改修型。見た目の変化はあまりない分、DESTINY本編でのデスティニーそのままのイメージで見ることが出来ました。(一方で後々「レイのレジェンドガンダムを意識したカラーリングが施されている」と聞いた時にはエモいと思いましたが)やはり敵のアコード幹部が駆る「ブラックナイトスコード」を複数相手にしての大立ち回りが凄まじく、脊髄反射のみで動いたりシーンは衝撃的。中でも突然分身技を披露してきた時は仰天しましたね。これまで語られてきたデスティニーのスペックの高さを存分に見せつけ、本編でのイマイチな印象をあっという間に払拭させてくれました。ガンプラなどでデスティニーを愛でていた身としては感無量の一言です。

 

 

(他にも全シルエットを披露した「インパルスガンダムSpecⅡ」やまさかのミーティアを使った「デュエルブリッツガンダム」に「ライドニングバスターガンダム」、敵サイドでは「ブラックナイトスコード カルラ」が印象的。無論「ライジンフリーダムガンダム」や「イモータルジャスティスガンダム」、ボロボロの「デストロイガンダム」などもありますが、全て語るとキリがないので割愛します

 

 

 というわけでSEEDFREEDOMの感想でした。いやぁ20年待った甲斐があった!とも言うべき作品でしたね。SEED系列に対して様々な感情を渦巻かせつつ、押し殺してきたという人ほど刺さる内容になっていたと思います。僕自身観終わった頃には興奮気味で映画館を後にしており、何だかんだでガンダムSEEDが大好き!となれました。そういった想いも込めて、本作を観れて本当に良かったと思います。

 

 

 ではまた、次の機会に。