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仮面ライダーガッチャード 第30話「ライバル参上!?ガッチャとジュリエット」感想

命短し恋せよガッチャ?

何の脈絡もなく突然襲い掛かってくるドンブラ濃度に耐えられなかった

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  • 心と向き合う乙女の対比

 4月に突入し、宝太郎たちもついに3年生に進級したところから始まった今回のガッチャード。冒頭から宝太郎の幼馴染である「九十九静奈(つくも・せいな)」が転入してきてりんねが表情を曇らせるなど、初っ端から学園青春関係で波乱を巻き起こす展開にニヤリときてしまいました。ここ最近高校生らしいエピソードが全くないと思っていた矢先、甘酸っぱさと苦みを両方持ち合わせたラブコメをお出しされたのですからテンションが上がってしまいます。

 何といっても静奈ちゃんが明らかに宝太郎を意識したムーブの数々をかましてくるのが印象的ですね。自分から宝太郎にグイグイ来て、さらには彼の隣にいるりんねの関係を聞いて牽制も仕掛けてくるやり手っぷりには、戦慄と感嘆を同時に抱いてしまいます。(宝太郎とりんねが「同じ指輪をしている」ことを指摘してきた時はそれ劇中で言及しちゃってもいいんだ……!?と内心びっくりしました)周囲の空気も気にせず突っ走り、自分の恋愛を果たすために努める彼女のパワーには尊敬の念すら抱いてしまいますね。

 そしてりんねがそんな静奈ちゃんと宝太郎を見て、わけもわからぬまま心を揺らしていく様子が目に焼き付きました。何故か2人のやり取りにムカムカモヤモヤするものの、その正体を把握しきれていないのが何とも初々しいと感じます。「モヤモヤしているりんね」からしか得られない栄養、あると思います。この辺りはりんね自身の真面目さもあるのでしょうが、それ以上に父親の件などで自分に正直になれずにいたのが原因に思えますね。上述の静奈ちゃんとは対照的に自分の心の内を知らなかったりんねが、それらを向き合う岐路に立たされていると感じさせてくる展開になっていたと言えます。これらの問題にりんね自身が気付けるのかに注目したいです。

 

 

  • 親に縛られた2人?

 りんねに関してはもう1つ、アトロポスの非情な手口に曇らされる終盤も見逃せません。「ボクはりんねちゃんに頼まれたんだから」発言で2人の確執を広げ、りんねを追い詰めるアトロポスには舌を巻くばかり。(25話の感想でも書きましたが、「君のせいだ」と相手を追い詰めるやり口は本当にグリオンそっくりですね……)加えてりんねも静奈ちゃんに思うところがあるせいで否定しきれずにいるのが何とも生々しかったです。上述のりんねの問題の隙を、アトロポスに付け込まれる過程には序盤の空気感を思い出しました。

 そうしてりんねのメンタルを攻撃するアトロポスですが、彼女が「グリオンの仇を討つ」という目的の元行動していたのが目に付きましたね。グリオンがそんなに慕われていたというのは結構意外な話ですが、アトロポスや彼女のお兄様たちにとってかけがえのない“父親”であることを考慮すればわからなくもありません。グリオンに囚われているアトロポスには複雑な気持ちになりますが、実質父のことを背負っているという点ではりんねに共通するところがあるというのは非常に興味深いです。

 そこでちょっと注目したいのが今回の演劇部の話に出てきた『ロミオとジュリエット』との関連性について。ウィリアム・シェイクスピアの代表作(なお三大悲劇には入らない模様)であるこの戯曲は愛し合う2人が家に縛られて結ばれずにいる構図が有名ですが、ある意味でりんねとアトロポスも似たようなものかもしれないと感じました。恋愛とは大きく異なるものの、父親同士の対立の延長線上で仲良くなれそうな両者が引き離されているのはロミオとジュリエットに当てはまるものがあると考えます。少々こじつけ臭いですが、そうした風にりんねとアトロポスの友人関係がどうなっていくのか見ていきたいところです。

 

 

  • 自由な三女と悲痛の次女

 本筋とはまた別のところで波乱を呼んだのがラケシス関連。ミナト先生たちに力を貸した彼女がその後何をしていたのか気になっていた中、鏡花さんの助手をしているというまさかの状況に驚かされました。グリオンという目の上のたんこぶが無くなってもアトロポスからの処罰を警戒しているのはわかりますが、それを差し引いてもいけしゃあしゃあと味方側に付く面の皮の厚さは相変わらず凄まじいですね。身の周りの危険を察知する理性的な部分と、そのためになりふり構わない態度の合わせ技には改めて感服せざるを得ません。

 一方クロトーもラケシスに戻ってくるよう説得する姿勢は相変わらず。しかしその過程でスパナと戦い、ドレッド参式に変身しての副作用に苦しんだり反撃されたりと散々で非常に可哀想でした。(余談ですがヴァルバラドでは参式の純粋なスペックに敵わないものの、変身している側の技量で拮抗出来る構図になっていたのがここすきポイント)ラケシスにも庇われ悲痛な叫びをあげる彼女の姿は特に胸に突き刺さります。妹想いで彼女たちのために体を張れる反面、その健気さ故に不憫な目にばかり合っている印象を受けますね。

 それにしてもりんねとはまた別ベクトルで真面目で損をしているクロトーを見ていると、ラケシスの自由さが一周回って素敵に見えてきました。今回の彼女は鏡花の陣営に留まることを選びながらも、スパナに追い詰められたクロトーを庇ったりと何だかんだで家族も想っていることがわかりました。どっちの味方なんだお前は!?といいたくなる反面、これくらいわがままで正直な方がかえって気楽で清々しいと感じますね。彼女レベルにまでなれとは言いませんが、りんねもクロトーもこの奔放さをちょっと見習ってもいいかもしれません。

 

 

 というわけで30話はほのぼの恋愛エピソードと見せかけて縦軸がガッツリ進むタイプの回でした。りんねとアトロポスの関係やラケシスの処遇など、グリオンを倒した後だからこそ進めるべき議題をしっかりと描いているのは好印象です。それでいて前回に引き続き自由な加治木(ナチュラルにジュリエット役になろうとするシーンには思わず二度見してしまいました)や卒業後もOBとして協力してくれる蓮華と錆丸たち、味方側のコミカルな描写にほっこりさせられます。

 またりんねたちの描写で影が薄くなってしまいましたが、演劇部の部長「御厨創(みくりや・はじめ)」が演劇廃部に焦る過程と、彼の夢であるロミオとジュリエットのくだりも印象的。個人的には凄いざっくりとした形ですが、あらすじを紙芝居で説明してくれたのが面白かったですね。ロミジュリをあまり知らない子どもたちにも端的に伝わる良い説明だったと思います。

 そして今回、ある意味で最も衝撃的だったのがお笑い研究会ですね。タカハシシンノスケさん&鈴木浩文さんという、『暴太郎戦隊ドンブラザーズ』で主演だった2人が出てきた時は本当に仰天しました。(ちなみに同日放送された『爆上戦隊ブンブンジャー』では『ウルトラマンブレーザー』のヤスノブが出てきてさらにびっくり)しかもドンブラザーズのメンバーなら本人がいきなりコントをやってもおかしくない、と感じてしまうので余計おかしかったです。本編とはまた別の形で、こうしたゲスト出演による笑いを提供してくれるのはファンとしても非常に面白いと感じるところです。

 

 

 さて次回はりんねの葛藤の続きが描かれる模様。ミナト先生の激励を受けながら立ち上がり、今回ラストのピンチは何とか退けるようです。しかし深まってしまった静奈ちゃんとの溝やジュリエット役の件など、問題は山積み。しかも予告のラストではマジェードが後ろから撃ち抜かれる不穏なシーンまで映っていたので胸がザワついてしまいます。何よりこれらの問題に対してりんねはどのような答えを出すのか、非常に気になるところです。

 

 

 ではまた、次の機会に。