新・メタレドの楽しんだもん勝ち!

様々な作品について語ったり語らなかったりするサイト

仮面ライダーガッチャード 第21話「マッドウォリアー!黒炎のヴァルバラド!」感想

俺の美学は燃え尽きない

ミナト先生ありがとう無茶しないでね!

.

.

.

.

.

.

.

.

.

.

  • 胸を焦がす想いが黒炎を制す

 今回のガッチャードは待ってました、スパナの仮面ライダーになるまでの物語。グリオンの悪趣味な謀略によって復讐の鬼になっていたスパナが、憎しみや怒りを乗り越えて立ち上がる過程が丁寧に描かれた見事なエピソードでした。前回が非常にショッキングな内容だった分、それらの鬱屈とした空気を吹き飛ばしてくれた今回の内容は爽快感に溢れていましたね。

 何といってもスパナが「俺は1人じゃない」という答えを出すまでの流れが見事。ドレッド(ミナト先生)に痛めつけられながら無力感に打ちひしがれる中で、死に際の両親や助けてくれた鏡花さんの言葉を思い出すシーンにはホロリときました。両親の死は確かにスパナに絶望や憎悪をもたらしましたが、彼の記憶に残されたのはそれだけではない・愛情も存在していたことがわかっただけでも心が暖かくなります。家族と師匠の優しい想いを受け止めたうえで、憎しみではない感情で炎を制御してみせたスパナの姿は、赤く燃え盛るヴァルバラッシャー片手に振るう絵面も相まって最高にカッコよかったです。ラケシスの「スパナが燃えている……」発言にはちょっと笑ってしまいましたが。

 そんな吹っ切れたスパナにケミーたちも惹かれてついて行く、という構図も興味深かったです。中でも以前からスパナを慕うマッドウィールは自分を再錬成しマッハウィールになることで、彼の隣に並べるように進化する過程は急展開ながらなるほどと納得させられます。他のケミーたちもスパナの生き様に「共鳴」しついて行き、スパナ自身はあくまでケミー側に振り向くことなく受け入れているのが面白いですね。(その中でも助けられたお礼とばかりに両親と穏やかな再会を果たさせてくれたエンジェリードがここすきポイント)宝太郎やりんねのようにケミーに寄り添わない、来るもの拒まずの姿勢もまたケミーとの付き合い方の形の1つということなのでしょう。

 あとはやはりスパナを助けようとした宝太郎たちの奮闘も見逃せません。彼の苦しむ姿を見て少しでも力になろうと鏡花さんのドライバー開発に協力する様子は、今回の感動をより押し上げてくれたと思います。「スパナの憎しみを直接どうにか出来ないけど、いてもたっていられない」とでも言わんばかりの、宝太郎のガムシャラな優しさが身に沁みますね。こういった面も含めて今のスパナは1人ではないことが伝わってきます。まさに孤高なようでいて誰かに支えられていることを肯定的に認める、黒鋼スパナのクールな美学がここに完成した回でした。

 

 

  • 気高き美学を身に纏う、疾走と閻魔の爆錬成

 

ヴァルバラドライバー!

 

   マッハウィール

MACHWHEEL!

イグナイト!

 

ダイオーニ  

DAIOHNI!

イグナイト!

 

ガッチャンコ!

バースト!

 

ヴァルバラド!!

 

 己の炎を克服した黒鋼スパナが枝見鏡花謹製の「ヴァルバラドライバー」をセットし、マッドウィールが再錬成した「マッハウィール」と彼の美学に共鳴した「ダイオーニ」のライドケミーカードを装填・錬成(ガッチャンコ)することで変身した姿「仮面ライダーヴァルバラド」。疑似ライダーのヴァルバラドがついに仮面ライダーとなった形態です。ここまでのスパナの物語とそれに至った証として仮面ライダーの字(あざな)を手にする構図が何ともエモいですね。

 その見た目はヴァルバラドの歪さを残しながら、それをヒーローらしく洗練させたようなデザインになっています。全体的に煤で汚れた作業服のような見た目だったあちらから黒いアンダースーツをベースにしたスタイリッシュなものに変化しており、両肩の突き出た装甲などより刺々しくなっている(この棘の意匠は「炎」と「鬼のツノ」どちらにも見えるのが秀逸)のも特徴的。そして頭部のビジュアルは本来のヴァルバラドの仮面に左右対称の複眼バイザーがさらに重なっており、そこにネジが締められ固定されているという何ともユニークなもの。これはウィールマルガムがヴァルバラドの仮面を引き剥がしたような見た目だったことから、「もう2度と憎しみに囚われて怪物にならないために、仮面が外れないようネジを締め直す」という意味が込められているのかもしれません。

 戦闘では徐々にギアが上がっていくような変化と描写が見られました。最初こそゆっくり物静かに相手の攻撃を受け流しているだけでしたが、体内の炎が燃え滾った瞬間爆発的な攻撃性能を発揮。一撃でエンジェルマルガムを圧倒する瞬間はインパクト絶大でした。それらを表現する際に「LOW」から始まったカットインが「2nd」「3rd」「4th」と徐々に変化し、最後に「TOP」になることで爆発する演出が入っているのも非常にオシャレかつクールです。

 さらに以前のヴァルバラド同様、カスタムアップによるパワーアップも可能となっています。こちらはガッチャードやマジェードとは異なり「同じレベルナンバーを合わせた多重錬成今までをシンクロ召喚とするならこちらはエクシーズ召喚ということか……を活かした2枚重ねのカスタムとなっており、劇中では「ガッツショベル」と「ジャマタノオロチ」を組み合わせた「オロチショベルカスタム」を披露。複数の首で相手を捕らえ、そのまま必殺キックを決める活躍を見せてくれました。総じてヴァルバラドとしての意匠はしっかり引き継ぎつつ、多くの人の支えを受けライダーとしての力を得たスパナに相応しい姿と言えますね。

 

 

  • 忠誠が揺らぐ者、未来に尽力する者

 スパナと仲間たちの関係に感銘を受けた一方で、グリオン陣営に大きな変化が見られたのも今回の見どころ。まず冥黒の三姉妹の現状に対する焦りや不安の様子が印象に残りました。「スパナを手に入れたらグリオンに用済みにされるかもしれない」と危機感を露にするラケシスとそれを咎めアトロポス、そしてラケシスを気遣うものの反抗の姿勢は見せないクロトーと、各々のキャラクターからくるスタンスの違いがわかりやすく描かれていましたね。しかしグリオンへの忠誠心や信頼はほとんど失われている点は、三姉妹全員共通しているように思えます。この共通点と相違点から三姉妹の道が違えそうな予感もしてきました。

 そして今回最も注目すべきはミナト先生。スパナを煽って戦いに挑み、間接的に彼の力の制御に貢献したことから影のMVPと言ってもいいかもしれません。鏡花さんを殺したと嘘をついてまでスパナを心身共に追い詰めていたいたものの、言動の数々から彼が立ち上がることを確信していたであろうことが読み取れるのが上手かったですね。最早言うまでもないことですが、冷徹を演じながら宝太郎たちの成長を促していることは一目瞭然です。これまでの行動もグリオンに対抗出来る力を彼らに付けさせるため、敢えて敵側に回ったということなのでしょう。

 身を削り悪役になってまで生徒や後輩たちの力になろうとするミナト先生の献身ぶりに泣けてきますが、それでもグリオンには勝てない可能性を示唆しているのが不穏ですね。ラケシスとの会話でも今後も油断出来ないことを仄めかしていますし、ミナト先生の苦難はまだまだ続きそうです。今回の件でラケシスと協力してグリオンに一矢報いる可能性も出てきたものの、正直不安の方が大きいので無理はしないでほしいところです。

 

 

 そして次回はまさかのギャグ回!?上の空の蓮華が誰かに恋をした?という疑惑から、多くの人たちを魅了するケミー・ズキュンパイアの暴走を止める話になるようです。人間のイケメンに変身して取り巻きを作るズキュンパイアの目的を探る中で彼のとんでもない企みを知ってしまうようですが……?

 といった感じでコミカル要素が強めになりそうな予感がしますね。しかし年明け以降のガッチャードは重めのストーリーが続いていたので、ここらで肩の力が抜ける日常エピソードをやってもいいかもしれません。むしろ本作が始まった頃の、どこかぶっ飛んだトンチキ具合が再び味わえそうなので結構楽しみです。

 

 

 ではまた、次の機会に。