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2025年アニメ映画簡易感想 その1

 

 

 2025年もあと約4カ月となりましたが、皆様は映画などはご覧になっていられますでしょうか。かくいう僕は『はたらく細胞』を皮切りに様々な映画を観てきたことは、当ブログの感想を読んでいる方々ならそれとなく伝わっているかと思います。今年も本当に色んな映画が公開されていて、いずれも大いに楽しませてもらいました

 そんな中でもまだまだ語っていない作品が存在しているので、例によって簡易感想でアニメ映画に触れていきたいと思います。今回は『プリンセス・プリンシパル』『ルパン三世』そして『クレヨンしんちゃん』の劇場版というラインナップ。いずれも濃い作品であり、大いに楽しめたのでその想いを感じ取ってもらえれば幸いです

 

※ここから先は映画の内容に触れているのでネタバレ注意!!

 

 

 

 というわけで以下、今回の映画感想です。

 

 

 

 


 

 

 

 

 

 

 


プリンセス・プリンシパル Crown Handler 第4章

 美少女×スパイアクション×スチームパンクの組み合わせを目玉としたシリーズ『プリンセス・プリンシパル』の劇場シリーズ第4弾。まず第3章から2年近く間が空いてしまいましたが、無事新作が見られたことにホッとしました。任務失敗で終わった主人公たちのその後が気になっていただけに、続きを見ることが出来て何よりといったところです。(内容を忘れかけていましたが、各種サブスクで前章を確認したので何とかなりました

 そんな4章はまず、ノルマンディー公に捕まったアンジェたちの処遇についてが描かれました。拷問といった直接的な扱いは無かったものの、プリンセスを人質に取られて2重スパイを強要される展開に少なからずハラハラさせられましたね。精神的な負担をかけてくるノルマンディー公の手腕に舌を巻きつつ、学園生活に戻りながらも気が気でない少女たちの様子は見ているこちらも真綿で首を締められているような気分に陥りました。

 そのうえで彼女らが新たな任務で大きな“選択”を迫られていたのが今回の見どころ。職人の「ターナー」さんを逃がすための任務をこなしていたものの、事態の急変で彼を始末するかどうかで揉める光景に何とも言えない苦々しさを覚えた次第です。特にアンジェはプリンセスのためならどんなこともやろうとする、場合によっては白鳩の仲間すら裏切りかねなかったので前章以上にショッキングでした。スパイという道を歩んでいる以上まともな死に様は期待出来ないとはいえ、何を優先するかで彼女らが崩壊しかける様子には驚かずにはいられません

 このまま任務失敗を繰り返すのかと思いきや、結局ターナーさんが自分の腕を犠牲にすることで難を逃れたことにはひとまず安心*1とはいえチーム白鳩に埋められない亀裂を生み出す出来事になってしまった印象は否めなかったです。今回は乗り切ったものの、いずれ彼女らがバラバラになるであろうことを鑑賞者に意識させるには十分でした。追い詰められた時、人は何を選択するのか……限界の状況で魅せる少女たちの運命の残酷さが酷く目に留まる章だったと言えます。

 

 ただ選択と同時に「信頼」もテーマの1つとして描かれていたと思うのがこの章のポイント。というのもターナーさんが亡命を受け入れてくれる流れを、彼と仕事を共にしたベアトリスが担っていたのが大きかったからですね。身分を偽っていたものの誰であろうと真面目かつ誠実に向き合ってきたベアト(その一方で色々危なっかしいのがまた彼女らしい)だからこそ、ターナーさんとあの結末を導けたとも言えます。スパイの物語でありながら、人柄を武器に信じてくれる状況を勝ち取る展開は何だかんだで見ていて気持ちいいものです

 さらにプリンセスとノルマンディー公の「国のために必要な姿勢」の話においても、その信頼が重視されていると感じました。ノルマンディー公は守るべき民について一笑に付すものの、プリンセスの在り方が今後重要なファクターになっていくように思えてきます。今回はLとの腹の探り合い(こういう老獪な大人同士のヒリヒリした駆け引きはやはりカッコいいですね)など終始目立っていたノルマンディー公でしたが、彼の足元を掬う瞬間もあるかもしれないと希望が生まれてくる内容だったかもしれません

 あと触れておきたいところと言えばやはりリチャードの存在でしょうか。前章であっさり捕まった時はズッコケましたが、部下を引き連れ脱走に成功するラストには思わず鳥肌が立ちましたね。あれほどただ者ではない雰囲気を出していたので、このまま終わらずに済んで個人的にもかなり嬉しかったです。帝国と共和国、はたまたアンジェたちとも異なる第四の勢力として、リチャードにはトリックスター的な活躍を期待せずにはいられませんところで2章以降こいつが毎回引きを担当しているような気が……

 

 

LUPIN THE IIIRD THE MOVIE 不死身の血族

 監督:小池健氏&脚本:高橋悠也氏のタッグで送る『ルパン三世』シリーズの最新作。『次元大介の墓標』から始まった物語のクライマックスとして、まさかの劇場公開にまで至りました。これまで名脇役に徹していたルパンがとうとう主役として返り咲いたということもあり、小池ルパンのハードボイルとっぷりを思う存分堪能した次第です。(冒頭の過去作の振り返りはやたら長かったのですが、忘れかけていた大筋を思い出すにはちょうど良かったとも思います)

 ストーリーそのものに関しては予告にもあった通り、これまでルパンに刺客を送り続けていた黒幕との直接対決をストレートに描いていたといったところ。世界観構築や作品の雰囲気は過去作で十分にやり切ったためか、謎の孤島での冒険に注力していた印象です。ルパン一味のドライな関係も本シリーズ据え置きで、細かい説明は無しにひたすら敵とのバトルに力を入れていたので単純娯楽作品として楽しめました

 ヤエル奥崎やホークといったキャラが再登場するなど総決算のイメージが強かったのですが、やはりボスキャラの「ムオム」の恐ろしさが特に強調されていたと感じています。身内には紳士的ながら外敵や役立たずの部下には容赦のない性格、圧倒的な再生能力とフィジカルの強さも相まって絶望的な敵としてこれでもかと印象付けてきました。中でも中盤のカーチェイスのシーンでは、燃やしても再生するムオムの姿にグロテスクなホラー感を見て絶句しましたね

 ただ『ルパンVS人造人間(クローン)』に繋がる要素を意識しすぎていたきらいがあるのが難点。衝撃的な事実として劇中で描かれていたものの、かつての作品でマモーが出てきた時点で予想出来ていたこともあり驚きはそこまでといったところでした。そのうえ良くも悪くもマモーとの真の決着を後回しにしてしまったために、人造人間の前座のような扱いになっているのも残念なポイント。作品をリンクさせるのは好みですが、それにばかりこだわるのもいかがなものかと思います。

 

 一方で本作のルパンの魅力は十二分に描かれていたのが大きな評価点ですね。絶体絶命の状況に追い込まれても諦めず策を巡らせて、ここぞという場面で意表を突くスタイルはまさにルパン三世そのもの。そこにドライながら熱い小池監督のルパンイメージもしっかり出力されており、クールでカッコいいルパン像を思い切り楽しめました。(それでいてとある回想シーンなどで陽気かつドジな一面を見せるなど、単純なハードボイルドでは終わらないルパンの喜怒哀楽も描かれていたのがここすきポイント)

 中でも終盤のルパンの語りは印象的で、何かとゴミと蔑むムオムたちの強力なアンチテーゼを形成していました。ルパンが奪う宝は単純な希少性で計れるものではなく、手に入れるまでの過程・思い出もまた“宝”として重視する姿勢には惚れ惚れさせられましたね。ルパン三世は何故お宝を狙うのか?その謎に対するロマンチストな答えが出ていたと言えるでしょう。これが不要な存在を片っ端から使い捨てる敵との対比になっており、そうしたロマンが敵を打ち砕くカギに繋がっていたのも非常に熱かったです。

 そんなルパンを信用する次元や五ェ門、不二子の関係、はたまた銭形警部の存在感も余すことなく描かれていたのがこれまた見事。ファンが望むイメージの大体を外すことなく魅せているので、個人的にも満足度は結構高かったです。また本編外では初代・次元大介役の故・小林清志さんをしっかり起用し、ラストに特別クレジットで名前を表示する演出もニクいところ。総じて求められているルパン三世を用意しつつ、小池ルパンの感性を見た気分です。

 

 

映画クレヨンしんちゃん 超華麗!灼熱のカスカベダンサーズ

 毎年恒例のクレしん映画。今年はあのボーちゃんが事実上の主役であることが公開前から告知されており、以前から楽しみにしていた作品でもあります。事あるごとにニクい活躍をするいぶし銀な存在であるものの、謎に包まれているボーちゃんの心情などに迫る内容はファンとしても非常に気になっていたところです。

 そんなボーちゃんが『謎メキ!花の天カス学園』の風間くんよろしく、敵として暴走する展開は予告でわかっていたものの困惑を覚えました。自信満々な態度で一人称も「私」になるなど、ボーちゃんのイメージから遠くかけ離れているのは衝撃的。(ただきっかけが「しんのすけの頼んだナンが来なかったことへの怒り」だったりみんなとのフェス参加を優先したりと、基本友達想いな点にはほっこり)自分の目的を果たすためならどんなものも利用する暴君(ボーくん)と化したボーちゃんに、笑いながらも違和感を覚えた次第です。

 しかしそれが間違った姿というわけでもなく、そもそもボーちゃんそのものを知るきっかけに繋がったのが面白かったですね。「君はそんなんじゃない」に対し、それは他人が押し付けてきたイメージなのではないか?ずっとみんなの求める在り方を貫かなければいけないのか?といったテーマが提示されていました。ゲストキャラの「アリアーナ」がまさに他人のイメージを演じ疲れていたこともあり、友達との向き合い方について考えさせられる内容となっていました

 そんなボーちゃんに押しつけがましくなく、かつ友達として戦い説得する終盤のシーンは地味ながら感動させられました。本当の自分を引き合いに出すボーちゃんに対し「じゃあ教えてよ!」と聞き返すしんのすけの姿にはウルウルさせられるものがあります。そうして暴走の原因である紙を奪い取り、元に戻ってから後述のラスボスに立ち向かう展開もこれまた胸熱の一言。片や友達のあるがままを考え思いやり、片や自分の本心を曝け出して向き合おうとする……その姿勢をカスカベ防衛隊の活躍を以て感じ取りました。

 

 ここまで書くと例によって感動路線に見えますが、そこで終わらないのがクレしん映画。何といっても舞台がインドということで、インド映画のようにダンス・挿入歌シーンが要所要所に散りばめられていたのが最大の特徴となっていました。インド警察の「カビール*2と「ディル」の兄弟が歌って踊って戦う理由も「インドパワー」なる力を引き出すためと説明されており、歌うことにわかりやすい理屈付けを用意していたのが大きかったですね。個人的にはクレしん代表曲の1つ「オラはにんきもの」が流れたのが印象に残りました。現・しんのすけ役の小林由美子さんのアレンジバージョンを堪能出来て満足です。

 その歌って踊るシーンの恩恵か、みさえやひろしにも見せ場が用意されていたのがこれまた嬉しいポイント。基本カスカベ防衛隊の物語ではあるのですが、保護者役である野原家も活躍してくれるのはやはり見ていて楽しいです。ギャグ描写に関してもインドのビジュアルと相まっていつもより強烈に描かれており、異国の地で彷徨いながら逞しく生きていく面々にクスっときつつ感銘を受けました。(シロを「シロパイセン」とリスペクトした結果、犬になり切っていたマサオくんが地味にここすきポイント)特にインドの家庭料理「チャパティ」がまさかのラスボスになるというクライマックスは予想を超えていて、驚きと笑いを同時に味わえましたね

 あとは本作では明確な悪役が存在せず、最終的にはみんな仲良くなって終わった点にも触れておきたいところ。暴君ボーちゃんに魅了され協力する大富豪「ウルフ」も出てきましたが、どんなに力を貸してもボーちゃんに相棒と認めてもらえない不憫さもあって憎たらしくも同情を寄せるキャラに仕上がっていたのが秀逸でした。そんな相棒、ひいては友達を求める彼が救われる展開も用意されており、おかげで視聴後の爽やかさはここ数年のクレしん映画の中でも随一だったと思います。カスカベ防衛隊メインというだけでも個人的にはポイントが高いのですが、予想以上にスッキリ観られる映画として楽しめましたね

 

 

 

 今年は夏に『鬼滅の刃』劇場版や『国宝』など話題作が立て続けに上映され、観客動員数も桁違いに上がっている話を耳にします。普段映画を観に行かない人も映画館に足を運んでいるらしく、話題性というものの凄まじさを感じ取った次第です。(その結果映画館のルールやマナーを守れない人も問題になっているそうですが……)私事ですが某映画館にやってきた際、見たこともない人だかりを目の当たりにして仰天した記憶がありますね。

 この件に関して色々思うところはあるものの、映画館が潤ってきているのは嬉しいことだと思います。これをきっかけに他の映画を観るようになった人もいるようですし、映画を楽しむ習慣がどんどん広がっていく可能性は喜ばしい話です。映画館の存続の難しさなども問題になってきている中、こうした形で続いてくれれば幸いかもしれません

 

 

 ではまた、次の機会に。

*1:余談だがちせがターナーさんの腕を切り落とすシーンがやたら迫真の演出&作画で繰り広げられていたことに若干困惑した件。PG12指定されていたのは事前に理解していたもののこだわるポイントはそこなのか……

*2:カビールのフルネームはやたら長く書ききれないのでここでは割愛する