絶体絶命でんぢゃらすじーさん 第1巻 (てんとう虫コミックス)
- 作者: 曽山一寿
- 出版社/メーカー: 小学館
- 発売日: 2002/08/28
- メディア: コミック
- クリック: 13回
- この商品を含むブログ (5件) を見る
※2019.10.16に追記しました。
※2020.5.28に追記しました。
今日9月16日は「敬老の日」。平たく言えばお世話になったご年配の方々を敬愛し、感謝の意を伝えるための祝日ですが、この日にはやはり、
『でんぢゃらすじーさん』が読みたくなりますよね。
…………何を言ってるかわからないかと思いますが、とりあえず聞いてください。
『でんぢゃらすじーさん』と言えば、『絶対絶命でんぢゃらすじーさん』から始まり、そこから『でんぢゃらすじーさん邪』『なんと!でんぢゃらすじーさん』とタイトルを変えながらコロコロコミックにて15年以上連載されている長寿ギャグ漫画。主人公の「じーさん」が自分の「孫」を”この世の危険から身を守る方法を教える”と称して大抵理不尽な目に遭わせるストーリーで、不条理な展開や突然変わる絵柄などで多くのコロコロ読者を笑わせてきた小学生向け漫画の猛者ともいうべき存在です。(かつての自分もその一人)
そんなじーさんが真面目な話をやる数少ない場面があります。それが「大長編」です。
大長編は大体年に1回の頻度でコロコロの別冊付録として100ページ(表紙とかを除くと96ページ)のボリュームで掲載されています。そのストーリーですが、いつも通りのギャグもやりつつ、各作品ごとの”テーマ”にもしっかり触れて、決めるべきところで決めるといういつものギャグ漫画っぷりはどうした?とでも言いたくなるような熱くて感動できる内容になっています。ある程度成長し、大人になってふと読み返してみても同じ気分になれるでしょう。
その理由はこの大長編を通じて作者が「何を伝えたいのか」がハッキリしているからだと考えます。読んでくれる子供にどういったメッセージを残したいのかを物語の中にわかりやすく残し、作者の分身ともいえるじーさんが語ってくれる。コロコロ作品の中でも極めて高齢の主人公であるじーさんだからこそ、語る言葉に説得力があるのかもしれません。
そんな大人になっても楽しめるじーさん大長編ですが、いくつかあってどれを読めばいいかわからないかと思います。というわけで大長編の中でもオススメの作品を6つ紹介したいと思います。以下の目次から各大長編とそれが収録されている単行本の情報に飛べるのでどうぞ色々見てから判断してください。
目次
- No.1『かこんでいたのにひどいや』(『絶対絶命でんぢゃらすじーさん』第9巻収録)
- No.2『4位のお金と563位のアイツ』(『絶対絶命でんぢゃらすじーさん』第17巻収録)
- No.3『いのちときもちとぱぱぱぱぱーっ!?』(『絶対絶命でんぢゃらすじーさん』第19巻収録)
- No.4『無敵のヒーローオナライダー』(『でんぢゃらすじーさん邪』第3巻収録)
- No.5『怒りのイライランド(怒)』(『でんぢゃらすじーさん邪』第9巻収録)
- No.6『ひーひーいってたら未来からきちゃった』(2019年 月刊コロコロコミック 10月号 別冊付録)
-
No.1『かこんでいたのにひどいや』(『絶対絶命でんぢゃらすじーさん』第9巻収録)
記念すべき最初の大長編。「闇の大魔王」の復活を目論む宇宙人セルフワンに遭遇したじーさんがその野望を止めようとする物語になっています。
この作品のテーマは「自分で立つこと」でしょう。大魔王に宇宙を征服してもらおうとするセルフワンに対しじーさんがどのような行動をとるかが肝になってきます。いつもの愉快なキャラクターたちも登場し、物語を盛り上げるほか、闇の大魔王の意外すぎる正体には驚きと笑いが巻き起こること間違いありません。一番最初に作られた大長編としてぜひ読んでおきたい一作です。
-
No.2『4位のお金と563位のアイツ』(『絶対絶命でんぢゃらすじーさん』第17巻収録)
大長編第4弾。お金を食べれば食べるほど強くなる宇宙人「ドルマネー」との戦いを描いています。
テーマはズバリ「お金」。金がこの世の全てだと考えているドルマネーに向けてじーさんが放った言葉が非常に印象に残ります。綺麗事にすぎないかもしれませんが、心の隅にキチンと残しておくべき名言なので、多くの人に一度は手に取って読んでもらいたいと思っています。(ネットでそのコマだけなら見たことがある人もいるかと思います)本編ではドルマネーの強さの秘密が語られていますが、漫画ならではの表現を駆使したギミックに衝撃を受けることでしょう。大長編特有の家族想いの熱いじーさんが見られるのもポイントです。
-
No.3『いのちときもちとぱぱぱぱぱーっ!?』(『絶対絶命でんぢゃらすじーさん』第19巻収録)
絶体絶命 でんぢゃらすじーさん 19 (てんとう虫コロコロコミックス)
- 作者: 曽山一寿
- 出版社/メーカー: 小学館
- 発売日: 2010/02/26
- メディア: コミック
- クリック: 2回
- この商品を含むブログを見る
大長編第5弾。じーさんが飼っているネコっぽい生き物「ゲベ」がある日ペットショップで出会った犬と心を通わせていきます。
テーマは「命」。この大長編の特徴はなんといっても「悪役」にあります。悪の親玉がペットショップの店長であり、宇宙人や妖怪などと戦ってきた過去の大長編と比べるとかなりスケールダウンしたように感じますが、リアルで身近な存在ゆえにその所業の数々に戦慄を覚えます。収録されている単行本にも「シリーズ史上最凶の悪」と紹介されており、作者が「この話で誰かが傷ついたりしないだろうか心配だが、危ない橋を渡ってでもこの話を描きたかった」といった旨のコメントを残すほどです。作者がここまで悩んだ末生み出した作品として多くの子供たちに読んでほしい一作です。
-
No.4『無敵のヒーローオナライダー』(『でんぢゃらすじーさん邪』第3巻収録)
でんぢゃらすじーさん邪 3 (てんとう虫コロコロコミックス)
- 作者: 曽山一寿
- 出版社/メーカー: 小学館
- 発売日: 2011/06/28
- メディア: コミック
- クリック: 2回
- この商品を含むブログを見る
作品タイトルが『邪』になってから初めての大長編です。じーさんたちの前に現れたお尻丸出しの謎のヒーロー「オナライダー」に遭遇する場面から物語が始まります。
テーマは「ヒーローとは何か」。本作の主役ともいえるオナライダーがじーさんとの出会いを経て「無敵のヒーロー」とはどうやったらなれるのかを悩み、模索していく様に心が打たれる内容になっています。近年のヒーロー作品を見ていた人ほど、様々な葛藤を乗り越えた彼が見つけ出した答えに感動できるのではないでしょうか。もちろんじーさんも活躍するのでそこは安心してください。
-
No.5『怒りのイライランド(怒)』(『でんぢゃらすじーさん邪』第9巻収録)
でんぢゃらすじーさん邪 9 (てんとう虫コロコロコミックス)
- 作者: 曽山一寿
- 出版社/メーカー: 小学館
- 発売日: 2013/10/28
- メディア: コミック
- この商品を含むブログ (1件) を見る
大長編通算第8弾。謎のテーマパーク「イライランド」に突如閉じ込められたじーさんと孫が自分たちの前に現れたマスコットキャラクターの真意に迫ります。
テーマは「何に怒るか」。「怒り」という人間の根源的な感情とどう向き合っていくのかがこの作品の最大の主題となっています。どうしようもなくイライラした時、怒りをぶつけたくなった時、誰かのせいにしたくなった時など、日常でこんな気分になった時、この大長編でとったじーさんの行動を思い出すといいでしょう。誰もがじーさんのようにはなれないとしても、その姿を見て少しでも自分の感情と上手く付き合っていきたい。そんな気持ちで読んでほしい作品になっています。
-
No.6『ひーひーいってたら未来からきちゃった』(2019年 月刊コロコロコミック 10月号 別冊付録)
現在発売中のコロコロコミック10月号の別冊付録として描かれた大長編通算第13弾。リレー選手に選ばれた孫のために特訓をしようとしてくるじーさんとそれから逃げる孫、いつもの2人の前に突如謎の老人が現れる内容になっています。
テーマは恐らく「未来に向けた言葉」でしょう。これまでの大長編で多くのゲストキャラクターたちに名言を残し、彼らの成長の手助けをしてきたじーさんですが、今回はなんと「じーさん自身の成長」が見られます。じーさんが過去一度も勝てなかった最強の相手に立ち向かう中で、孫の言葉によって大切なことに気付いていく場面はもちろん、家族の絆もメインとして描いており見どころが満載です。正直に白状しますが、この大長編を読んで年甲斐もなく感動したのがこの記事を書くきっかけだったりします。近年の大長編の中でも特に完成度が高くとても面白いので、とにかく今月号のコロコロを買って、ぜひこの最新作を読んで下さい。
(2019.10.16追記)昨日コロコロコミック11月号が発売されたので、現時点で本作を読める手段が限られてしまいました。ご了承ください。
(2020.5.28追記)本日発売の『なんと!でんぢゃらすじーさん』第7巻にこの大長編が収録されました。
いかがだったでしょうか?でんぢゃらすじーさんは下品な下ネタ、死ネタが多く、かなり読む人を選ぶ内容になっていますが、大長編はそれらが抑えめ(?)かつシリアスで、「人生を生きる上で忘れてはいけない大切なこと」に踏み込んだ物語は子供に限らず多くの人たちの心に響く内容になっています。敬老の日以外でもこれらの素敵な大長編(出来ればギャグ満載の本編の方も)読んでほしい作品であり、この記事を読んで少しでも手に取ってみようと思ってくれたのならば幸いです。
ではまた、次の機会に。