新・メタレドの楽しんだもん勝ち!

様々な作品について語ったり語らなかったりするサイト

仮面ライダーセイバー 第30話「絆、切り裂かれても。」感想

無力を責める者たち

徹底した倫太郎曇らせ展開に歪んだ愛を感じる

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

  • 初めてのエクレアの味はしょっぱかった

 前回の戦いを経て無事倫太郎が飛羽真たちの元に戻り、ソフィアもノーザンベースの守護に復帰と嬉しいことづくめの場面から始まった今回のセイバー。歓迎ムードの中頭を下げて謝罪する倫太郎に初っ端から驚きつつも、彼らしい愚直な態度にどこか顔がニヤけてしまいました。本作の登場人物の中でも一際真面目で優しい倫太郎は相変わらずなのだと実感します。それに対して飛羽真たちが責めることなく優しく励ましてくれるのがまた素晴らしいです。

 何よりこれまで食べられなかったエクレアを食べるパートが良かったですね。前回芽依が「エクレアを用意して待ってる」と言っていましたがまさか本当に用意してくれるのはちょっと意外でした。みんなに半ば強引にエクレアを食べさせられ、涙を流しながら「しょっぱいです」と食べた感想を述べる倫太郎のシーンに心が暖かくなりました。念願のエクレア実食と同時に、本当の意味で飛羽真たちと打ち解けた、とも取れる名シーンでした。

 

 

  • 己の無力を嘆く者

 そんなほんわかムードで終わるなんてことはあるはずもなく。冒頭のドタバタを経てからは芽依がメギドに変えられるというハードな展開が待っていたことにちょっと面食らいました。予告の時点でわかっていましたが、実際に見てみるとかなりエグかったです。大切な仲間がメギドに変えられ、元に戻さなければと焦る飛羽真と倫太郎の様子はかなり鬼気迫っていました。

 今回恐ろしかったのは何と言っても実質芽依を人質に取られたことによる、倫太郎に激しい動揺を促す展開が徹底していたことですね。芽依を助けなければならないと躍起になるものの、メギドに変えられた人を元に戻すには烈火か最光が必要。最光であるユーリはタッセルの所在を探しに出ていったので現在芽依を助けられるのは飛羽真だけ、という状況に自身の無力さを痛感する倫太郎の姿は見ていて辛いものがありました。上記でも語った真面目な性格がかえって自分を追い詰めてしまう、という生々しさに精神がやられそうです。流水を光らせようとしても上手くいかず叫ぶ様子などは見ていられませんでした。

 しかも自分はどうなってもいいからと自暴自棄になっているところでズオスに倒されそうになるのを飛羽真に助けられ、そのことで彼を責める展開も辛かったです。飛羽真としてはまだ余裕がある芽依よりも目の前で殺される寸前だった倫太郎を助けるのは至極当然のことなんですが、それがかえって倫太郎のことを追い詰めてしまうのが可哀想でした。誰も悪くないのにこうして傷つけあってしまう絵面に心が締め付けられる思いです。

 

 そんな倫太郎を周囲が精神的にどんどん追い詰めているのもまたある意味で秀逸。芽依をメギドに変えたズオスはもちろん、彼女が変貌した「ネコメギド」の煽りがどれも彼を苛むのに効果てきめんのものばかりでした。“芽依が本心で思っていること”と称して倫太郎にとって耳が痛い言葉ばかりを浴びせる手腕には恐れおののきます。(CVが朴路美さんということもあって言葉の棘が凄まじく刺さる刺さる)しかも人間に戻っている間に倫太郎にひたすら助けを求めるほどに弱っている芽依を見せつけられたので嘘だと断定しがたいのがタチが悪いです。この一連のやり取りを見せられただけに倫太郎がどんどん曇らされていくことにも納得させられてしまいました。

 またこういう時こそ精神的面で頼りになってくれそうな尾上さん、どんなに悪い状況もどうにかしてくれそうなユーリがそれぞれ別行動である点も徹底しています。ありとあらゆる手で倫太郎をイジメぬき、逃げ場すら用意させない今回のエピソード、倫太郎への歪んだ愛を感じずにはいられませんでした。公式による圧倒的な曇らせ展開を前にして、果たして倫太郎はどうなってしまうのでしょうか。あと個人的な話ですが実際倫太郎の泣き顔はそそられるものがあるので正直こういうのも悪くないとおm(ry

 

 

  • RTA走者と化した賢人&今日のデザさんぽ

 倫太郎の曇らせの他にも気になったのが賢人と蓮のパート。前者は例の自暴自棄になっている倫太郎を静かに見つめる賢人とソフィアが印象的です。このシーンでは賢人が倫太郎と芽依の命をどうでもいいと思っているかのような発言をしたことがショックでしたね。あの賢人が仲間を見捨てるというのは信じられないことでしたが、破滅の未来を見すぎたせいか周囲の人間の命に実感が湧かないのかもしれない、とも思えました。何度も仲間の死を見ていく内にゲームの駒のようにしか思えなくなったのかもしれません。そんなRTA走者のような思考に陥りつつある賢人の今後や如何に。

 対照的に蓮のシーンはどこかフフッっとくるものでした。というのもデザストがぴょこぴょことついてきて勧誘してくる絵面がやたらシュールだったからですね。後ろから囁きかける様子はさながらライトに話しかけてくるリュークのようです。蓮本人にとっては尾上さんからの説得も含め、どうしていいかわからず心がぐちゃぐちゃになってしまっている辛いシーンなのですが、やたらフレンドリーに接してくるデザストのせいでどうにもその辺りのシリアスさが薄れてしまったように感じます。(まぁ今回はメインの本筋が凄まじい惨状だったのでこの辺りの笑いはかえって清涼剤になりましたが)ともあれ倫太郎や賢人とは別に蓮がこの先どうなってしまうのかも心配になってきますね。

 

 

 というわけで倫太郎曇らせ回でした。信じていた組織に裏切られるも仲間と共に戦い何とか持ち直してきたところにこの展開は本当にエゲつないと思います。製作スタッフの面々、「倫太郎はいくら曇らせても良い」とか思っていますよ多分。

 あとは今回賢人や蓮たちも迷走している様子が描かれるなど、全体的に若い剣士の心の弱さが露わになった印象でしたね。有望な世代だからこそくる心の未熟さ、不安定さをここまで描いていたように思えます。(対して尾上さんや大秦寺などベテラン剣士は安定したメンタルを貫いています)彼らのそんな若さがどのように昇華されていくのかが今後のキモになっていくように思えます。とにかく次回は倫太郎と芽依の行方に目が離せませんね!

 

 

 ではまた、次の機会に。