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セイバー+ゼンカイジャー スーパーヒーロー戦記 感想

集結せよ、最高のヒーローたち!!

時代が望む限り、ヒーローは必ず現れる!!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 毎年恒例であるライダー&戦隊の夏映画。今年は何と仮面ライダー50周年&スーパー戦隊45作品記念ということで、『セイバー』と『ゼンカイジャー』が合体という春映画を彷彿とさせる仕様でした。どうなるのかとワクワクしながら観に行きましたが、非常に楽しい映画でした。

 各作品の要素を上手いことミックスしつつ、ヒーローの在り方についてメタ的に追っていった内容に心躍らされました。というわけで今回はそんな『スーパーヒーロー戦記』の感想を、同時上映の『仮面ライダーバイス』の感想も含めて書いていきたいと思います。

 

※ここから先は映画の内容に触れているのでネタバレ注意!!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

  • 共演!スーパーヒーロー

 まず本作は何と言っても様々なヒーローが登場して絡むクロスオーバー要素が魅力的。『セイバー』と『ゼンカイジャー』の各登場人物たちの会話はもちろんのこと、歴代のゲストヒーローたちの共演も素敵でした。映画の公開前に放送されたテレビスペシャルでも感じていたことですが、基本的に人の良いセイバー勢と個性の強いゼンカイジャー勢の相性の良さは中々のものです。それ以外にも各キャラの特徴を最低限出してくれるのもあって見ていて楽しかったです。(電王、というかイマジンたちは出てくるだけで空気が電王になって困る困らない)さらにライダー側ではほぼほぼ藤岡弘、要素全開の本郷猛の顔出し、戦隊側では非公認戦隊アキバレンジャー』のセンタイギア使用というサプライズもあって見ていて飽きませんでした。

 そんなヒーローたちがいがみ合わずにすぐに意気投合してくれるので見やすい点も良かったです。ヒーロー同士の対決も精々がキラメイブルーVSシンケングリーンでそれもどちらかというと力試しの趣が強かったのであまり気負いせずに見れました。ヒーロー同士の対決よりも共闘に力を入れてくれるだけで十分に楽しくなることを再認識しましたね。

 

 そして本作はセイバーの物語の補完でもあったのが最大の特徴でした。自分たちの世界が物語であることを知ってしまい幸せな現実を堪能するものの、「物語から逃げてはいけない」と戦う飛羽真の様子は実に感動的です。「苦しみから逃げてはいけない」という本編でも度々見られる要素を尊重しつつ、飛羽真が苦悩の中で手にした決意を新たに描き切った内容は非常に素晴らしいものでした。44話でも登場した大人になったルナと賢人との新たな約束も含め、本編の補完としてもよく出来ていたと思います。

 そんな物語をライダーと戦隊の原作者である石ノ森章太郎」氏を出すことで展開するのがまた面白いです。なるほど“物語”をテーマにしたセイバーとメタ的要素が強いゼンカイジャーの組み合わせで取り扱うには最適の存在と言えます。そんな重要人物をライダー好きで知られる「鈴木福」さんに演じてもらうというのもニクいです。ヒーローの在り方云々は下記の項で詳しく書きますが、まさに「石ノ森ヒーロー」を描いたお祭り映画としては大満足の出来でしたね。

 

 

  • “逆転”する世界と“不変”のヒーロー

 そしてこの映画で最も特徴的と言えるのがメタ的な表現。本作は『平成仮面ライダーForever』や『Over Quartzer』といった前例と同じように作中世界を作品として捉えるメタ表現がされましたが、前2作以上に“作品としてのヒーロー”の要素に踏み込んでいました。そうして描かれたのが飛羽真と章太郎、2人の人物によって紡がれる“逆転”と“不変”の物語です。

 まずあげられるのが飛羽真の例。劇中ではゼンカイジャーの世界に迷い込んだ飛羽真たちは最初その世界及び介人たちを「物語の世界の住人」として認識していました。その後登場した各ライダーや各戦隊のメンバーも同じように扱っています。この辺りからわかる通り、飛羽真たちセイバーの世界の住人は自分たちの世界は現実であると認識しているわけです。

 様子が変わるのは中盤、倫太郎から芽依へと渡った「題名のない本」が実は「仮面ライダーセイバー」の本だったことに気付いてからは登場人物と視聴者双方に衝撃が走ります。テレビシリーズ本編で繰り広げられた展開やセリフが全て文章で刻まれており、最終的に全員が消滅して「仮面ライダーセイバー <了>」の一行で終わる展開はかなりショッキングです。自分たちの世界こそ現実であり、その他は物語だと思っていた飛羽真たちにとって自分たちも空想の存在でしかないと告げられる、まさに世界に対する認識が“逆転”する現象が起きたということです。

 その直後、幸せな現実を味わうものの苦悩する飛羽真の姿が描かれますが、同じように苦悩する人物がもう1人登場します。それこそが石ノ森章太郎。彼は飛羽真にヒーローを描いてくれと頼まれるものの、「戦争や戦うことが悪いことなら、ヒーローだって悪いことじゃないか」と拒否する様子を見せてくれます。暴力を嫌っていることで有名な石ノ森氏らしい言葉でありますが、この言葉の根本には歴史上の“逆転”現象が隠されていると個人的には睨みました。

 そのヒントは石ノ森氏の生きた時代にあります。石ノ森氏が生まれてから間もない頃、第二次世界大戦及び太平洋戦争が勃発。氏が6歳から7歳の頃に終戦しました。問題はその戦後、敗戦した日本が国家主義や軍事行為を是とする考えを抹消したことです。「墨塗りの教科書」などで知られるかつての考えをなかったことにする行為は当時の子どもたちにとっては大変衝撃的な出来事だったことは想像に難くありません。幼い頃に正しいものとして教えられたものを否定され、戦いや暴力を良しとしない世界に“逆転”したことに対する章太郎の苦悩が上記のセリフには込められていたのだろうと考えられます。

 そんな“逆転”した世界で飛羽真と章太郎はどうしたかというと、「人間」を描いたわけです。悩んだり迷ったりしながらも前に進む「人間」を描こうとしているからこそ、彼にしか描けないヒーローがあることを教えてくれる飛羽真の激励を受け、彼と共にヒーローを作っていく章太郎の姿はまさに彼らが描こうとしている「人間」そのものです。(この辺りは仮面ライダー以外にも『人造人間キカイダー』や『サイボーグ009』といった「戦いの中で苦悩し続けるヒーロー」を作ってきた石ノ森氏へのリスペクトを感じさせてくれます)そうして苦悩を続けながらも「人々の自由と平和を守る」という“不変”の価値観を持った仮面ライダー1号秘密戦隊ゴレンジャーを作り上げるシーンは感動的でした。

 時代が移り変わる中、世界の価値観も変わっていく、その中で変わらないものを持ったヒーローがライダーと戦隊というわけです。これはまさに時代に合わせた変化をしながらも、根本にあるものは決して変わっていない両シリーズそのものを表しています。どんな世界にあろうとも、“不変”の存在としてあり続けるヒーローとしてのライダーと戦隊を本作はきちんと表現してくれました。本作はそんな「“逆転”の中の“不変”」という、石ノ森章太郎作品の本質を語りつつ、ヒーローたちのメタ的な物語としても綺麗に熱かった作品と言えますね。

 

 

  • 愉快!な悪魔のヒーロー

 そしてスーパーヒーロー戦記の後に放映された仮面ライダーバイス』の映画も見逃せません。セイバーたちの戦いに突然現れただけでなく、自分たちの映画も挿入する新ライダーの詰め込み具合にちょっと嬉しくなりました。

 そんなリバイスの映画ですが、定番の「バディもの」作品として堅実な作り、という印象を受けました。主人公の「五十嵐一輝(いがらし・いっき)」と相棒の悪魔「バイス」の凸凹コンビが繰り広げるコント染みた会話は軽快で結構楽しかったです。全体的に緩いノリで進むのでスーパーヒーロー戦記で上がった肩の力を抜いて見れましたね。お調子者で暴れん坊のバイスをなだめる一輝は常識人かと思いきや、立ち退きを要求してくる業者相手に悪魔の力を使って脅かすといったちょいワル要素があるのもポイントです。一輝はバイスを中々実家の銭湯に入れてくれない描写がありましたが、いざ本編が進んで終盤に差し掛かるころには普通に入れてあげるくらい打ち解けていくのだろうなぁ、と今から妄想が捗ります。

 アクションに関してはいちいちスクリーンからこちらに話しかけてくるバイスのおかげでこれまた楽しかったです。リバイのアクションは基本形態の恐竜のパワーを下半身に引き出すといったCGアクションを披露してくれたのもあって興奮しましたね。そしてメガロドンのフォームにチェンジした後、リバイとバイスが組体操の如く合体して巨大なメガロドンに変形するシーンでは内心大爆笑してしまいました。FFR以降、毎回様々な変形要素を入れてくるライダーシリーズですが、今回はひと際ぶっ飛んでいると再確認しました。

 そういうこともあって実に楽しい同時上映でした。リバイスの情報判明時は果たしてどのような作品になるのか期待と不安がありましたが、今回のノリをテレビ本編でやってくれると思うと安心です。明るくもどこか不穏な要素が漂っている仮面ライダーバイス、今から放送が楽しみです。

 

 

同時上映のリバイスも含め非常に楽しめた映画でしたが、それとは別にどうしても不満を覚えてしまう点もありました。ここから先は批判が多いので見たくない方はブラウザバックを推奨します

 

 まず本作はセイバーの物語としてはよく出来ている一方、ゼンカイジャーの要素が薄いまま終わってしまったのが残念でした。どちらかというとゼンカイジャー側は添えられているだけ、という印象が強かったです。ストーリーには介人とジュランががっつり関わっていたものの、他のメンバーの出番がほとんどなかった点も惜しいですね。極論ゼンカイジャーはいなくても成立する内容だったので、ゼンカイジャーの本質にも迫る要素がほしかったです。

 あとはやはりヒーロー集結後のアクションに関してはセリフがどうしても気になりました。本人の声が揃えられなかったのは仕方ないにしても、各キャラの特徴的なキメゼリフをただ言わせているだけの演出がどうしても引っかかってしまいます。(中でもメガレンジャーはそれっぽいセリフがなかったとはいえ「百万倍の好奇心!」はないだろう・・・・・・と思わずにはいられませんでした)こちらはヒーローが多すぎる弊害としてそれぞれの活躍を処理しきれなかったという印象を受けましたね。

 

 

 といった不満はあれど全体的にはとても良い映画でした。ライダーと戦隊の各ヒーローを扱いつつ石ノ森氏のヒーロー性を追求する内容は中々に挑戦的で、かつ刺激的だったと言えます。両シリーズのメモリアルイヤーに相応しい作品として実に痛快でした。何だかんだで見て良かったと思います。

 そして今年の冬には新たなライダー映画が公開される模様。その映画だけでなく、この先のライダーと戦隊の展開も楽しみにしつつ、今回はこの辺りで筆を置こうと思います。ここまで読んでいただきありがとうございました。

 

 

 ではまた、次の機会に。