物語の結末は、
俺が決める!!
「物語とは何か」を本作はどこまでも追及してくれた
令和ライダー第2作目として製作された『仮面ライダーセイバー』。チーフプロデューサーに高橋一浩氏、脚本を主に福田卓郎氏という『仮面ライダーゴースト』を意識させるスタッフによって製作された本作はライダーシリーズの中でも一際ファンタジー色が強い作品として1年間描かれてきました。(以下、映画『スーパーヒーロー戦記』など本編以外の内容にも触れていきます。ご了承ください)
先に評価点について語りたいと思います。
まずは劇中で度々語られてきた“物語”と“運命”のテーマ性について。本作は「本」をモチーフの1つにしているだけあって物語がもたらすものを示しつつ、そこから「自分や世界の運命にどう向き合うのか」という課題を提示してきました。中でも終盤明かされた「世界の全ては全知全能の書に既に記されている」という設定は多くの登場人物に対する巨大な壁として立ち塞がっていました。カリバーとして戦った上條に最悪の未来を視てしまった賢人、果ては敵であるマスターロゴスやストリウスも含め決められた運命という共通の敵に抗っていく様子は本作における特徴の1つです。さらに夏に公開された『スーパーヒーロー戦記』は本作のテーマに深く関わっている内容でした。
映画では自分たちが作品としての『仮面ライダーセイバー』の登場人物であることを知り衝撃を受けながらも、「作者の思い通りにはならない」意志を飛羽真が見せるというメタフィクション的演出が行われていますが、テレビシリーズ本編における“運命”が“物語、あるいは作品”に切り替わっただけで本質的には全く同じ問いが明示されています。別の何か(誰か)に決められたレールに従わず、それぞれがどのように逆らうのかという点においては映画は本編の延長線上にあることが伺えるのが興味深いです。
そしてその問いに対して主人公の飛羽真が物語の先にある“読者”に可能性を見出すのがまた面白い。「既に決まっている世界の枠組みから外れ、新たな道を示せるのは物語を見て聞いた者たちであり、彼らの想像力こそが鍵」という答えには思わず膝を打ちました。物語だけで完結するのではなく、それを手にした人たちがどのような感想を抱くのかにまで目を向けていく在り方は、ある意味で物語を扱うメタネタにおける最高の答えと言えます。作り手・語り手と読み手・聞き手の関係性こそが物語を真に形作る最重要の要素であることを、本作は最大のテーマとして示してくれたのだと思います。事実劇中において飛羽真(作り手・語り手)とルナ(読み手・聞き手)の関係から始まったセイバーの物語は最後に飛羽真の執筆(作り手・語り手)と読者の思い出(読み手・聞き手)によって世界の救済にまで至っています。(以前募集した企画に応募した視聴者たちを最終回の読者役に据える演出もニクイです)どちらか一方だけで終わらせず、最後まで双方の関係に向き合い続けてきた真摯な姿勢には強い好感を抱きますね。
続けて登場人物について。本作は主人公をはじめとしたライダーが10人以上登場することが放送前から告知されていましたが、それを含めても実に多くの登場人物が出てきました。非変身者の方が少ないというのもかなり珍しい事態です。
当然その分各キャラの個性が薄まるかと思いきやそうでもなく、むしろそれぞれ濃いキャラクターを見せてくれたおかげで誰が誰か、と頭を抱える問題には悩まずに済みました。またそれぞれが要所要所で出番があり、もう目立つことはないだろうと思っていた人物が終盤意外な活躍を見せるなど、主要な面子以外もじっくり描いてくれたのは意外でしたね。(蓮とデザストはその最たる例と言えます)ゴチャゴチャしている印象は否めないものの、特定の人物が不遇だったり不必要に感じることはありませんでした。これだけでかなり特殊だと思います。
主人公たちの関係が基本良好だった点も良かったですね。ライダー作品では珍しくほぼ全員が「世界を救うため」に戦っているため、仲間同士の結束が表現されていました。グッズを配ったり遊んだりするなど、戦闘以外でも仲良く行動しているシーンを合間合間に挿入してくれたのもあって彼らの関係の良好さを強く感じ取ることが出来るのもグッド。倫太郎が戻ってきたばかりの時のエクレアの流れなどは仲間の絆に感動しながら存分に癒されました。
途中組織内部で対立が発生するなどありましたが、それぞれが自分なりの考えを持って動いているのがわかるのであまりストレスを感じなかったのも特徴的です。それ故神代兄妹のように普段は馴れ合わないものの、いざという時は躊躇わず共闘するような関係性が描かれていた辺りに好印象を抱きます。登場人物の多さに当初心配していましたが、蓋を開けてみれば大分見やすくて感心しましたね。
そしてアクションや合成といった表現にも本作は光る要素が多く存在します。まず登場するライダーが全員「剣士」というだけあって、全ライダーが剣を使用して戦う剣戟アクションが魅力でした。聖剣を華麗に取り回して行われる戦闘シーンはどれもカッコよく、見入る内容が多かったです。鍔迫り合いといった双方共に剣を持っているからこそ成立する構図が多用されたのも印象深いですね。パンチやキックといったライダーらしい生身の戦闘がほとんどなかったのは残念ですが、その分剣の力の入れようは見事の一言です。
ほぼ全員が剣を使って戦う中で、それぞれのアクションを明確に差別化出来ていたのも素晴らしいです。巨大な剣を振るうバスターや二刀流の剣斬のように聖剣そのものを全くの別物として扱っているだけでなく、煙と化すサーベラに時を飛ばすデュランダルなど戦い方においても明確に違いを見せてくれたのでそれぞれの個性をしっかりと認識することが出来ました。上述の登場人物の扱いにも通じるわかりやすさです。
戦闘以外の映像表現に関してはやはりワンダーワールドの存在が欠かせません。合成を多用し非現実的な映像が多く見られたので、本作の特殊な世界観を実感させることが何度もありました。中でもワンダーワールドのメルヘンチックな絵面はこれまでのライダーには見られなかったのでかなり新鮮でしたね。どこかチャチに思える映像もありましたが、そうした世界の浸食描写も相まって終盤の世界の崩壊により危機感を抱くことが出来ました。合成に頼らずともシャボン玉を飛ばすなどの工夫が見られのも特殊ですね。あの手この手で「異世界」の存在を感じさせてくれる面白さが本作にはあったと言えます。
さてここからは本作での不満点と問題だと思った点。見たくない方はブラウザバックを推奨します。
まず触れておきたいのが設定の説明不足や本編外の人物の描写不足が見られた点。ワンダーワールドをはじめとした世界観の説明がほとんどされないため、何が起きているのか理解出来ないシーンが数多く見られました。これはかなり深刻な問題で、視聴するうえで必要となってくる情報さえも明かされないまま進んでいくので人によってはかなり苦痛を感じていたのではないかと思います。その最たる例が35話で、終始起きている現象に何の説明もされないまま終わってしまったがために、僕も視聴中は頭に疑問符が浮かびっぱなしでした。
それでいて重要な情報を意外な場面でさらりと出すのがまた厄介です。ソフィアの出自やルナの正体といった本編に深く関わってくる設定が明かすべきタイミングでは明かされず、代わりに別の話題になっている時に突如として飛び出してくる内容に毎回ギョッとしまくりでした。「製作側にとっては周知の事実」をあたかも「読者も既に知っている前提」で話しているかのような状況ばかりで困惑は避けられなかったですね。
本編以外の媒体のエピソードも多く、それに比例して重要な情報も分散されていた点もいただけません。知ると本編の不明瞭な部分にも納得出来る要素ばかりなため、そういった情報こそ本編でやるべきと思ってしまいます。情報をまとめて一度に説明しなかったものの、作品全体で大切な情報も小出しにし過ぎたという印象を受けますね。
登場人物の扱いに関しても疑問を抱く要素が多かったです。上述のように各人物をじっくり描いてくれているものの、首を傾げてしまう行動もいくつか見られました。特に16話から始まった内部分裂の展開は何故そう簡単に飛羽真を疑ってしまうのか?と思わずにはいられません。また飛羽真も飛羽真で何か段階をいくつか飛ばしたように話題が飛躍していくシーンが多く、時にはドン引きしてしまう時もありました。どうにも彼らの心情描写が中途半端になってしまったように感じますね。
他にも登場人物の多さ故か各陣営をバランスよく映していましたが、その分それぞれの描写が飛び飛びになっていた点も引っかかります。作品全体を通していくとわかるものの、1話1話だけだとこのシーンは何だったのか?と感じてしまうシーンが連続で挿入されるおかげで理解が追いつかないことが多くありました。毎回戦闘シーンなどの入れるべき描写がある事情が伺えますが、どうせならそれぞれの陣営を1話ごとにかけてじっくり描いてほしかったところです。
あとこれは些細な問題ですが、一般人の少なさがかなり気になりました。怪人が暴れる中で逃げ惑う人々、というシーンが少なく、閑散とした場所での戦闘シーンが多かったように見受けられます。コロナ過における措置として人が密集した状況を作り辛かったのは理解出来ますが、どうしても寂しいと感じてしまいますね。主要人物が多い分モブの存在がおざなりになってしまったことは非常に残念です。
総評としては「独自の世界観をもっと示してほしかった」といったところでしょうか。全体的に説明・描写不足が目立ち、理解するのが非常に難しい内容に仕上がってしまったように思えます。人物に関しても同様で彼らの思考を突き止めるのにかなり時間がかかり視聴が大変でした。
しかしながら上述にもある本作の“物語”の在り方や主人公たちの仲の良さ、ファンタジックな世界観など光る部分も多く、そのどれもが魅力的でした。僕自身この作品の本質を理解してからは一気に作品の要素に惹かれ始めましたね。何だかんだありましたが、終わった今となっては声を大にして「大好き」だと宣言したい作品になりました。
では以下、各キャラクターについての所感です。
神山飛羽真/仮面ライダーセイバー
本作の主人公。何と言っても小説家にして本屋という職業にあるまじき「約束」を守る誠実さが印象的なキャラクターです。良くも悪くも性格が良すぎて他の面々に比べて影が薄く感じるところもありましたが、物語の作り手という唯一無二の役割から最後まで主人公の風格を保っていたと思います。
また思考が飛躍しているのかよく言動が明後日の方向に向かってしまうこともあり、行動力もあるので突飛な展開を引き起こす際には毎回唖然とさせられました。それでも幼馴染や他の多くの人との約束を果たすという目的をどこまでも貫いてくれていたのでかなり好印象で見れましたね。
須藤芽依
一般人枠にしてヒロインの1人。明るい性格のムードメーカーでギャグ描写も多く担当してきましたが、ここぞという場面では仲間たちを叱咤激励する頼もしさを発揮してくれたのが素晴らしかったですね。また編集という「物語を届ける役割」を終盤で見せるなど、戦闘では表に立てない分それ以外で活躍してみせてくれました。
飛羽真の担当編集という立場ながら彼との関係は思いのほか淡泊だったのが残念ですが、その分倫太郎との微笑ましい関係性を築いてくれたのが個人的には超グッド。倫太郎が彼女を「太陽」に喩えたように、本作の「日常」の象徴だったと言えます。
新堂倫太郎/仮面ライダーブレイズ
2号ライダー。サブライダーにあるまじき真面目さと素直さが印象的な本作の癒しとも言うべき存在です。かつ天然で、何より様々なことに関して強い関心を示す子どものような純真さを秘めたキャラクターは見ているだけでほっこりします。「普通のホモ・サピエンス」をはじめとした名言の数々も生み出してくれた点も特徴的ですね。
劇中では所属するソードオブロゴスを「家族」として認識し、それに縛られるあまり迷走を続けてしまいましたが、それを乗り越えて飛羽真たちに「家族」の絆を見出す展開は見事でした。また芽依との関係など微笑ましい展開を常に視聴者に提供してくれて本当に楽しかったです。
3号ライダーにして本作屈指の苦労人。裏切り者の息子という汚名を被り倒れたかと思いきや、今度は闇堕ちしてしまうなど劇中での状況が最も二転三転していた人物としての印象が強いです。とにかく彼自身曇らされるような展開が多く、見ているこっちも何度か胸が痛くなりました。
そういった暴走も全ては飛羽真とルナの幼馴染のためと一貫していたことに関しては好印象。どこまでも他人のために体を張って自分を傷つけてしまう不器用さは見ていて庇護欲が湧いてきます。肩の荷を下ろしてから見せるようになった笑顔からして元は明るい性格のようなので、これからは幸せでいてほしいとつい願ってしまいます。まぁVシネでまた曇らされそうですが
尾上亮/仮面ライダーバスター
「子育て王」を名乗る父親ライダー。ライダー作品に登場する父親にしては珍しく家族想いで息子のために頑張れる良きお父さん。劇中でも息子のソラくんとのやり取りが多く、互いに大切に想い合っているのが良くわかります。(聖剣を背負ったまま幼稚園のお迎えをするシーンは中々にシュールでしたが)
剣士の中でも年長者という設定がこれまた見事で、初登場時は不安定だったものの以降はみんなの頼れる兄貴分として精神的支柱になってくれていました。大秦寺と共に冷静に物事を判断するシーンも多く、おじさんキャラならではの魅力に溢れた好人物になっていたと思います。
緋道蓮/仮面ライダー剣斬
若手忍者ライダー。当初は生意気盛りな若者で賢人以外に対してかなりキツい性格だったことにギョッとさせられました。それでいて強さも十分というのがこれまた衝撃的。戦いを楽しむ様子が見られたり、一方で賢人に関して暴走するなど精神的にはまだまだ未熟な面も目立っていました。
だからこそ後半のデザストとのエピソードは見事でした。他人から必要とされていない者同士が迷いながらもぶつかり合って答えを出していく展開は何度見てもほろりときてしまいます。初登場時からは考えられないレベルの成長を遂げた名脇役としてこれからも記憶に残り続けるでしょう。
大秦寺哲雄/仮面ライダースラッシュ
刀鍛冶ライダー。当初はコミュ障なだけかと思いきや、戦闘時の2重人格や聖剣フェチなど、濃い要素が続々と判明していくとんでもない人物でした。中でもあのユーリが逃げ回る姿を見せたことには衝撃を受けました。色んな意味でネタ要素が強いです。
それでいて上述の尾上さんと同じく、組織に不信感を抱きながらも冷静に見極めようとする大人の対応が見られたのは良かったです。飛羽真に剣士としての使命について叱咤するなど熱い面もあったことには驚きつつも喜びました。戦えなくとも聖剣の修理などで出番がある点がまた美味しかったですね。
ユーリ/仮面ライダー最光
聖剣にして仮面ライダーという異色の存在。マイペースな性格で大切なことを素で教えてくれないなどかなりアクの強いキャラです。現代の様々なものに興味を持ったり価値観の違いを見せてくるなど、千年前の人物らしいジェネレーションギャップ(?)も見せてくれました。全体的に天然なので倫太郎が仲間サイドにいない間のアットホームな雰囲気を補ってくれていた印象があります。
性格の癖の強さはあるものの、様々な場面で活躍してくれるありがたい存在でもあった点が特徴的。色々な情報を知っているわ治癒能力持ってるわそもそも戦闘でもかなり強いわと隙の無い便利キャラとでもいうべき立ち位置で常に安定していたように思えます。おかげで視聴者としても安心して見られるキャラクターでしたね。
神代玲花/仮面ライダーサーベラ&神代凌牙/仮面ライダーデュランダル
兄妹ライダーのコンビ。当初はマスターロゴスの配下だったため敵対していましたが、最終的には協力者となっていました。あくまでいざという時共闘する関係をギリギリまで保持していたのが功をそうしたのか、登場したばかりの頃はヘイトを溜めまくっていたもののすんなり受け入れられたところがあります。
また『ゼンカイジャー』とのコラボ回で実質的な主役に抜擢されたことも印象深いです。あの辺りからこの兄妹のキャラクターがより掘り下げられたと言えます。玲花などはブラコン嫉妬キャラになったり中の人に引っ張られてマジーヌ狂いになったりとかなり愉快になったのが面白かったですね。
さて次回からは新ライダー『仮面ライダーリバイス』の感想を書いていく予定です。仮面ライダー50周年記念作品ということでかなり気合が入っているようで期待が高鳴ります。僕もこれから様々な感想を抱き、それを書き上げるのが楽しみです。もちろんセイバーに関してもVシネや恐らく冬映画などの感想も書いていくと思うので、これからもよろしくお願いします。
ではまた、次の機会に。
↓以下、過去の感想一覧です。
