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LUPIN ZERO 感想

誰も知らない「始まり」

何者でもない少年は、伝説(ルパン三世)となる

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 私事ですが、つい先月から動画配信サービスの1つである「DMMTV」に入っています。最近開始したばかりのサブスクで、以前からDMM自体をよく利用していることもあって入ってみました。アニメに限らず様々な作品が配信されており、他のサブスクと併用しながら楽しく利用しています。(個人的には『パワーレンジャー』シリーズが配信していることにびっくりしました)
 ただ今回DMMTVに入った最大の目的は、昨年末から独占配信されている『LUPIN ZERO(ルパンゼロ)』。『ルパン三世』シリーズの一角であり、あのルパンの少年時代を描いているということで以前から気になっていた作品でした。そして意を決して入会し、視聴したわけです。その結果どこか懐かしさを覚える作風と、ある種攻めたルパンの「始まり」を描いた点に思いっきり魅了されました。予想の範疇を超えなかったものの、だからこその安心感に満ちた作品でしたね。というわけで今回はそんなルパンゼロについての感想を書いていきたいと思います。

 

※ここから先は作品の内容に触れているのでネタバレ注意!!

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  • ユーモア溢れる少年ルパンのドタバタ劇

 (先に謝罪しておくと、僕は原作漫画の少年編を読んだことがありません。そのため漫画の方は聞きかじった情報を語ることになってしまいますがご了承ください

 本作はモンキー・パンチ氏原作の漫画『少年ルパン編』やテレビアニメの『PART1』を下敷きにしたオリジナル作品であり、それらのオマージュ色が強めな内容となっています。OPやEDはPART1で使用された楽曲のアレンジ版を使用しており、他の音楽もそれらを意識したものばかり。映像に関しては当時のOPを彷彿とさせる止め絵が多用されており、アニメを見たことがある身としてはかなり懐かしさを覚えることになりました。

 そして肝心の本編は1960年代を舞台にしており、レトロな雰囲気漂う世界観が特徴的。高度経済成長期だった故の急速に発達した街並みと自然の原風景が残る下町が同居した、そんな絵面は今の時代にとってはかえって新鮮さを感じました。そんな世界観で学生時代のルパンが次元と出会ってワチャワチャとした日常を繰り広げるというのですから、それはもう見ていて楽しかったです。作風も全体的にコミカルでユーモアに満ちているのがまた見やすかったですね。米軍の闇取引などブラックな一面を覗かせながらも、基本的にはルパンと次元が様々な出来事に首を突っ込んでいくのが実に愉快でした。

 個人的に印象に残っているのが第4話。秘密基地づくりに没頭するルパンが次元を巻き込みつつ、上述の米軍が密かに引いているウイスキーを頂戴しようとするしょうもなさには、呆れつつも愛おしさを覚えます。社会情勢的にも当時の米軍を敵に回すことのヤバさを言及しつつも、知ったことかとばかりに好き放題暴れる爽快感はある意味でルパン三世らしいです。ウイスキーを浴びて酔っぱらった主役2人が米軍を翻弄するシーンには笑いが止まらなかったです)近年のルパン作品における小難しさもほとんど存在せず、肩の力を抜いて楽しめる点で本作は実に面白かったですね。

 

 

  • 継承ではない“襲名”の意味

 そして本作は上述の通り、ルパン少年が「ルパン三世」を名乗るようになるまでの過程を描いているのが最大の特徴。しかしその三世の名はルパン一世や二世の後継者という意味ではないのが興味深かったです。

 そもそも本作のルパンは泥棒の才能はあれど、泥棒になることには最初から猛反対。自分を思い通りにしようとする祖父や父に辟易しており、他人に縛られた人生から抜け出そうとする若々しさが見られました。生意気な少年らしさを思わせますが、後々のエピソードで一世と二世がそれぞれ違うタイプのろくでなしであると判明したこともあってすぐルパンに同情を寄せることになりましたね。(特に一世に関してはこのクソジジイがぁ!とマジで内心毒づいてしまいましたよえぇ)

 しかしそんなルパンが次元と出会い、彼との楽しい日常を過ごしていくことで自分にとって最も重要な「ワクワク」に気付いていく終盤には驚きました。最初こそ次元が親の言いなりで仕事をしていると思っていた中、強い奴と戦うことにワクワクしている彼の吐露を聞いてからの流れには舌を巻くばかり。次元のように自分が楽しいと思えることを探求していきたい……そのための手段として、泥棒になる決意を固めるルパンの姿にはどこか晴れ晴れとしたものを感じました。

 祖父のような畏怖の象徴でも父のようなリアリストでもない、あくまでワクワク優先での泥棒がルパン三世。そう考えるとここまでのルパンの反抗にも大きな意味を感じますね。彼にとって三世の“襲名”は名前の継承ではなく、むしろ解放・自由の象徴なのかもしれないと、個人的には考えます。まさにルパンゼロは、何者でもない少年が自分だけのルパン像……多くの人が知るルパン三世を確立していくまでの物語だったのだと思いました。*1

 

 

 では以下、各キャラクターについての所感です。

 

 

ルパン

 主人公にして、後々我々が知る三世になる少年。ご存じひょうきんな性格はそのままなキャラクターが魅力的な主人公でした。(初登場時に泥棒のテクニックでイカサマ賭博をする辺りが絶妙でクソガキ感たっぷりでニヤリとさせられます)自分の楽しいことを最優先する性格もあって、序盤から次元を引っ張っていくのがまた見ていて楽しかったですね。

 一方で思春期らしい生意気さと鬱屈した面が入れ混じった点も印象的。祖父や親の言いなりになることを嫌っているほか、後述の洋子への仄かな恋心は他のルパンシリーズには見られない一面だったのでかなり新鮮でした。それ故ラストの彼女との死別はショッキングでしたが、そんなほろ苦い経験を経て後の三世になっていくと思うと感慨深いものがあるかもしれません。

 

 

次元大介

 もう1人の主人公にして後のルパンの相棒。こちらも初登場からタバコを吸っているわ拳銃をぶっ放すわと、大人の次元のイメージがそのまま子どものころから描かれていたのですぐ印象に残りました。(余談ですが本作が配信限定になったのは恐らく彼が原因*2)ルパンを鬱陶しがっているようでいてその実ノリノリで付き合うツンデレな態度も定番で、2人のやり取りを知っているほどニヤニヤ出来ます。

 そんな次元が本作のルパン三世誕生のきっかけになるのが大きなポイント。同じ親の束縛を知って想いを共有する同志として、何より親友としてルパンの心を変えていくのが面白かったです。ルパンを魅了し、そして彼もまたルパンに魅了されたことに相棒としての運命を感じますね。ルパンが三世として最初に次元の“心”を盗むシーンも相まって、かなり鮮烈な存在として描かれていました。

 

 

洋子

 本作のヒロインにしてキーパーソン。少年ルパンの恋の相手という中々に重要な役どころで登場したのでこれまた驚きました。前半の出番自体はそれなりなものの、まだ幼い少年に引っ張られながらも時には彼を翻弄する、大人の女性としての余裕が感じられたのも興味深かったです。

 しかし後半に入ってからは裏稼業に関わっていたり、革命家もどきの男と付き合っていたりと危ない要素がわんさか出てきてこれまた衝撃を受けました。過去の境遇も悲惨そのもので、その経験故にスリルに魅入られた本質にゾッとさせられます。最終的にルパンの前で死を選んだラストといい、本作の退廃的で仄暗い一面を担っていたと言えますね。

 

 

ルパン一世

 ルパンの祖父にしてかのアルセーヌ・ルパンその人。裸の美女(後々美男も)を侍らせているわ、気に入らない美女の歯を盗む(折る)わと初っ端からろくでもない雰囲気プンプンで唖然となりました。そのうえ初登場回の遺産の相続と偽って参加者の心臓を狙っていたオチには憤りさえ覚えます。そりゃあルパンもこんなクソジジイの跡を継ぎたくはねぇよなぁ……本作のおどろおどろしさはこの祖父に集約されていたのかもしれません。

 また一世が「アルベール」という少年を跡継ぎの1人として育てていたことには驚きましたね。このアルベールが後の『PART5』に出てくるアルベール・ダンドレジーだと思うと中々に面白いです。*3PART5を見ていた人にとってのちょっとしたファンサービスになっていて、結構嬉しかったです。

 

 

ルパン二世

 ルパンの父にして二世。彼に関しては他のキャラと比べて掴みどころがあまり存在しないのが気になりましたね。出番が少なかったのもありますが、PART1に名前だけ登場したルパン帝国建国を企んでいたりその割には息子に泥棒を止めていたりと、真意が見えないうえにどこかちぐはぐに感じたのが彼の不透明さに拍車をかけていました。(ただ資金確保のために依頼人に盗んだ原子砲を売るなどは一世とは別ベクトルでろくでもないと思います)

 ただ祖父とは異なり、息子に対する愛情は少なからず存在していたように感じました。三世を名乗ることを決意したルパンに「泥棒は手に入れるだけでなくたくさん失うってこともでもある」といった旨の言葉を送るなど、自分が泥棒になってからの苦い経験を自分の子に味わわせたくないからなのだろうか、と考えてしまいます。そう考えると愛人(?)の「しのぶ」共々、どこか過保護なキャラクターにも納得がいきますね。

 

 

 ということでルパンゼロの感想でした。いやぁ創作者なら描いていて楽しかったであろうルパン三世の始まりの物語を、制作側の乗りに乗った内容を楽しめましたね。過去の感想で何度も書いてきたことですが、ルパン三世』という作品は書き手によってイメージが如何様に変わるのが最大の魅力だと個人的には思っています。なので本作のオリジナリティは実に面白かったです。

 さてルパンゼロも一旦見終わったことですし、次はAmazonPrimeVideoで配信している『ルパン三世VSキャッツ・アイ』を見ていこうと思います。感想をいつ上げられるのかは未定ですが、もし投稿することがあったらそちらも是非読んでほしいところです。

 

 

 ではまた、次の機会に。

 

*1:ただ第6話(最終話)で二世からワルサーを譲り受けるなど、「親の物を受け継いでいく」描写も少なからずあった。

*2:未成年の飲酒・喫煙のシーンはとてもではないが地上波では放送出来ないからだと思われる。

*3:本作のシリーズ構成担当である大河内一楼が、『PART5』のシリーズ構成も担当していた故の繋がりかもしれない。