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機動戦士ガンダム 水星の魔女 第15話「父と子と」感想

その“繋がり”に彼らは

グエル、お前マジで良い主人公やれてるよ……!!

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  • 打ちのめされても、「それでも」……

 今回の水星の魔女は、スレッタやアスティカシア学園に関するエピソードは一旦お休み。前回の衝撃的な展開からスレッタたちがどうなったのか気になっている中で焦らされてしまいましたが、その代わりとしてみんな大好きグエル・ジェタークにようやくスポットが当たったということでテンションが上がりましたね。2クール目が始まってからずっと気になっていたグエルのその後にワクワクが止まらなかったです。

 そんなグエルですが、フォルドの夜明けに拘束されて地球に降りていた事実にびっくり。しかも便所で縛られた状態で無理やり食べ物を食わされるという、あまりにも雑な仕打ちが冒頭から飛び込んできたのでギョッとしてしまいました。父親殺しのトラウマを背負って自暴自棄になっているのに、交渉の材料として生かされているのは惨い辱めにもほどがあります。それにしてもあの食べさせ方は下手したら窒息死してたよねさらに身の世話を担当していた少女「シーシア」からは父親を失った八つ当たりを受けてまた曇るなど、何から何まで可哀想で見ていられなかったです。

 しかしベネリットグループから送られてきた部隊とフォルドの夜明けのメンバーの戦いに巻き込まれてからは目を見張る頑張りを見せてくれました。負傷したシーシアを助けようと必死になる様子には内心応援しまくりでしたよえぇ。結局シーシアは助けられなかったものの、最終的に自分と父を“繋ぐ”もののために動くことを決意する姿がまた素晴らしかったです。戦争の容赦ない現実に襲われ、目の前で誰かを助けることが出来ずに打ちのめされる……「それでも」これ以上失わないために前に進む……今回のグエルの姿はまさにガンダムの主人公らしさ全開だったと言えるでしょう。(母の言葉の言いなりになっているスレッタに対し、自ら考え行動に移すグエルの対比がまた面白いです)

 彼を拘束していた「オルコット」との関係性も興味深かったです。まずオルコット自身がドミニコス隊(カテドラル)の元メンバーで、青臭い正義感からフォルドの夜明けに寝返った背景を持っているのが面白いところ。そんな彼がグエルを突き放しながらも、同じように青臭い少年を見守ってくれそうな安心感を漂わせてくれていることにニヤニヤさせられます。(まるでバナージとジンネマンみたいだぁ……)2人がこの後どのような行動をするのかまだ不明ですが、絶望から再び立ち上がってくれたグエルに期待しっぱなしになりそうでたまらなかったです。

 

 

  • “父”と“戦い”にどう向き合うか

 今回グエルは自らの手で殺めてしまった父との“繋がり”を大事にしようとしていましたが、彼とはまた別ベクトルで父親との関係に大きな変化をもたらそうとしていた者たちが確認出来ました。まず目に留まったのがシャディクで、養父・サリウスを捕らえたうえで自分の計画を話す様子は、さながら「父との決別」を狙っているかのようでしたね。

 またシャディクの目的が「ベネリットグループを地球に売り渡す」といったものだと判明したのも大きなポイント。劇中の説明をまとめると、アーシアンスペーシアンの戦力差を縮めて拮抗状態にしようとしているのでしょうか。兵器による戦争シェアリングで幅を利かせる御三家に負けない力を地球に与えれば冷戦に持ち越せるという算段なのかもしれません。内容はどうあれ、この兵器主体の社会を変えようと具体的に考えていたシャディクには少しだけ感心させられます。

 とはいえこの計画そのものは「各国が全て核を持って睨み合えばいい」というものと似た危険な考えですね。アーシアンの悲惨さは今回嫌というほど明らかになったものの、武力を与えたところで地球を戦場にするビジネスをひっくり返せるとは到底思えません。それどころかアーシアン側が与えられた武力で報復してくるかもしれないと考えると、シャディクの目論見はまだまだ甘いと言わざるを得ないでしょう。

 

 もう1人がミオリネ。彼女に関しては父・デリングの部下である「ラジャン・ザヒ」に話を聞きに来たのがナイスプレーでした。クワイエット・ゼロや父の真意について有耶無耶にせず、まず最初に知っていそうな人物に当たってみる適切な行動力には惚れ惚れさせられます。ラジャンの人の良さ(ミオリネに「あなたはあなただ」と言ってあげる善良さが素敵)も相まって、今回の他のキャラたちと比べるといくらか穏やかに見れましたね。

 そしてラジャンの口からクワイエット・ゼロに全てをかけていた両親の話が語られたのがまた衝撃的でした。デリングが兵器が決定権を持ち、人間はパーツとして消費される戦争に対する忌避感や怒りを抱いていたこと、人間性の回帰」を求めていたことが明らかになったのも興味深いです。(プロローグの演説シーンも、恐らくはデリングの本音が混じっていたのかもしれませんね)そのために一度は否定したガンダムに計画を委ねる行きあたりばったり感には少々呆れてしまいましたが、それほどまでに戦争を憎んでいた点にはデリングには少しだけ好印象を抱きます。

 “父”と“戦い”、この2つのワードが大きく関わり、そして子どもたちがその問題にどう向き合うのかが描かれていたのが今回の特徴でした。ある者は繋がりのために再び立ち上がり、ある者は親世代が作った負の遺産清算を狙い、またある者は……といったように、親が残したモノなどに対して自ら考えて行動する重要性が問われていたように感じます。母に縛られているスレッタとはある意味で対照的です。ともあれ、今までで最もガンダムらしさに溢れていたようにも思えたので、主人公が全く出てこなかったものの十分に楽しめましたね。

 

 

  • 武骨な重装歩兵が外敵を迎え撃つ

 今回フォルドの夜明けメンバーが搭乗した機体「プロドトス」はHMI(ハヌマット・マニュファクチャリング・インダストリー)製のMS(モビルスーツ)。製作会社の詳細は明らかになっていませんが、いわゆる御三家とは別の企業のようです。そのビジュアルの特徴も御三家の機体とは異なっており、他作品で見たことがあるような武骨で角ばったボディが目を引きます。中でも黄色いモノアイが頭部奥に配置されたデザインは、鉄血のオルフェンズ』のグレイズを彷彿とさせますね。

 武装薙刀アサルトライフルといった実体を持った刃や弾丸を使用している模様。宇宙で配備されている機体のようなビーム兵装がほとんど確認されていないことから、あちらと比べて技術や資源が不足していることが読み取れます。実際劇中では地球に降下してきた「ザウォート・ヘヴィ」や「ハインドリー・シュトルム」相手に劣勢を強いられているのが印象に残りました。この機体の性能さからも、アーシアンスペーシアンの格差が如実に表れていると言えます。(しかもプロドトスだけでは戦力が足りないからか、フォルドの夜明けメンバーが機関銃付きのトラックを走らせている辺りがまた切ない……)

 ただプロドトスの戦闘シーン自体は見応え抜群でした。本作で初めての地球圏内での戦いということもそうですが、限られた戦力で少しでも足掻こうとする様子にはどこか胸を打たれます。ロボットアニメ好きとしてもこういった泥臭さ満点の戦闘風景は見ていてワクワクさせられますね。同時にグエルがシーシアを助けるため、プロドトスに乗り込んで浮上するシーンも印象的。結果少女は助けられなかった者の、グエルの想いが戦闘以外でMSを活躍させた瞬間として目に焼き付きました。戦力的には一歩劣るままでしたが、プロドトス自体の魅力は十二分に描かれていたと思います。

 

 

 さて次回のサブタイトルは「罪過の輪」。もうこの時点で色々と不穏です。サブタイにある「罪過」とは誰のものを指すのか、そしてどのような罰が待っているのかなどと考えてしまうので今から不安でなりません。スレッタたちがあれからどうなったのかも気になりますが、それを見るのがちょっと怖くなってきました。

 一方で今回親世代の問題に触れたのもあって、デリングたちが残した負債などについて触れられていくようにも思えます。だとすれば子世代がその問題を如何にして解決していくのが大きなキモになりそうですね……

 

 

 ではまた、次の機会に。