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BEYBLADE X(ベイブレードX) 簡易感想(第1~4話)

 

 

見えないもの

“X”

 を見せてやる。

 

 といったキャッチコピーで展開が始まったホビー『BEYBLADE X(ベイブレードX)』。ベイブレード新世代を扱った漫画がコロコロコミックで先んじて連載開始され、アニメシリーズも放送されてからしばらく経過しました。僕自身コロコロで漫画からチェックしている身なのですが、ベイブレードが本格的にプロ競技として認知されている世界観でのシビアな世界観が印象に残りましたね。過去作でも競技として扱われてはいたものの今まで以上に漠然としたイメージが消え去り、広告や戦略方面などで妙な生々しさが出ているように感じます。それでいて「ベイは遊び」という主人公の主張を真っ向から描く作風が個人的にも非常に好みです。

 またアニメに関してはOPとEDのやたらオシャレなテイストにまず驚かされました。熱血!といった雰囲気ではない、静かでどこか大人びたイメージがこれまでのベイブレードアニメとは異なることを意識させてきます。(特にEDは映像がやたらサイケデリックで度肝を抜かれましたね)というわけで今回はそんなベイブレードXの1話から4話までの感想を書いていきたいと思います。読んでいただければ幸いです。(コロコロコミックで連載中の漫画版についても言及するので注意

 

 

 

 

 

第1話「X」

 まず第1話はベイブレードのプロブレーダーになるため「Xシティ」のに訪れた「風見バード(かざみ・バード)」の大きな挫折が印象に残りました。というよりはアマチュアの場に突如乱入してきた「石山タクミ(いしやま・タクミ)」プロの大人げないベイ破壊が衝撃的と言うべきでしょうか……負けた相手のベイを容赦なく壊して「ベイなんてやめろ」と言ってくる容赦ない初心者狩りにはかなりドン引きさせられます。(でもこの治安の悪さにホビーアニメを見てるなぁ、と安心感を覚える自分もいたり)このタクミに関しては特訓云々の話などはまだわかるのに、味方すら負けたらベイ破壊する行為のせいで全てが吹っ飛ばされた気分です。

 そんなベイを真剣勝負の場として語るタクミに対し、謎の「仮面X」こと「黒須エクス(くろす・エクス)」が引導を渡すのがこの回のメイン。キモは何といっても「ベイは遊び」「楽しんだもん勝ち」という主張ですね。プロ競技化することでシビアな駆け引きなどが介在するようになった世界に、この精神を貫こうとする姿勢は個人的にもかなり好感が持てます。バードが楽しかったあの頃の感覚を取り戻していく流れもしっかりしており、前半までの彼の失意の描写が濃く描かれていたのもあってかなりグッときました。極めつけとしてエクスのベイ「ドランソード」がエクストリームダッシュで勝利する光景もカタルシスに満ちていたと言えます。1人の少年が過酷な現実を見せられながらも初心を取り戻していき、それを得体の知れない強者が導きながら「Xタワー」という頂上を目指していく……物語の始まりとしては申し分ない内容でした。

 

 

第2話「七色の刺客」

 プロ昇格をかけて「七色マルチ(なないろ・マルチ)」との戦いが描かれた2話。この回はマルチの強烈なキャラクターがこれでもかと押し出されており、動画配信者の設定や状況に応じてベイと服装をチェンジする属性のてんこ盛りが特徴的です。他にも中性的なキャラ、他にもマルチを推すファン3人組(個人的には左のカメラ娘ちゃんが好み)も妙に目に焼き付きます。バードにベイをプレゼントする親切心に見せかけた戦略も、自分の勝利を目立たせるという彼(彼女?)のクレバーさに拍車をかけていました。

 そんなマルチに「ヘルズサイズ」で真っ向から挑むバードですが、アニメオリジナルでもある緊張からのミスとそこから勝負に臨むまでの様子が大きな見どころ。プレッシャーでベイを落としてしまうシーンからは、彼の敗北への恐怖が伝わってきます。だからこそ勝ち負けにこだわらない全力で戦う覚悟を決める瞬間が輝いて見えましたね。どっしりとしたシュート体勢と、見よう見まねのエクストリームダッシュはまさにバードの今の自分なりの全力が描かれていました。残念ながらマルチの「ウィザードアロー」には及ばず敗北しましたが、満足感は十分味わえたと思います。

 また余談ですが、そんなバードに対する周囲の反応がここすきポイント。序盤のX(エクス)のファンが見せた辛辣なバード評はともかく、上述のミスに対する「頑張れ」という応援、さらに敗北したものの彼の健闘を評価するマルチのファンの反応には地味に感動させられました。勝敗の結果だけが全てではない、健闘した者に暖かい声をかけてくれる優しい世界はかなり胸に響くものがありますね。

 

 

第3話「チームペルソナ」

 敗北したバードに代わってマルチと戦うエクス。2人の対決が前半の内にあっさり決着したのは結構意外でした。マルチの「ナイトシールド」相手にダブルエクストリームダッシュでエクスが勝利する流れはある種安定感がありましたが、漫画同様マルチの入念な戦略が圧倒する瞬間は無情なものを感じます。相手がどんなことをしてこようとも、持ち前のセンスだけで勝利してみせるエクスの才能の塊のような描写が彼への揺るぎない信頼と、それに対する不安を同時に想起させてきますね。
 それはともかくマルチも仲間にして「チームペルソナ」が本格結成されたわけですが、後半はマルチのブランディング力が披露されたのが注目ポイントとなっていました。バードには特訓の様子を全面に押し出しつつエクスはとっておきとして敢えて見せずに済ます、各々のブランドの魅力を即座に見抜いてプロデュースする手腕には舌を巻くばかり。動画投稿のために努力を欠かさない姿勢も素敵ですし、何よりマルチがチームであることを誰よりも意識していることがわかります。単純に強さなどを求めるだけでない描写はホビーアニメとしてはかなり新鮮でしたね。

 またアニオリでバードがかつての仲間と再会するシーンが挿入されていたのが印象的。ほとんど会話をせず少しだけ言葉を交わしての別れとなりましたが、それぞれの表情の変化から謝罪や後悔、そして激励といった感情が見え隠れしていました。そこからバードが諦めずに戦うことを改めて決意する姿で、1話の清算が済んだことを確信しましたね。ここからバードの新しい戦いを予感させてくれる素晴らしい展開だったと思います。

 

 

第4話「ベイスポンサー」

 そして4話ではプロになるために必要なスポンサー探しが繰り広げられることに。個人での大会参加が多かったホビーアニメにおいて、この辺りの設定も実にプロ競技としての描写の本気度が見えてきます。それはともかくスポンサー候補である「駒刃寿司(こまばずし)」の「寿司谷タイショー(すしや・タイショー)」社長の「夢を託す」様子に胸打たれましたね。かつてベイでプロを目指したもののなれなかった無念を、スポンサーとなることで晴らす点は切なくも頷きたくなるものがあると感じます。次世代の若者に夢を叶えてもらうために尽力する……大人なりの夢との付き合い方というものを見た気分です。

 一方でそんな社長を支える「冥殿メイコ(めいでん・メイコ)」さんは厳しい人物として描かれていたのが興味深かったです。元プロという肩書きもさることながら、勝てないと判断した勝負はさっさと終わらせる合理主義っぷりには面食らいました。ある種エクスの楽しむ姿勢と相反しているものの、スポンサー試験という場で相手の実力を求めてくる様子に彼女なりの真剣さが伝わってきます。何より社長の夢を叶えるためにも、夢を託せる相手を選別していこうという言動の数々に大いに納得させられました。社長が夢や青春といったロマンを担当している分、メイコさんが厳格に徹することでバランスを取っているのでしょう。何よりクールな長身メガネメイドなのが最高だよメイコさん!!

 メイコさんの「シャークエッジ」と戦うマルチの向上心にも目を見張るものがあります。元プロに対して「常に進化し続けなければならない」と言ってのけるのは流石といったところ。新ベイ「ナイトランス」によるぐらつくことで背の高いベイとしての特徴を活かして押しつぶす戦法にも感心させられました。

 

 

 というわけで序盤の感想でした。主人公チーム3人がプロになるまでの道のりを簡単に描きつつ、次回からのプロリーグ本番に繋いでいく導入としてわかりやすく仕上がっていましたね。この4話でエクスやバード、マルチのキャラクターが十分に伝わってきたと思います。(エクスに関してはまだまだ謎が多いのですが)ベイバトルパートもシュート時の角度などを組み込んだ戦略描写が多く盛り込まれており、現行ベイをほとんど触ったことがない身でもバトルの様子に没入することが出来ました。

 あとはやはり、漫画版と比べてもバードに関する描写が実に丁寧になっているのが好印象。既に実力者であるエクスとマルチとは異なりまだまだ弱いバードですが、敗北を重ねながらも自分の欠点を見つめ直して努力を続けていく様子が多く描かれていたことに感銘を受けました。そんなバードの姿勢を認め、マルチたちが支えていくシーンもあって微笑ましかったです。おかげで現状のバードは全戦全敗ながらフラストレーションは少なく、むしろ彼の成長と勝利を願うほどに応援したくなってきました。凡人が少しずつ強くなっていく」シチュエーションが大好物な身としては、そうしたバードの描写へのフォローが上手なアニメには大いに惹かれます。無論エクスやマルチたちの実力者としての安定感も素敵ですし、今後のチームペルソナのバトルが実に楽しみです。

 

 

 ではまた、次の機会に。