新・メタレドの楽しんだもん勝ち!

様々な作品について語ったり語らなかったりするサイト

BEYBLADE X(ベイブレードX) 簡易感想(第9~12話)

 

 

 年明け最初のベイブレードXのアニメ感想記事も、何だかんだで3回目まで来ました。改めましてここまで読んでくれている読者の皆様に感謝を。最初の記事に訪れる方が多いのも嬉しい話です。

 

metared19.hatenablog.com

metared19.hatenablog.com

↑前回までの感想についてはこちらの記事を参照。

 

 さて今回は9話から12話までのエピソードを取り上げますが、これらのエピソードは全体を通して「バードの成長」と「プロとしての付き合い方」がメインになっているように感じますね。前者は目先の白星ではなくバードの心身の強化月間であり、後者はただの遊びではなくなったベイの世界に対するストイックな世界観が目に留まりました。他にも例によってベイバトルがしたいエクスの態度が引っ掛かることがありましたが、これは最後の辺りで触れようと思います。(そのためエクスについては下に続く

 

 

 

 

 

第9話「ベイクラフター」

 まずは上述通りバードの成長に繋がるエピソード。愛機・ヘルズサイズを使いこなせていない点や「ベイバトルパス」なる重要アイテムの存在を知らないなど情けなさも目立ちましたが、その一方で相手を想う優しさなどがフィーチャーされていたのもあって彼に対してより親しみが持てました。新たなベイを作ってくれているマルチへの差し入れのおにぎりはまさにバードの気遣いの表れで、受け取ってくれたマルチの「ベイの力を引き出す工夫」と重ね合わせるシーンにも胸打たれます。何よりバード×マルチの関係に気ぶらずにはいられねぇぜ!(あとは「ベイの使い分け」などアニメでは珍しいことを推奨しているのも興味深かったです)

 そうして完成したバードの新たなベイ「ヘルズチェイン」の初陣は残念ながら敗北。しかしながらマルチのヘルズサイズに十二分に食らいついたことや、相手の思惑通りの勝利ではなかったことからただの黒星ではないことを物語っていたのもあって結構清々しさを覚えますね。個人的にはベイカフェの店員など、バードの奮闘を評価してくれている人も着実に増えてきているのがわかる描写をしっかりやってくれたのが嬉しかったです。冒頭でマルチが語ったように、ただ勝つだけではない「魅せるバトル」の在り方を学ぶ展開としては申し分なかったと言えます。

 他にもマルチのバックボーンに繋がる伏線も気になるところ。ベイを制作する「ベイクラフター」の資格を持っていたり、高価なベイマシンをポンと用意するなどとんでもない金持ちの家出身である可能性を示唆してきたことには大いにそそられます。如何にも不自由しなさそうな経歴の持ち主ながら、配信者として活動する彼(彼女?)に関しての興味は尽きません。

 

 

第10話「プロの世界」

 バードの成長にほっこりしたのも束の間、続く10話ではプロの世界の過酷さ・無慈悲っぷりがこれでもかと炸裂していました。何といっても1話で戦った「チームファランクス」にスポットが当たったのが衝撃的で、タクミ率いるファランクスメンバーのプロとしての瀬戸際の話に見入ることになりましたね。スポンサーからの支援が打ち切られればプロとしてやっていけなくことが丁寧に描かれており、ただ勝つだけではダメという状況に身を詰まされそうになりますファランクスのスポンサーの嫌味な態度も相まって、プロの業界の負の側面を目の当たりにした気分です。

 それ故か、そんな状況でも腐らず喰らいつこうとするタクミたちには好感が持てましたね。1話のベイ破壊については今見ても過激すぎたと感じますがそれは置いておいて、1度負けた仮面Xの対策をしっかりと練って試合に臨む姿勢は敵ながら天晴といったところ。何より勝ち抜き戦という方式でいきなりXが出てきたという泣きっ面に蜂のような展開もあって、判官びいきしがちな身としてはタクミと彼の「ストーンモンブラン」の粘り強さに応援せずにはいられませんでした。

 ただまぁ、そんな彼らの頑張りも空しく敗北して打ち砕かれるのが切なかったですね。マルチ謹製の新ベイ「ドランダガー」による3連続エクストリームダッシュの瞬間は、Xの強さも相まってラスボスのような絶望感に溢れていました。結局ボロ負けしてスポンサー降板というファランクスの末路には思わず劇中のバードのように同情を覚えてしまいます。マルチが言っていたように相手を蹴落とす覚悟やドライな精神も必要という、本作のシビアな世界観を体感させられる回でした。

 

 

第11話「カドバーの試験」

 11話は再びバードにスポットが当たった回。B4(世界ベイブレード管理機構)デュエマのD4と微妙に名前が被るな……の「カドバー」が設けた試練を受けるというXタワーの変わったルールに驚く間もなく、例によって即負けてしまったバードの特訓が描かれました。ただキャンプ先についてきたエクスの自由奔放さに振り回される様子には思わず苦笑いせずにはいられなかったです。というのもベイバトルがしたエクスの楽観的な態度と、バードの必死な態度が絶妙に噛み合っていなかったからですね。焦るバードの横でウキウキ気分なのもありちょっとイラっときてしまったり。

 しかしエクスの「嫌ならやめちゃえばいい」といった旨のセリフにはハッとさせられました。彼にとってベイはどこまでいっても所詮遊び、勝てるかどうかでなく、面白いかどうかで続ける理由を探す考えが感じ取れましたね。その言葉が結果的にバードの焦りを振り払う展開も見ていて気持ち良かったです。ただ「やめない」発言の際に謎の風が発生したシーンで思わず吹き出してしまった件再試練においてもバード自身のベイの在り方を取り戻すのも相まって、30秒の試練達成の余韻を味わうことが出来ました。ようやく出現したヘルズチェインのイメージなど、バードが果たした演出も見逃せません。「ベイは自由」「誰でもない自分自身の戦い方」といった理想的な一面を見せてくれる回としても面白かったです。

 

 

第12話「最後の闘い」

 12話は「最後」という不穏なサブタイが目に付きますが、それを担っていたのが「丸湖カルロ(まるこ・カルロ)外人っぽい名前だけど日本人なの!?というゲストキャラだったことが明かされ余計に驚かされました。気の良いあんちゃんともいうべき親しみやすいキャラクターで、バードのことを気にかける世話焼きな様子にもどこか癒されますね。(使用ベイがバードがかつて使用していた「ストライクホーク」というのも味わい深い)その一方でプロ引退を考えている大人の切なさが描かれており、強敵相手に勝てない故の苦しさを抱いているので見ていて胸が締め付けられます。10話のタクミとはまた違った形で、プロの世界を生きていく難しさや苦しさを体現した存在といえるでしょう。

 そんなカルロの引退試合となるエキシビジョンマッチにて、仮面Xとの激闘は本当に手に汗握るものになっていました。クロムという大きな壁に打ちのめされながらも、目の前の強敵に全力でぶつかる彼の姿は最高にカッコよかったです。惜しくも敗北したものの、最高の試合を果たせたことへの清々しい笑顔に思わず感動せずにはいられなかったです。そして引退後もベイを続けることを誓い、バードに夢を託した後ろ姿がこれまた爽やかでしたね。10話と同じくプロの世界で夢破れた者を描きながらも、こちらは対照的にどこか誇らしく思えるポジティブ要素に満ち溢れていたのが素晴らしかったです。

 他にも「チームユグドラシル」のリーダー「不死原バーン(ふじわら・バーン)」の存在も印象的。現状チームメイトを慮る優しさが満ち溢れる理想の上司のようなキャラクターですが、どうにも胡散臭く感じてしまうところがあります。彼の語る「ベイタイムシフト」なるものの意味も不明ですし、その目的がどこにあるのかに注目したいです。

 

 

 というわけで12話までの感想でした。いやぁチームの足を引っ張りがちだったバードが少しずつ進歩していく様子が見ていて楽しかったですね。自分の弱さを目の当たりにしても腐らず努力する様子、何より要所要所で見せる気遣いの出来る優しい性格に好感度が爆上がりです。現状は未だに1勝も出来ていないのがもどかしいですが、着実に成長していると思うので今後に期待が持てるかと思います。

 

 またここまでのエピソードを見通してきて、エクス(仮面X)に色々と思うところが出てきた点が個人的に見逃せません。というのも1話で彼が語った「ベイは遊び」「楽しんだもん勝ち」という姿勢は素晴らしいと思う反面、それが出来ずに去るキャラの描写も相まって何とも釈然としないものを覚えてしまいました。

 勝つことで魅力を引き出すことに真剣になっている他のキャラと比べても、エクスのベイバトルしまくりたい態度は明らかに浮いています。多くのブレーダーが必死になっていることを意識せずにこなしている様子に、無自覚な天才故の自分本位な態度が透けて見えてきます。自分がバトルを楽しめれば良さそうな、悪い意味で他人を慮れないところがエクスの最大の欠点なのかもしれません。(とはいえ11話でのバードへの言葉など仲間意識はないわけではないでしょうが)負け続けるものの他者への想いと自身を磨いていくバードと、勝ち続けるもののその楽しい感情が一人走りしているエクスの対比も興味深いです、

 最も遊びとしてのベイとプロの世界の折り合いの付け方は今後描かれていくのでしょうし、その過程でエクスの性格についても言及されるかもしれません。現状は彼の語る遊びは「強いブレーダーだけが享受出来る弱肉強食の理」のようなものになっているので、その辺りにも一石を投じてほしいところ。遊びでも勝ち負けが存在する以上避けられない“都合の悪い事実”に、本作はどのような答えを出していくのか楽しみですね。

 

 

 ではまた、次の機会に。