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ガンダムビルドリアル 感想(簡易総評)

少年たちよ、立ち上がれ

ままならない現実(リアル)に負けず、彼らは創造(ビルド)し続ける

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ガンプラを題材にしたガンダムビルドシリーズの最新作として製作された『ガンダムビルドリアル』。ビルドシリーズどころかガンダムシリーズ全体からしても珍しい連続実写ドラマという方式*1で動画が配信されたことには衝撃を受けました。実際のガンプラを映していくやり方はガンプラの販促としては理に適っていると言えますが、それでも前例のなかったのでどうなるのか、と思いましたね。

 配信中のことに関しては1話が公開されて以降のスケジュールがはっきり明かされなかったうえ、突然YouTubeからバンダイチャンネルに配信場所を移したと思ったら結局YouTubeに戻ってくるなど裏側で何かゴタゴタがあったであろうことが察せられる事態が多く少々困惑させられました。先程も書いたように初めてのガンダムドラマということもあって若干不慣れなようにも感じられましたね。

 とはいえドラマそのものは面白かったです。CGのクオリティもさることながら、過去のビルドシリーズにはない要素が満載で非常に楽しめました。今回はそんなビルドリアルの印象的だったストーリー要素について書いていきたいと思います。(※過去のビルドシリーズと比較した発言が度々出てきます。ご了承ください

 

 

  • 等身大のリアルな少年たち

 まずあげておきたいのが主人公の「ヒロ」をはじめとした登場人物たちについて。本作では高校生である主人公たちがガンプラバトルのチーム「ブライト」を組んで大会制覇を目指すわかりやすい物語なのですが、その途中で繰り広げられる仲間たちとの不和や衝突がメインだったと言えます。共にガンプラ製作とバトルの特訓に精を出す中ですれ違いが少しずつ積み重なっていき、それがメンバーの1人「颯太」の脱退をきっかけに爆発していく流れには戦慄しました。(そもそもが仲間と組んだガンプラが紛失したことをきっかけに解散してしまった過去から始まっていますし)ちょっとした不和が最終的に大きな衝突を生むストーリーは見ていて辛いと感じる時もありましたが、それ以上に興味深かったです。

 かつての仲間たちと再びチームを組むことで生まれた諍いは、感情を溜めこみがちな思春期の少年たちだからこそ起きたものだと感じました。感じたことや思ったことをストレートに言葉に出していたあのころとは違い、心と体が変化していく過程で思い悩むことが多くなった高校生に小学生時代と同じ関係で付き合っていくことが如何に難しいかがよく出ていました。中でも颯太やタクミはそういった描写が一際多く、良くも悪くも小学生時代とあまり変わらないヒロとの関係にひびが入っていくような演出がいくつか見られましたね。

 そしてヒロは小学生の頃と変わらない、直情的な性格が特徴的な少年でした。他と比べても精神の成熟が遅いからなのか、劇中では度々思ったことをすぐ口に出し、それが原因で仲間たちとの仲が険悪になっていく様子が度々描かれました。他のメンバーが子どもの頃とは同じでいられないことに悩む中、あの頃と同じノリで絡んでくるヒロの存在はかなり厄介だったと言えます。

 

 そんな問題児だからこそ、颯太の件やタクミとの衝突を経て少しずつ変わっていく様子が描かれていたのが素晴らしかったです。サツキら異性との付き合い方に戸惑い、ガンプラで勝てないことに悩み、仲間たちとの不和について考えていきながら一歩一歩成長していく姿は微笑ましくもあり、感動的でした。特に5話のサツキと会話するシーンで見せた「ガンダムの大きさと自分の悩みを重ねていく」描写には感心します。ガンダムを通じて自分の抱えている問題に自分なりの決着をつけていく内容は非常に良く出来ていました。

 同じように颯太とタクミに関してもきちんと決着をつけたのが素晴らしかったです。特にタクミは過去の事件からずっと仲間たちに対して後ろめたさを感じていた中、自分なりの決着をつけることで颯太や今泉との関係にも折り合いをつけていく展開を見せてくれました。他のチームに移籍してしまった颯太を責めるでも呼び戻すでもなく、彼の選択を尊重したうえで後悔させることで後腐れをなくすラストには驚かされましたね。迷い続けたからこその答えがはっきりと示されていたと思います。

 未熟故に間違いをしてしまい、その結果不和を生んで衝突してしまう・・・・・・しかし自身の間違いを認めて一歩一歩前に進んだからこそ成長していく・・・・・・そんな様子が6話をかけてじっくりと描かれていました。子どもから大人へと変わっていく途中の不安定な時期の少年たちならではの、等身大のリアルな物語だったと言えます。

 

 

  • 「好きだからこそ本気になれる」とはどういうことか?

 前述の通りビルドリアルは思春期の少年たちの物語だったのですが、個人的には同時に「“好きだからこそ本気になれる”という言葉の競技的側面」ついて追及していたと感じました。ビルドシリーズの元祖である『ビルドファイターズ』にて発せられた名台詞*2であり、シリーズ全体を象徴しているこの言葉は、「趣味の領域で遊びに過ぎないからこそ、人は好きなものに本気で取り組める」というホビーアニメとしても理想的な“夢のある”考え方と言えます。そんな中本作はこの言葉に対して、ある意味でリアルな領域に足を踏み込んでいくような物語を展開していきました。

 まずビルドリアルの世界におけるガンプラバトルはeスポーツとしての扱いがされているのが特徴的。全国規模で大会が開催される点はアニメと同じですが、それに取り組む人物たちが織り成す人間模様はかなりシビアでした。その象徴ともいえるのがライバルチーム「モンストル」の存在です。リーダーの「白星」はチームを強くするために財力などを惜しまない一方、基準を満たせない相手を追い出したり逆に颯太のように有能な人材を引き抜いたりするなどかなり夢のない手段ばかり行っていました。

 

 しかしこれが悪いことかと言われるとそうではないとも思えます。スポーツの世界においてメンバーの交代や引き抜きは当たり前のように行われている行為であり、ガンプラバトルがeスポーツになった以上当然の流れだったと言えます。スポーツとして洗練されていくからこそ、勝つことの重要性とそのために必要な努力が描かれていったのでしょう。遊びに対して本気になった結果、競技的志向に向かっていく・・・・・・現実のeスポーツでも見られる光景が本作では展開されていました。

 同時に颯太が抜けたことでチームに穴が開いたブライトのメンバーがと悩み続ける様子が描かれていった点も興味深いです。上記にもある通り小学生時代と同じノリでやってきたからこそ生まれる不和がブライトでは見られましたが、同様にあの頃のように遊びのままではいられないことが克明に示されていました。勝つために本気で取り組んでいる相手チームの練度に圧倒され、そのうえ颯太が移籍してしまう事態に戸惑いながら「勝つためにどのようなことをすれば良いのか」と自問自答していく展開は思春期の少年たちの悩みのようです。子どもと大人の間で揺れ動くのと同じように、遊びと勝利の間で苦悩する物語がそこにはありました。それ故に3話の女子チームのような「勝利を追求しながらでも自分の“好き”を示している相手」とのバトルを経て自分なりの自由な答えを出していったのだと思います。

 遊びとはいえ真剣勝負である以上、そこにはシビアな選択が介在している。本作ではその問題を強く示しつつ、主人公たちらしい答えで解決していきました。「好きだからこそ本気になれる」とは言うものの、本気になるにはどうすればよいのか?ただ単に好きでいれば勝てるものなのか?本気になれなかった者はどうなってしまうのか?そういったアニメではなぁなぁにされてきた“都合の悪いこと”にビルドリアルは真摯に目を向けていったと言えます。アニメのような爽快なストーリーを期待した人ほどショッキングな内容だったかもしれませんが、僕個人としては非常に楽しめました。「遊びの捉え方」に対する新たな切り口を見せてくれたことには感謝したいですね。

 

 

 アニメとは全く異なるアプローチでガンプラバトルを示し、新たな可能性を広げてくれたビルドリアル。実験的な作品でありどうなっていくのか予想がつかない展開にワクワクさせてもらいましたが、それとは別に少々引っかかる点もいくつか見られました。(ここから先は批判が多いので見たくない方はブラウザバックを推奨します

 

 まずストーリーに関して爽快感がなかったこと。こちらに関しては上記のストーリー展開上仕方なかったとはいえ、視聴してスッキリしないことが多かったです。考えさせられる内容だった故に、難しく考えず楽しめるストーリーを求めていればいるほどモヤモヤしてしまう結果に終わってしまった印象が否めません。

 他にもガンプラバトルの描写に関してはCGのクオリティに驚かされた一方、全体的にあまり動かない機体の絵面にはがっかりさせられました。起動する瞬間の動作などは重量感たっぷりでしたが、いざバトルが始まるともっさりとした動きが多くスピーディーな要素はあまり見られませんでした。実写の風景に自然と溶け込むほどのCG故仕方がないと思うところもありますが、アニメのようなバトルが見たかった身としてはとても残念です。この辺りはまだまだ映像作りの経験不足のようにも感じられるので、場数を踏んでいけば想像通りの映像が見れるかもしれないと期待しておきたいですね。

 

 

 というわけでガンダムビルドリアルの感想でした。初の連続ドラマということでどうなるかと不安になりましたが、いざ見終わってみればとても楽しめる作品でしたね。アニメのビルドシリーズのような作品を期待していた人にとっては「これじゃない」という感想を抱くかもしれませんが、ガンダムガンプラを通じて困難を乗り越え、強くなっていく少年たちの物語は間違いなく「ガンダムビルドシリーズ」だったと僕は思います。

 

 さてドラマは既に終了しましたが、ビルドシリーズは今度はスマホゲームであるガンダムブレイカーモバイル』の映像化などで少しずつ続いていく模様。どんな形であれ、シリーズが継続されていくことはいいことです。そうして続けていけばまた新たなテレビアニメ、ひいてはビルドリアルに続くドラマシリーズがいつかは展開されていくことでしょう。その時を楽しみにしつつ、これから先もビルドシリーズを応援していきたいと思います。

 

 

 ではまた、次の機会に。

 

 

↓以下、過去の感想が書かれた記事一覧です。

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*1:連続実写作品としては『G-SAVIOUR』といった前例があるが、ガンプラを題材とした実写作品は本作が初である。

*2:ガンダムビルドファイターズ』第6話参照。