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2023年アニメ映画簡易感想 その2

 

 

 2024年に突入して既に数日が経過しましたが、皆様はいかがお過ごしでしょうか。新年早々の衝撃的な事態の数々に心穏やかではいられない状況を送っている人々も多くいるかと思われます。かくいう僕も、元日から起きた出来事に少々動揺せざるを得ない数日を過ごすこととなりました。

 昨今は中々に厳しいですが、こんな時だからこそ明るく楽しむべきものを楽しみたいと思っています。今回はそんな想いを胸に、去年の内にやり残したことの1つである2023年に観たアニメ映画の感想を書いていく予定です。暗い空気の中にいる方々にも、今回の感想を読んで「楽しい」という気持ちが伝わってくれれば幸いです。

 

※ここから先は映画の内容に触れているのでネタバレ注意!!

 

 

 

 というわけで以下、今回の映画感想です。

 

 

 

 


 

 

 

 

 

 

 


SAND LAND(サンドランド)

 DRAGON BALL(ドラゴンボール)』で有名な鳥山明氏がかつて手掛けた短期集中連載作品のアニメ化。作品そのものが初耳だったので最初こそ初報を聞いた時はピンとこなかったのですが、いざ原作漫画などをチェックしつつ(ちょうどジャンプ+で原作が無料公開されていましたし)映画館に足を運んで観た結果思った以上にハマってしまいました。銀河パトロール ジャコ』を読んだ時も感じたことですが、鳥山氏の異質な世界観ながらスッと入ってこれる作風には舌を巻くばかりです。

 さて本作の特徴としてまず挙げられるのが上述にもある「没入のしやすさ」。人間とは別に魔物が存在する世界で砂漠だらけの世界を舞台に泉を探す……というシンプル極まりないストーリーで非常に魅力的に仕上がっていたことに驚かされます。何故ここまで砂漠になったのか?といった説明もほとんどない*1ものの、それらに対する疑問などを抱かせることなく「こういうものだ」と感じさせてくれる不思議なわかりやすさがありました。

 登場キャラの行動もある意味でシンプルで、序盤のキャラ紹介からこうなるだろうという納得も大きかったです。主人公の「ベルゼブブ」のワルを気取りながらも隠し切れない善性などはまさに典型となっており、彼ならこうやって助けてくれるだろうという安心感が得られました。意外性といったものは薄いものの、その分わかりきったもので楽しませてくれる“お約束”の極致みたいな作品だったと言えます。個人的にもここまで退屈さを感じさせないストーリーは驚愕してしまいますね。

 

 以上のようにシンプルな本作ですが、敢えてテーマのようなものを挙げるとしたら「偏見」と「自らで考える」でしょうか。魔物を悪と信じる人間たちの考えや巨大なダムを隠していた王国など、わかりやすい悪役や世間が作り出した虚偽や欺瞞が物語の各所で見られました。そんな世界だからこそベルゼたち魔物の親しみやすさを体感した「ラオ」が、自分が見聞きしたものを信じ行動する選択を取る構図に奥深さが溢れています。ラオの言葉を聞いた「アレ」将軍が手助けに入るなど、そういった考えが伝播していくのも見ていて気持ちよかったですね。デマや陰謀論などが簡単に拡散出来てしまう現実の世の中にも刺さる描写であり、個人的にも大いに頷かされました。

 あとはやはりCGアニメーションのクオリティにも目を見張るものがありました。2022年公開の『ドラゴンボール超 スーパーヒーロー』と同じように、フルCGながら二次元のイラストをそのまま落とし込んだかのような質感は見事の一言。元々の鳥山氏のイラストが立体映えする点も相まって、さながら原作絵にそのまま色が付いて動き出したかのような自然さがありました。劇中に登場する戦車や飛行船の丸っこいデザインも縦横無尽に動くことで実写とアニメの絶妙な中間アクションが繰り広げられていたかと思います。ストーリーのシンプルさもさることながら、アクションシーンのドンパチとした爽快感を思う存分味わわせてくれて大満足の1作です。

 

 

劇場版シティーハンター 天使の涙(エンジェルダスト)

 北条司氏原作の『CITY HUNTER(シティーハンター)』の劇場アニメ最新作。前作『新宿プライベートアイズ』から約4年ぶりの公開となり、往年のテレビアニメ版と同じキャストのシティーハンターの世界観には大いに楽しませてもらいました。その一方で原作漫画の要素をふんだんに盛り込んだことにより、こちらの予想していた内容とは大きく異なる意外性が面白かった作品でもあります。

 さてその意外性について一言で表すならば、「思った以上にシリアスで暗めだった」といった感じでしょうか。前作の美女を護衛して悪者をやっつける痛快無比なアクション要素は鳴りを潜めており、代わりに裏家業の人間に待ち受ける非業の宿命や主人公・獠の過去や因縁といったものにフォーカスしていました。無論カッコいいアクションはキッチリと存在しているのですが、爽快感という点では本作はあまり得られませんでしたね。言うなればシティーハンターのハードボイルドな側面が色濃く出ていた映画だった感覚です。

 そんな本作でまず印象に残っているがゲストキャラ。依頼人である「アンジー」に敵キャラ「ピラルク」と「エスパーダ」の2人組は、映画を観る前と観た後では印象がガラリと変わる不思議なキャラクターとなっていました。最初こそ美女のアンジーをつけ狙う悪党2人だと思っていたのですが、3人の昔なじみという関係性やアンジーが獠に敵対心を抱いている理由などが明かされることでかえって趣深い仕上がりとなっていましたね。加えて前者は獠や香たちと楽しく過ごしたり、後者は男2人で仲良くカップ麺を食べたりといった描写のおかげで徐々に親しみが持てるようになっていました。

 それ故にこの3人が全員亡くなるという結末にはショックを受けてしまいました。ピラルクーたちはアンジーを裏切り者として処刑しようとするものの、同僚としての情を隠しきれていないためにそれぞれアンジーを想って事切れるシーンに胸打たれます。そのうえアンジーがタイトルにもあるエンジェルダストを無理やり打たれて暴走、獠に引導を渡されるので喪失感も半端なかったです。裏世界の人間が日常の喜びや仲間との友情を育んだ後に、容赦なく死んでいく展開はあまりにも辛かったです。胸が張り裂けそうになりますが、だからこそアンジーたちはただのゲストキャラに留まらない魅力的な存在なりえたのでしょう。

 そんな3人を死に追いやった大ボス「海原神(かいばら・しん)」の存在も見逃せません。獠を凄腕の戦士に育て上げた恩人にして原作のラスボスという情報は以前から聞いていましたが、予想していた以上に狂気を感じさせるキャラクターに仕上がっていました。劇中ではアンジーたちの育ての親として語られるのがメインで終盤になってようやく登場したのですが、その際のアンジーにエンジェルダストを打ち込む展開には唖然。そのうえで死んだ彼女の墓に花を添えようとしたり、憤る獠に対し「殺したのはお前じゃないか」と言い放つなど行動や言動の数々に困惑させられます。獠やアンジーのような「自分の子どもたち」への愛情は感じられるものの、彼女らへの応え方が常軌を逸しているのが怖いです。なるほど獠にとって避けられない敵としては十分、とその恐ろしさを体感させられました。

 このようにとにかくシリアスで中盤は息を飲みっぱなしの本作でしたが、一方で前半のギャグパートもいつも通りだったので安心感もありました。(ギャグが少々冗長に感じられたのが難点でしたが)また今回はお馴染みキャッツアイや『ルパン三世』など多数のゲストキャラが登場しており、エンドクレジットでルパンと次元と『ガンダムUC』のバナージ・リンクスの名前が並ぶシーンで思わず吹き出してしまいましたね。ともあれ予想していた爽快感はなかったものの、その分原作で存在しているのであろう硬派なシティーハンターが見られたのは良かったです。エンディングで「The Final Chapter Begins.」というタイトルがラストに追加されていましたし、続編にも期待出来ます。神谷明さんたちキャストの皆さんが元気の内に、海原との決着をつけてほしいところです。

 

 

ガールズ&パンツァー 最終章 第4話

 言わずと知れた「ガルパン」こと『ガールズ&パンツァー』のOVA劇場公開の4話目。2021年に3話が公開されたので2年ぶりとなるわけですが、こちらがずっと待ちわびていた緊迫の展開を見事に描いてくれました。大洗学園の司令塔であるあんこうチームの初戦敗退、そんな危機的状況で「残された面々はどう立ち向かうのか」そして「世代の活躍」を話のキモにして盛り上げてくれたという印象です。

 その中でもウサギさんチームの梓が隊長代理として最も鮮烈な活躍をしてくれたと言えます。以前からみほに次ぐリーダーシップと判断力を発揮していましたが、今回それが本格的に描かれたのが何といっても嬉しかったですね。終盤まで他チームの先導に立っていたこともあり、見たかったものを思う存分見ることが出来ました。(その一方で桃ちゃんの活躍がなかったのは少々残念でしたが)一方でみほほどの安定感はないこともハッキリ示されており、終始ギリギリの戦いを強いられていたのも特徴的。敵味方が次々と脱落していくので、本当にハラハラさせられました。

 そんな大洗VS継続高校の対決は上述の通り大洗が必死に食らいつく様子が大きなポイント。ダム穴を掘って逃走を図るなど大胆な作戦が展開されるものの、最後の最後まで気が抜けない激戦が繰り広げられていました。何より最大の見どころとなっているのがゲレンデの坂を利用した大スノーチェイスでしょう。雪山から一転して坂に急降下しつつ、ハイスピードの砲撃戦に持ち込む様子は圧巻の一言です。普段の戦車戦とは一味違うテンポの速さとグリングリン動く画面には酔いそうになりましたね。(実際映画館を出た後しばらくぐったりしてしまったり)なるほど2年かかるのも納得の迫力の戦闘シーンだったと思います。

 そして対戦相手の継続の面々も個性的。上述のあんこうチームを破った狙撃砲手の「ヨウコ」やアコーディオンを奏でるリーゼントの「ユリ」など、ここにきてさらに鮮烈な印象を残してくれていました。演奏など独特のノリはそのままに、試合中は決して油断ならない敵として描かれていたのもポイント。ミカたちが初登場した際に抱いた「得体のしれない実力者」としてのイメージが今回色濃く出ていたように感じました。あとは試合後のサウナのシーンや長年の謎だったプラウダのカーベーたん(KV-1)強奪疑惑の真実などにクスっときたり……

 最後に黒森峰と聖グロリアーナの試合が描かれましたが、こちらは聖グロ側に愛里寿が参戦しているという特大のサプライズにやられました。エリカが予想以上に奮闘していたので黒森峰の勝利かと思われた矢先、愛里寿の一撃によって敗北する展開も相まって衝撃度が高かったです。(とはいえ態度が柔らかくなったエリカが小梅ちゃんと協力している様子はここすきポイント)こうして冬季無限軌道杯決勝は大洗VS聖グロというマッチングになりましたが、練習試合とはいえ大洗を二度も下した聖グロが最後に立ちはだかるのはある意味で当然と言えるのかもしれません。恐らく例によってまた2年後公開になりそうですが、第5話も楽しみに待っていたいと思います。

 

 

 上述の通り2024年はいきなり波乱の年を迎えてしまったという印象。テレビをつけてニュースを点けるたびに飛び込んでくる悲しいニュースの連続に、見ていて胸が痛んで仕方なくなります。

 そんな状況でただのブログの書き手に過ぎないメタレドが出来ることは、少しでも自分の「楽しい」を伝えることだけなのかもしれません。自分に出来ることを精一杯やり遂げ、読者の方々に少しでも元気になってもらいたいですね。改めまして、新年も当ブログをよろしくお願いします。

 

 

 ではまた、次の機会に。

 

*1:一応原作の漫画には「人間の愚かな行動と天変地異が重なった結果」と説明されている。