新・メタレドの楽しんだもん勝ち!

様々な作品について語ったり語らなかったりするサイト

デュエル・マスターズ WIN 決闘学園編(デュエル・ウォーズ) 第46話「乱心!ウガタの夢」感想

張りぼての英雄気取り

杉田さんがまた喋るロボットの役をやってる……

.

.

.

.

.

.

.

.

.

.

  • シュールで滑稽なヒーロー

 今回のデュエマWINは、いきなり現れた「ヒーローウガタ」に全てを持っていかれたような内容となっていました。前回ラストの時点で大概でしたが、普段のウガタとはまるで異なるビジュアルとノリには結構唖然とさせられます。高身長のイケメンと化した他作画に関してもウィンたちと微妙に違うツヤになっていますし、気取ったようなキャラもまるで別物。何よりマイハマが闇に包まれている危機的状況で「デュエル・マスター」を名乗ってヒーローに興じている様子は、場違いな雰囲気バリバリでとにかくシュールでした。

 他にもレトロな未来感溢れる秘密基地などもアレでしたが、個人的に最も吹き出してしまったのはウガタンロボ。突然謎に気合の入った発進シーンで登場してウィンたちの前に立ち塞がる展開に笑いが止まらなかったです。(しかもウガタンロボの声が本作のナレーションにして言葉を話すロボットを演じるのに定評がある杉田智和さんという)前回までカイザがボルシャックを失って悲しみに暮れていたのもあって、ウガタの空気を読まないヒーローごっことの温度差に風邪を引きそうになります。

 そして全体を通して、そんなウガタの独りよがりなノリに痛々しさを覚えずにはいられなかったです。中でもカレンを拉致して「守ってやる」とのたまうなど、彼女をトロフィーのように扱うくだりは見ていてかなりキツかったですね。この辺りの周囲に自分のことを認めてもらいたい、そのために邪魔者は切り捨てるといった矛盾はまさに彼のコンプレックスそのものであることがわかります。COMPLEXにいいように利用され上辺だけのヒーローに成り下がってしまったウガタに笑いと憐れみの両方を抱いてしまう、結構複雑な感情にさせられる回でしたね。

 

 

  • 愛憎渦巻く「主人公」への渇望

 まさに自己顕示欲の権化となって周囲を翻弄していたウガタですが、その様子から彼ふが密かに抱いているウィンへの嫉妬と羨望が見え隠れしている描写が注目ポイントとなっていました。ウィンを邪神の手先=悪として排除しようとしている反面、彼への憧れからヒーローを演じていることが隠しきれていませんでした邪神くんが邪悪なので滅ぼさないといけないはそれはそう。極めつけとしてウィンの口癖である「俺のハート、ウィンウィンしてきたぜ!!」を使っている辺り、ウガタにとってウィンがヒーローであることは一目瞭然です。

 デュエマパートでのヒーローウガタの使用デッキから彼の願望が見える点も興味深いです。40話のマズキ戦と同じように《DARK MATERIAL COMPLEX》を切り札にしているものの、他のカードは《超英雄タイム》だったり《燃える革命 ドギラゴン》などCOMPLEXとシナジーの薄いカードが目立ちます。(《学校男》とか相性のいいカードも使っていますが)さらにはCOMPLEXから《ボルメテウス・サファイア・ドラゴン》を踏み倒したほか、予告では《龍覇 グレンモルト》や《ジョリー・ザ・ジョニー》も確認出来、デュエマの歴代主人公が使用・またはイメージしたカードばかり使っていることに気付いた時は衝撃を受けました。*1

 普段の安定性を求めるウガタからは考えられない、ロマンに極振りしたこのデッキはまさに彼の「主人公になりたい」という欲求そのものであることが察せられますね。デッキに関してはここまで振り切ってくると一周回って好きになってくる一方で、ウガタに対する憐憫は増すばかりです。ウィンを妬みながらも彼を含めた歴代主人公を目指し、その愛憎渦巻く感情をCOMPLEXに利用されたウガタ。彼の痛々しさを早く何とかしてあげてほしいです。

 

 

  • 災厄の匣は開かれた 今、全てが暗黒に沈む時

DARK MATERIAL(クラヤミノコンゲン) COMPLEX(コンプレックス) 闇文明 (1)
クリーチャー:パンドラボックス 
パワー25000
▪️ワールド・ブレイカー(このクリーチャーは相手のシールドをすべてブレイクする)
▪️このクリーチャーはタップして出る。
▪️他のクリーチャーが離れた時、または自分のターンのはじめに、自分の山札の上から1枚目を表向きにして、このクリーチャーの下に置いてもよい。
▪️このクリーチャーの下のカードが7枚以下なら、このクリーチャーは離れず、アンタップしない。
▪️このクリーチャーの下に8枚目のカードが置かれた時、このクリーチャーをアンタップする。
▪️このクリーチャーが攻撃する時、このクリーチャーの下にあるカードを1枚、墓地に置いてもよい。そのカードがクリーチャーなら、自分の墓地から出す。

 ヒーローウガタが自身の切り札として繰り出したクリーチャー。マイハマ学園で祀られている勝利の女神ウィナの正体にして、ウガタやカイザを誑かし利用した本作の黒幕です。種族は何と「パンドラボックス」で、マイナー種族の1つがラスボスを務めるという意外なチョイスに驚かされます。しかし可愛らしさと不気味さを併せ持った壺のようなビジュアル、そしてデュエマのカードを呑み込み力とする意味深なイラストは災いを意味する「パンドラの箱」に相応しいと言えるでしょう。*2

 しかしその壺は仮の姿。後述の条件を満たすことで封印が解け、内部に潜むCOMPLEX本体が姿を見せます。その見た目は歯車や鉄柱、その他様々な鉄くずが組み合わさったかのようないわば歯車の怪物といったところ。女神のイメージからは大きくかけ離れており、圧倒的な威圧感が感じられますね。(また変化したシークレット版のイラストにはチュウ太郎(ユニコーンネズミ)らしきネズミが歯車の中心にいますが……?

 カードとしてまず目を引くのはその基礎スペック。コスト1という最軽量ながら、パワー25000のワールド・ブレイカを誇ります。しかしタップ状態で場に出るほか、条件を満たさなければアンタップされないという《天斬の悪魔龍 ジュランデス》に近い性質を持っているので、即座にこの高パワーを活かすことは出来なくなっています。代わりに条件を達成していない間は決して場を離れない完全耐性を得ているので、いきなり出してもすぐ除去されるといった心配がないのが優秀ですね。

 そのアンタップの条件とはこのクリーチャーの下のカードが8枚重なっていること。非進化クリーチャーでありながら下にカードを重ねる特殊な性質を持っており、他クリーチャーの破壊と自ターン開始時にデッキトップのカードを下に置き、着実にカウントを進める方式になっています。そして8枚目が重なった時にアンタップし、攻撃時に下のカードを墓地に送り、それがクリーチャーであれば場に出すアタックトリガーを発動します。下のカードしか出せないものの踏み倒せるクリーチャーに制限はないので、劇中のように《ボルメテウス・サファイア・ドラゴン》などの大型クリーチャーも繰り出せるド派手な展開を狙えるでしょう。

 以上の性質から離れない置き物として用意しつつ、状況に応じてサポートからフィニッシャーまで幅広く使える1枚として評価出来ます。何といっても7枚以下の状態での耐性を利用することで、任意のタイミングで相手に一切除去されない形で攻撃、展開出来るのが便利かつ強力な使い方となっています。仮に除去されてもコストの低さを活かして《シラズ死鬼の封》などで容易にリアニメイト出来る点も見逃せません。これらの特性故、闇文明が入ったデッキならとりあえず投入するだけでもある程度活躍してくれるのが最大の強みと言えますね。

それ以上に他カードとの組み合わせで真価を発揮するようになっており、《学校男》のような味方を巻き込む除去のデメリットを解消したり、下のカードを《CRYMAX ジャオウガ》の置換効果の生贄にしたりと意外な活用法も行えます。また《アクア鳥人 ロココ》と《夢幻なる零龍》のコンボであっという間に下のカードを集めて起動するなど、複雑な能力ながらアイデア次第で如何様に変化する万能札となりえるカードです。ラスボスとしての豪快さに加えて器用な一面も内包した、異質故に独特な切り札として今後も使われていくことでしょう。

 

 

 今回は上述の通りヒーローウガタの描写にエグさを覚える回でもありましたが、ネガティブな要素だけでは終わらず彼を助けようとするウィンとその仲間たちの熱さが印象に残りました。中でも無気力ゾンビになってもウガタに呼び掛けたりCOMPLEXの居場所を教えるマズキ&ケンドラ、そしてウィンたちの大事な仲間を助けようとする想いを汲んで先に行かせるカイザなど……それぞれの胸熱なファインプレーの数々に、中々の感銘を受けましたね。またOPのラストシーン、ウィンとカイザが向き合うビジュアルでカイザがヒーローウガタに差し替えられていた点も、最終決戦として盛り上がる変化だったと思います。

 あとはウガタンロボ相手に繰り広げられたリアルファイトがちょっとした笑いどころになっていたのも個人的な注目ポイント。ファルゴがカイザとイッサに無茶振りされて謎の流星群的必殺技を放つだけでも面白いのに、無事だったリッパー教授が普通にロボと戦っている絵面がサラッと挿入された時の不条理感は計り知れなかったです。お前らそこまで戦えるのかい!?とツッコみつつ、ヒーローウガタのシュールさと合わせて本作らしいギャグ描写になっていましたね。(そしてモチモチ言っている《ガ:ナテハ》ちゃんはCGでも可愛いねぇ

 

 

 というわけで次回はVSヒーローウガタ戦後編。ウガタの体を闇で蝕み、さらにはウィンの心の闇すらも利用せんと企むCOMPLEXの本気がいよいよ明らかになるようです。さらにそのCOMPLEXがウィンに対してある「真実」を語るとのですが、それは果たして何なのか……?精神的面でもデュエマパートの盤面でも追い詰められていくウィンの逆転の目が訪れるのでしょうか。最終決戦の行方は如何に!?

 

 

 ではまた、次の機会に。

 

*1:これらの要素は「ウィン編の世界観においてジョー編までの物語はフィクションとして扱われている」という設定があるからこそ成り立つ展開と言えるだろう。

*2:余談だがギリシャ神話におけるパンドラの箱はどちらかというと壺の形をしていたそうな