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ヤング ブラック・ジャック 第4~6話 「ベトナムにてその1~3」 感想

ふたりの白い医者
藪さんマジヒロイン






















 『ヤング ブラックジャック』の4話から6話は一つの話になっており、せっかくなんで今回は一つにまとめて感想を書いてみました。

・藪さん訪ねて三千里
 今回は冒頭から間がベトナムにいるということで何事かと思いましたが、どうやらベトナムの病院で助っ人に向かった藪さんが病院が襲撃されたことで行方不明になったらしく、彼を探すために2話で教団の長になったレイモンドのコネでベトナムに飛んだそうです。わざわざ外国に行ってまで安否を心配する辺り、間は藪さん好きすぎでしょう。2話の時と言い完全に藪さんがヒロインですね。
 米軍の軍人ボブ、戦場カメラマンの高柳、案内役のファンといったメンバーと共に目的地に向かう途中、ベトナム兵の襲撃を受けて軍人の一人のスティーブが負傷。間はスティーブを救うために弾丸が飛び交う戦場のど真ん中で手術をするというこれまたツッコミどころ満載の手術シーンを入れてきた時はさすがと思いました。(原作ではこれ以上にカオスな手術シーンがあるから恐ろしい…)


・ヒロイン帰還
 さてその後ベトナム兵に捕まって拷問されるのですが、それ以降間たちがずっと半裸の状態で話が進むのは相変わらずでしたね。脱走した後も藪さんがいた村の住人に救われた後も半裸のままだった辺りこの作品の筋肉を見せるこだわりを感じます。
 それはそうと無事再開した間と藪さんがまるで恋人か親友のような雰囲気に包まれていたのにはもう笑いました。藪さんどんだけヒロインしてるんだよ!


・謎の軍医
 一方間が手術したスティーブは傷口に蛆虫が湧いていたのですが、その蛆虫の唾液によって傷口が消毒された云々(マゴットセラピーというらしい)でどうやら少し良くなっているものの予断を許さない状況。そこでボブが軍に救助を求めたところヘリから軍医が落下してやってくるというこれまたすごい展開が来ました。
 さてそんな衝撃的な登場を果たしたイケメン軍医はスティーブを手術しようとしますが間が「スティーブは俺の患者だ」と言い張ってきます。そういうことは今張り合うなよ!そんな医学生である間を青二才扱いする軍医ですが、手術を見届けに来た間に色んな技術を丁寧に説明してあげる辺りいい人ですね。何気に血への拒絶を克服した藪さんに加え、この作品で間以外の人物が主導となって手術する場面は初めてだと思います。


・狂気の世界
 軍医によって無事事なきを得たかと思われたスティーブでしたが、翌日いなくなっていました。どうやらまだ自分は戦場にいると思っているらしく、発見されたときの姿はフラフラとしていてまるで生気を感じられませんでした。それでもボブの必死の呼びかけで正気が戻ったかと思ったら、運悪く地雷を踏んでしまいそのまま肉塊に……(これは間にとってもかつての自分たちを思い起こすレベルのトラウマになりそうだ…)
 最後の仲間が死んで完全に心が荒んでしまったボブは村で発見された青年兵を手術することに断固反対。(一方で誰であろうと救おうとする軍医と藪さんがカッコイイ)青年の手術が始まったと見るや米軍に村は敵の隠れ家だったと嘘をついて村を爆撃する指示を出すという暴挙に出ます。「部下を無事送り届けるのが役目」と言っていた彼がここまで狂ってしまう辺り戦争は恐ろしい……。
 本作の背景にもあるベトナム戦争ですが、現実の情報を調べてみる限りでは「裸で逃げ惑う子どもたち」や「地雷の跡」などの写真など、本当に凄惨なものだったのだと思います。どっちが悪いかといった話は置いといて、やっぱりどんなことがあっても戦争はするべきではないと思いますね。


・最強の言葉「それがどうした」
 で、その爆撃機が来ることを村人に伝える中、当然青年を手術している軍医たちにも連絡が行き届きましたが、彼らは青年を救うためにギリギリまで手術することを伝えます。この場面は3人とも患者を絶対に救うという気概が感じられて本当にかっこよかったです。しかタイムリミットが迫る中軍医だけでは手は足りないという状況で間が一緒に手術をすると言い出し、

 軍医「君は医師免許を持ってないだろう?」

 間「そ れ が ど う し た !」

 色々と言われ続けていた「学生なのに手術していいのか」という問題をまさかの「それがどうした」で一蹴する間。結構カッコイイ場面のはずなのに笑えて来るのは何故だwwwww
 そのまま手術が開始され、間と軍医の双方の技術のすさまじさはそれに魅せられた藪さんに「医学界をしょって立つ未来の名医たち」とまで言われます。でもその手術に付いて行けてる藪さんも十分すごい気がしなくもない。
 そしてあと少しというところで爆撃が開始され、間に合わなかったかと思いきや、患者を運びながら炎の中を走る3人が確認され無事何とかなりました。(ここもカッコイイシーンのはずなのになぜか笑えてくるww)


・軍医の正体
 その後事なきを得たのか空港で藪さんに見送ってもらう間。(ボブとかあの後どうなったんだろうか)何だかんだで一緒に無茶な手術をした軍医のことについて話していましたが2人とも名前は聞いていなかった模様。
 結局あの軍医は何者かと思っていた矢先、その後の場面で軍医が持っていたロケットペンダントに入っていた写真の女性と老人をよく見てみるとどこかで見たことあるような。そして…………

 衛生兵「この手術はあなたにしかできません。ドクター……ドクター・キリコ!」

 あの軍医の正体はまさかのドクター・キリコ!!これには度肝を抜かされました。あの不気味で陰鬱なイメージのキリコの若かりし頃がこんなまっすぐな青年だったことには驚きと同時にこれからあの「死神」に変貌してしまうきっかけになった「地獄」を味わうであろうことへの悲しさも抱きました。一応原作でも「救える患者は救う」というスタンスを貫いていたのでその正の部分が全面に押し出されていたのが過去の軍医だったんだなぁ。しかし間共々これからのことを考えると藪さんが言っていた「未来の名医たち」の言葉がすごく虚しく思えてきてしまいます……。


 というわけで3話に渡って描かれたベトナム編はキリコの衝撃の過去もそうですが、そんな彼すらも狂わせてしまう戦争の恐ろしさを感じましたね。ボブが「米軍は卑劣な真似はしない」と信じて言い放つのも「両者ともに自分が正義だと信じて疑わない状況を」を作る戦争の側面を描いているようにも見えました。
 一方で間やキリコ、藪さんが戦争などお構いなしに誰であろうと患者ならば救うという志を貫いていたのは素晴らしかったですね。間の愚直さと言い、周りに飲まれず誰かを助けようとする主人公はやっぱりかっこいいものです。


 さて次回は黒人差別の問題が話の主軸の模様。というか予告で何かを投げている間を見ているとゲラの件を思い出して嫌な予感しかしない…………。


 ではまた、次の機会に。