今日も今日とてベイブレードXの感想シリーズ。毎週休みなく放送するベイブレードアニメの隠れた評価ポイントに感心しつつ、追いかけるのに一苦労しています。しかし裏を返せばまだまだ色んなエピソードを見られるということを喜びたいところです。放送分の方はだいぶ進んでしまっていますが、焦らず自分のペースで追いついていきたいと考えています。
↑前回までの感想についてはこちらの記事を参照。
今回取り上げるのは17話から20話まで。バーンが本格的に動き出し、物語が意外な形に加速していくのが特徴となっています。特にあのキャラがまさかの成長を遂げるとは……そんな驚きや感動も込めて感想を書いていきたいと思います。
第17話「ベイタイムシフト」
何だこのホラー回は……!?タクミたちを蹴散らすバーンを見ていたと思ったら、彼が配り出したベイによってさらに情緒を乱されることに。ユグドラシルが無料配布している「フェニックスフェザー」の登場で子どもたちでも激しいバトルが可能になり、プロとアマチュアの差が縮まっていく危機感が劇中で募り始めていたと思います。特にバード視点の映像がショッキングで、世界がドンドンフェニックスフェザーの“赤”に侵食されていくかのような演出が何ともおどろおどろしかったです。やっと帰ってきた先でそのベイが届いていたラストも、ホラー作品の文法に則っていたと言えます。(それはそれとしてエクスたちはバードの電話に出てやれよ……)
問題はこのフェニックスフェザーを街中に配るバーンの目的ですね。全てのブレーダーをこのベイのスピードに到達させようとするというのはまぁ何となくわかりますが、いささか強引なようにも見えます。強いベイを使うだけで当人も強くなれるかはまた別の話で、その結果プロのトグロに勝利した子どもたちが思い上がり始める様子も相まって奇妙な心境にさせられました。アマチュアの力が底上げされプロの地位が脅かされるこの混乱を引き起こしてまで、バーンは何を狙っているのでしょうかね。
第18話「プライド」
というわけで18話はバーンの目論見とブレーダーの誇りがぶつかり合った内容に。驚くべきことに10話でエクス1人に惨敗したチーム・ファランクスのタクミたちがフェニックスフェザーを使い始めてからは連戦連勝、と表向きは輝かしい結果とその影が見え隠れてしていました。劇中のタクミも勝ち上がってきているのに表情は曇っていましたし、勝利と引き換えに自信やこれまでの自分の否定が為されている矛盾を抱えていることが伺えます。
そんな気持ちが晴れないタクミをエクスやタイショーが突き動かす展開には胸打たれましたね。敢えてドロー(引き分け)を繰り返すエクスの謎の行動、そしてタクミを見てきたタイショーの叱咤激励もあって彼が本来のストーンモンブランを使うことを宣言した瞬間には思わずテンションが上がりました。フェニックスフェザーの力で勝たされている状態ではなく、あくまで10年以上努力してきたタクミ自身の積み重ねで戦う構図は否が応でも応援したくなります。
試合自体はタクミの敗北だったものの、これまでとは一転して非常に清々しい顔つきんになった彼の姿もあって悲壮感は全くありませんでした。そしてあの嫌味なラーメンチェーンのスポンサーともすっぱり縁を切ってくれたので見ているこちらの気持ちもスッキリ。勝つことやスポンサーの機嫌を取ることよりも、ブレーダーとしての誇りを持って再び歩み出すタクミの成長ぶりに不覚にも感動させられましたね。
第19話「DATTO」
次なる回はズーガニックと共に謎の鬼ごっこ企画「DATTO(脱兎)」に参加。逃げるアマチュアを捕まえバトルを繰り広げ、制限時間内に生き残ったアマチュアが勝利するベイブレード版『逃走中』ともいうべきルールは興味深かったです。しかしペルソナ側は運動不足のエクスがサボるわ、バードがアマチュアと勘違いされて参加させられるわと散々すぎて変な笑いが出てしまいました。
そうしてカオスな様相を呈してきたDATTOでバードがまさかの生き残りを果たす展開に仰天。逃げ回れる運動神経だけでなく、エクスを言葉巧みに誘導してキングとぶつける口八丁には舌を巻きました。正直バトルではバードはエクスたちに勝てないであろうと思っていたので、そもそもバトルすらさせずに終わらせるというのはある意味で見事というほかありません。まぁこれでいいのかバードよ?という気持ちはありますが、とりあえずはあの手この手で勝ち残った彼に賞賛を送りたいところです。
一方今回のDATTOでフェニックスフェザーを持ったアマチュアを叩きのめすという、キングたちの目論見がわかったのも注目ポイント。この辺りは強いベイを貰っただけで思い上がる相手、そしてそもそもの原因であるバーンに牽制をかけるという意味合いも込められているのでしょう。試合に勝つために鍛えた者として負けるわけにはいかないという、前回とはまた違った形でのプロとしての矜持が描かれていました。
第20話「寿司のメモリー」
最後はまさかのギャグ回。倒れたタイショーの代わりに駒刃寿司の新メニューを考えるという課題を与えられたエクスたちですが、「ベイバトルで負けた方が、残った1人が握った寿司を食べる」という謎ルールで首を傾げることになりました。エクスの創作寿司の珍妙さもあって、実質罰ゲームみたいになっていたのが面白かったですね。(マルチが「あの寿司は食べたくない!」とばかりに必死でバトルしていたのがここすきポイント)
さらにバードの寿司が職人顔負けという、これまた意外過ぎる才能の開花にやられてしまいました。画風の変化もあってさながら別漫画の風格を漂わせていたのも腹筋に悪かったです。前回に続いて、ベイバトル以外の才能に溢れているバードのことを喜ぶべきか否かで笑いながらも何とも言えない気分にさせられます。
またエクスが寿司のことでクロムとの思い出を振り返るシーンが印象的。スポンサーが作った髪飾りを付けてあげるくだりといい、寿司をあーんさせてあげるくだりといいエクスの無自覚たらしが発揮されているのがわかりやすかったですね。14話の回想と同じく、このエクスに振り回されながらもまんざらではないクロムの態度に胸が締め付けられました。エクスに惹かれて一緒に戦ってきたものの彼の方から離れてしまった事実に、今クロムは何を思うのか……?2人の再会がますます楽しみになってくるところです。
というわけで20話までの感想でした。全体的にほっこりさせられるギャグが多めで、相変わらずベイでは全戦全敗のバードがそれ以外で優れた才能を発揮していく様子に複雑な心境になりながらもクスっときてしまいました。「色んな分野で優れているけどベイでだけ勝てないバード」と「ベイでは常勝無敗だけどそれ以外はダメダメなエクス」という対比が構築されていた点も妙に興味深いです。
そして暗躍していたバーンが本格的に動き出したことで、アマチュアがプロに襲い掛かる状況が全体を通して描かれていました。強いベイを手に入れるだけで勝てるのか?ならプロとアマチュアの垣根は意味があるのか?など、ホビー作品の根底を覆しかねない危険な展開にハラハラさせられます。劇中では技術力などもプロには必要だと描写されていましたが、その考えがどこまで通用するのか見ものですね。
何よりその過程でタクミの物語が見られたのが面白かったです。1話では単なるかませの悪役という印象しかなかった彼が、ここまで味わい深い存在になるとは思ってもみませんでした。個人的に18話のタクミの変化はここまでのエピソードの中でも屈指のベストバウトだと思います。他人のベイ破壊行為は過激すぎたものの、それ相応の努力や苦悩を抱えてきた若者が今後どうなっていくのか、注目が止まりません。
ではまた、次の機会に。