急げ 君の元へ
時が流れ、成長と変化を迎えても、変わらない友情(モノ)がきっとある
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- ヒトもぼくたちホビーの仲間!
某サンボマスターの曲みたいなサブタイで始まったぷにるアニメ2期最終回。冒頭からジュレの精神世界にて、ぷにるが消滅しつつある危機的状況というとんでもないスタートとなりました。ジュレがぷにるを取り込んでいるシーンもちろんのこと、巨大なジュレが支配する世界の絵面のインパクトたるや、かつてない恐怖をもたらしていたと言えます。何よりパーフェクトにこだわるあまり、とうとう人間という枠を捨ててぷにるの存在に執着し出すジュレの暴走ぶりに鳥肌が立ちましたね。
この一連のシーンの注目ポイントはやはりぷにるのホビー観と疑問に対する理解と結論。ホビーが持ち主の成長に合わせて別のものに取って代わられ、最後には捨てられる存在であることを理解する瞬間は地味ながらもショッキングでした。ホビーは所詮代用品だという、ジュレの語る言葉の意味が何となく伝わってしまったのがわかります。初登場から驚異的な自己肯定感を見せていたぷにるですが、この時ばかりは受け止めきれないものがあったでしょう。
しかしジュレ視点の美化されたコタローにツッコみ、彼女がコタローでお人形遊びをしている事実を前にしてからは目を見張るものがありました。「人間がホビーで遊ぶように、ホビーだって人間で遊ぶことがある!」という結論はぷにるにとって青天の霹靂だったと思います。(人によってはとんでもねえ発想に聞こえるでしょうが)この考えはぷにるがどこまでもホビーと人間を対等に見ている、自己肯定感の高さの表れとも取れるので個人的にはかなり好感が持てますね。ジュレのお人形遊びを否定していない点も然り、ぷにるにとって「ホビーと人間は友達になれるか?」という疑問の答えとしては納得のいく話でした。
- 積み重ねてきた絆の証(という名のスライムカス)
上述の答えを得て満足いったものの、ジュレによって完全にぷにるが消されるシーンはショックが大きかったです。アニメではモノローグが中断され潰れる瞬間がかなり生々しく描かれており、その光景に思わずギョッとしてしまったほど。(ベチャッって音がさながら人間の落下死を想起させそうなものになっていて、少々血の気が引きましたね)直接的な表現ではなかったものの、ぷにるはこの時点でいったん死亡してしまった……その事実が否が応でも突き付けられてくるような描写でした。
そうして完全にぷにると一体化したジュレ、通称「ジュレぷにる」がコタローを魅了するかと思いきや、長年一緒にいるコタローには彼女がぷにるではないとわかったのが見事。本物のぷにるを探しに行くくだりも含めて、彼が何よりもぷにるを優先している光景にどこか涙ぐんでしまいました。普段から慕っているきらら先輩を振り切る様子や、必死にスライムを作る場面などは切なくも真剣さが伝わってくる地味ながら名シーンだったと思います。
そこからのぷにる復活をシリアスからギャグ多めで魅せてきたのがまた最高でしたね。コタローの体にへばりついたぷにるのカスが集まって何とか復活する展開コタローの体はぷにるの液まみれってこと!?は、不潔さなどのコミカル要素がありつつもコタローとぷにるの絆の積み重ねが成し遂げたモノなのがどこかエモかったです。7年以上共に過ごしてきた証は、ホビーと人間が友達になれることの何よりの証左に繋がっていたと感じられる素敵なシーンでした。
- 完璧を求めた、発展途上の思春期
そして今回の事件を起こしたジュレについても注目していきたいところ。自分の語るパーフェクトに固執したり、ぷにるの考えに激昂したりと例によって忙しい変化で物語を盛り上げていたのが個人的にグッドでした。そのうえで上述のコタローに見破られ、自分の思い通りにならない現状に絶句するシーンは最高に見ものでしたね。理想のコタローを現実にあてはめていただけでなく、理想の自分を見ているだけだったと気付く瞬間はジュレの滑稽さの最大瞬間風速を叩きつけていたと言えます。ロイミュード003「その顔が見たかった……自身の矛盾に絶望するその顔がヴェハハハハハハ!」
個人的にはコタローが戻ってきてからの一連の流れにおいて、ジュレが徹底して蚊帳の外だったのも印象に残っています。自分がパーフェクトだと周囲に知らしめたかったジュレにとって、腫れ物のように周りから孤立するのは何よりの仕打ちと言えるでしょう。(気にかける剛やんと止めるホネちゃんのシーンがさり気なく挿入されているのもここすきポイント)さらに現実のコタローを見て“幻滅”する姿が何とも鮮烈でした。ジュレにとっては酷な形でしたが、自分の抱える理想と現実のすり合わせが出来たという点では幸運だったかもしれません。
まぁともかく、ここまでのジュレの騒動もひと段落。ダイジェストながら反省した様子も映され、穏便に解決したのは何よりです。また今回のジュレの暴走に関して、真戸博士ときらら先輩が「思春期の恋なんてそんなもん」とばかりに片付けるのが素敵でしたね。まだ生まれたばかりで発展していく途中のジュレを想えば、この程度は若さゆえの過ちといったところ。俯瞰的に登場人物を見てくれている保護者ポジション2人が「失敗を重ねて学んでいく」と締めてくれたことで、彼女の物語はほっこりする形で終われたと考えます。
今回の感想を書くうえで忘れてはいけないのが最後の変身シーン。毎回ぷにるが様々な姿に変身するバンク映像が存在しますが、最後の最後にペンギンぷにるからいつものぷにるの姿に戻る特別版が挿入されて衝撃を受けました。*1何度も何度も変身バンクを流してきただけに、こうした変化球が加えられたことに驚きと感動を覚えます。何より自分の姿に悩んでいたぷにるが、コタローの言葉を受け元に戻る展開も合わさって余計にグッときますね。誰かの理想通りではなく、自分の望む姿になって仲直りするラストにピッタリの演出でしたね。
そして最終回の感想からそのまま簡単な総評をば。アニメ第1期の頃から高いクオリティで唸らせてきたぷにかわアニメですが、2期はさらに最高のアニメ化と言える完成度を魅せてきました。目玉の新キャラであるジュレの登場によって変化していく人間関係、ぷにるとコタローそれぞれがぶち当たる壁を超える瞬間と、原作漫画の頃から期待していた部分をさらに魅力的にして出力してきた印象です。
情緒も精神も成長途中の思春期が抱える問題、それらに連なるアイデンティティの確立という重く深い問題を扱っている本作。1期の頃から片鱗を見せていた「自分の“好き”が世間のイメージや風評によって抑えつけられる」「“自分らしさ”を周りの声につられて当てはめてしまう」といった要素は、今回の2期でより詳細かつ克明に描かれていたと思います。中でも22話は繊細なタッチの作画や声優さんの迫真の演技もあって、原作既読済みで展開をわかっていても胸が苦しくなったほどです。単なるラブコメでは終わらせない、原作者・まえだくん氏の掲げるテーマを余すことなく伝えていました。
そのうえでアニメならではのオリジナルシーンや改変が見事にマッチしていたのが素晴らしかったですね。この最終回だけでもぷにるが捨てられるホビーのイメージを見るアニオリシーンや、原作では焦るように声を荒げていたコタローが静かにぷにるがいないことを伝える細かな変化などが確認出来ます。これらは声と動きが付いたアニメだからこその手の加え方で、それでいて原作を破綻させていない点に感嘆を覚えました。原作漫画の味を十二分に理解し、行間を読み解いているからこその手腕と言えるでしょう。ここまで文句のないアニメ化を果たしてくれた本作のスタッフには、舌を巻きつつ感謝するばかりです。最高のアニメ化を見せてくれて、本当にありがとうございました!!
というわけでぷにるはかわいいスライムのアニメはこれにていったん終了。3期の予告などが無かったことから、しばらくは続編制作未定と見たほうが良さそうですね。続きを見られないのは寂しいですが、ここまで力の入ったアニメ化の後ですぐに続きは出来ないでしょう。あまり高望みはせず、されど悲観することもなく、気長にぷにるアニメの続きを待っていたいと思います。(バットトリックとか例の“神”とか、アニメで見たいキャラやエピソードはまだまだたくさんあるんですよね……)
また本作に続いてここからコロコロ作品のアニメ化作品が続々始まる点も見逃せません。同じ週刊コロコロ連載からは『炎の闘球女 ドッジ弾子』が、そして大本命・月刊コロコロコミックからは超人気作『運命の巻戻士』のアニメが待っているのが非常に楽しみです。中でも巻戻士はボンズフィルム×松本理恵監督という驚異の組み合わせから、相当気合いの入ったアニメ化になることが予想出来ます。(詳しいことは下のリンクで読める「2025年夏アニメ簡易感想 その6」をチェックしていただければ)これらのコロコロアニメから、ぷにる3期や他のコロコロ作品に繋がっていくことを、コロコロファンの1人として見守っていく所存です。
ではまた、次の機会に。
↓以下、過去の感想が書かれた記事一覧です。
*1:ちなみに原作者のまえだくん氏も、リアルタイム視聴中にこの変身バンクを見て衝撃を受けていた。
