サンタさん、
友達を見つけてください。
叶った思い 信じて ただし、私終わらないから!
.
.
.
.
.
.
.
.
.
.
- アイデンティティは他人ありきか、自分ありきか
二海を救出したところで、三田と大渋の再戦から始まったSANDA最終回。以前のバトルでも異様な強さと狂気を見せてきた大渋ですが、今回はさらに一歩上を行く狂いっぷりを発揮しこちらを驚かせてきました。自分の整形手術の痕を見られた屈辱を晴らすためとはいえ、鏡張りの部屋に居続けてメンタルを鍛える方法は軽くドン引きモノです。そのうえで自分を美しく魅せようとする戦い方で、生徒たちからの賞賛を受ける様子に妙なグロテスクさを感じ取りました。とことん自分が若く美しいと見られないと正気と保てない、敬老を許さない姿勢が大渋の悍ましさの原点なのでしょう。
対して三田は最初こそ苦戦していたものの、子どもへの真摯な態度やソリの使い方を学んで徐々に調子を取り戻していったのが印象的。ソリが高所の風を掴んででこそ真価を発揮するのは例によってサンタの伝承を乗っ取った解釈ですが、ここまでくると不思議な納得感が湧いてきますね。何よりサンタとしての自分を「ここにいる」と信じる描写が何とも素敵。子どもからの信頼を勝ち取るためにも自分自身のサンタクロースを真っ先に信じるべき、といった精神論は少年漫画らしくてスカッとします。
またこの三田の自分を信じる姿勢が、上述の大渋が褒められなければいけない精神と真っ向から相反しているのが興味深いですね。片や第三者から見られなければ自分を見出せず、片や自信をつけることで自然と周りの仲間を得てきた……どちらが精神的には強いのかは一目瞭然でしょう。勝敗では三田は負けてしまったかもしれませんが、“自分”を確立出来た点では間違いなく彼の勝利。最後の最後でアイデンティティの在り方という形で主人公の力を見せつけて、何だかんだスカッとしました。
- 包み込む“赤”ではない、冷たく優しい“青”だからこそ
とまぁ大渋を退けて二海も助かり、小野も見つかって万々歳。打ち上げのシーンの賑やかさにほっこりしたのも束の間、小野の死亡というまさかの展開に面食らうこととなりました。彼女の体の異常は度々描写されてきたものの、こんなにもあっさり息を引き取ってしまうのはあまりにも予想外。原因は理事長曰く「死に至る成長痛」とのことですが、子どもが一晩眠るだけでこんな事態にまでなってしまう劇中世界の恐ろしさを体感した気分です。
そんな小野を失った冬村の心情たるや、察するに余りあります。三田がサンタになることで相談に乗ろうとしても突っぱねてきましたが、それだけ大親友の死に心を痛めているのが伝わってきましたね。打ち上げ中に嫌いな自分を受け入れようとしたのも今となっては悲しい事ばかり。また小野も小野で、最期まで冬村への恋心を隠したままなのがこれやりきれないところです。自分にはないものを相手に求めて惹かれ合っていた2人の物語の幕引きとして、ここまで無情なモノがあるのかと絶句せずにはいられません。
それだけに早朝の青白い教室で、三田が冬村を受け止めるシーンは切なくも美しかったですね。子どもの願いを叶えてくれるサンタクロースではなく、同級生の三田一重だからこそ冬村の悲しみに応えてあげられたことに膝を打ちました。14歳同士だからこそ冬村は涙を流せたのでしょうし、三田の存在は決して無意味でないと言っているようで少しだけ胸が暖かくなってきます。(この辺りは前回の「子どもだからこそ二海とケンカして向き合えた」描写に通じるものがありますね)サンタが主役の本作ですが、あくまでメインは思春期の少年少女ならではの着地点に涙が零れて来るばかりです。
というわけでSANDAアニメの最終回は小野の退場といったショッキングな形で終了。大渋との決着など問題が多く残っていますが、原作漫画全16巻の内アニメ化された範囲は5巻までらしいので多少の中途半端は仕方ないでしょう。この辺りの問題は原作付きのアニメ化全般に言える宿命であり必ず起こる事象なので、個人的にはこのアニメの区切り方をマイナス点としては見ていませんのであしからず。
冬村を抱き留める三田で終わったのも驚きでしたが、本作の始まりが冬村の「小野を見つけて」という願いだったことを踏まえるとある意味で綺麗な着地とも言えますね。サンタクロースとして子どもの頼みを叶えた後で、14歳の少年としてサンタではどうにもならない心の傷を癒す話の流れも見事。見終わった直後こそ困惑するものの、時間が経てば経つほど納得のいく味わい深いラストだったことが読み取れました。
そして最終回の感想からそのまま簡単な総評をば。『BEASTARS』で有名な板垣巴留氏の漫画作品のアニメ化ということで期待していましたが、いざ第1話を視聴した時のインパクトは予想以上のものでした。
まず高身長の少女に胸を刺された少年がサンタクロースに変身し、彼女の願いを叶えるために奔走する絵面の衝撃に早くも惹かれた次第です。サンタの一族がとんでもない超人であるのも強烈で、一般的なサンタのイメージをぶっ飛んだ拡大解釈でさながらスーパーヒーローのように描いていたのが面白かったですね。最初こそ動揺してしまいますが、話が進むうちに「そういうものか」とノリを理解してからはニヤリとくる新能力ばかりを楽しんでいた記憶があります。
同時にサンタクロースが子どものヒーローのような存在である点も、意外性抜群ながら納得のいく設定となっていました。子どもの願いを叶えてこそのサンタクロースがどれだけ重要な存在か、世界観を踏まえてみると余計に強く伝わってきます。三田が終始子どもとの接し方について四苦八苦していたのもあって、サンタと子どもの信頼関係に重きを置き続けた展開の数々は印象的。本作はまさにサンタヒーローアクションというジャンルだったことを意識した次第です。
そして思春期や子どもと大人の違い、価値観の決め方といった様々な精神的テーマが介在していたのが本作もう1つの特徴。まず劇中の子どもは超少子化社会となった現代で大切に育てられている一方で、大人になることを忌避し成長を妨げる教育論に並々ならぬ恐怖を覚えました。これらの衰退した国の背景は現実でも似たようなことが起こりつつあるからこそ、余計に身に迫ってくる感触が視聴中襲い掛かってきましたね。
他にも心と体の美醜の問題、性的感情と恋愛の境目など心に突き刺さる描写の数々は鮮烈の一言。若さに憧れるあまり改造同然の整形手術を施した大渋学園長然り、最早歪としか言えない大人とそれを生み出した社会には気味が悪いといった感情が湧いてきます。歳を取ることはそれだけ忌むべきことなのか、好きという感情にはどれだけの意味があるのか……そういった難題を毎回視聴者に叩きつけてくるので、頭を抱えつつもつい考えてしまう面白さが生まれていたと言えます。
その分自分の感情を抑えられない少年少女が輝いていたのが大きな見どころ。抑圧された環境で自分の嫌な部分と否が応でも向き合い、心のままに突っ走る様子の何と若々しいことか。三田は子どもとサンタを行ったり来たりの自分のアイデンティティ確立に苦労し、冬村はどこまでも小野のためを貫き通す始末。はたから見ると暴走しているようですが、そのひたむきながら自分を偽らない子どもにやや憧れずにはいられませんね。BEASTARSでもそうでしたが、矛盾を抱えたまま生きる若者の描写に関して板垣氏の手腕は相当なものだと感じます。
まとめるとヤングアダルトまたはアダルトチルドレンの様相を語りながら、ヒーローサンタの戦いを描いた最高にキレているアニメ作品といったところ。サンタという存在を子どもを肯定する英雄に仕立て上げ、大人になり切れない子どもや子ども像に執着する大人たちの物語を展開していったのは実に見事でした。登場人物の言動や設定の数々などかなりクセが強いのですが、ハマればそのクセの強さがたまらなくなると感じますね。というかメタレドはそういった「筋を通しつつ尖っている作品」が大好物なので、SANDAのようなテイストには速攻で魅了されましたねハイ。(今季のアニメの中では『私を喰べたい、ひとでなし』『DIGIMON BEATBREAK』と並んでお気に入りの作品です)
登場人物に関してはどのキャラも魅力的でほぼ全員に愛着が湧いているのですが、しいてお気に入りを挙げるならば柳生田三郎でしょうか。サンタを捕まえる組織の人間ながら、いつの間にか三田の理解者役としてしれっと味方側に付いていたノリの軽さがまず面白かったですね。同時に子どもの頃の後悔を抱えて擦れた大人になってしまっている、そんな悲哀のあるキャラクターが特徴的。それでいて未成人式では全力で大人ぶって、子どもを守ろうとしてくれたので惚れずにはいられなかったです。(ちなみに次点は甘矢一詩。彼は本当に劇中屈指の癒しすぎて「原作単行本で一度も表紙を飾ったことがない」という事実に面食らいましたね)
そしてアニメはこれで完結ですが、第2期があるのか気になるところ。大渋たちとの戦いは終わってないですし、何より三田たちの活躍をまだ見ていたいので続きを描いてくれるアニメ2期には是非とも期待したいですね。また原作漫画の方も興味が湧いてきたところもあって、しばらくチャンピオンクロスなどで漫画を少しずつ読み進めていこうと思います。
ではまた、次の機会に。
↓以下、過去の感想が書かれた記事一覧です。
