はじまりも 君が居たからさ
メイガスはいつも、あなたのそばに
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- 心のままに、“私”を叫ぶ
ついに始まったシンデュア最終話ではいきなりノワールの正体が判明。イストワールのAIによって全世界のメイガスが機能停止してしまった中唯一動ける理由は「メイガスではない」というのは、アッサリ気味ながら結構衝撃的な答えでもありました。イストワールのデータの断片がミステル→シエルのボディに移っただけでメイガスとは言えない点もある程度予想していたものの、ヴァイスハイトの説明でメイガスとも異なる存在であることを突き付けられるのは中々にくるものがあります。
しかしノワールがこれまでの思い出を以て「私はノワールです」とハッキリ言ってみせたのは見事。自分が何者かわからなかった少女が、これまで撮影してきた写真と共に自己を確立してみせたことがわずかな描写ながら確かに伝わってきました。この辺りは長いこと自己肯定感が低かったノワールが自身を主張できるほど成長したことに、大きく感動させられるものがありますね。どこまでも独りよがりなヴァイスハイトとは異なる、仲間たちとの触れ合いを以て自分を見つけたノワールの対比も非常に気持ち良かったです。
そして復活したミステルと放ったデュアルメイガススキル(前例があるからデュアルと付いてるのか、はたまたマハトの造語なのか……)を放つ瞬間も最高でした。2人して「心のままに」と言葉にして放つ瞬間は、ノワールやメイガスたちの心を肯定してくれているようでグッときますね。カナタが最後にノアゲームチェンジャーにトドメを刺した瞬間まで含め、メイガスを否定するラスボスに対する主人公勢の綺麗な決着の付き方だと感じました。
- 人とメイガスの関係の結論
カナタたちの活躍によってようやくヴァイスハイトを止めることに成功。その後の問答も印象的で、彼のメイガス嫌いが筋金入りであることが読み取れました。ヴァイスハイトがメイガスを嫌う理由に関しても「気持ち悪くて仕方がない」の一点張りで大した過去が無いのも気になりましたね。とはいえミステルが言っていたように、こうした「自分と違う存在への嫌悪」は理屈ではないのかもしれません。そもそもメイガスどころかトキオたちにまで心を許していない描写も見られましたし、なまじ自分で何でも出来る故に他人を信用出来ないきらいがあるのがこのヴァイスハイトなのだろうと思いました。
とはいえその後にシエルの歌に救われていた過去を思い出すシーンにも注目したいところ。メイガスのこと自体は嫌っていた一方で、シエル個人と彼女の歌に対しては割と心を許していた部分もあったのかもしれませんね。(まぁその結果がシエルへのあの仕打ちだと思うと笑えないのですが)自分とは異なる相手を信じることが出来なかった反面、そんな存在たちに支えられていた事実がヴァイスハイトの奇妙なキャラクターであると感じる一幕でした。
またヴァイスハイトとイストワールのAIの問答にて、「人類はメイガスなしでも復興出来るが、メイガスがいればより良い未来を築ける可能性がある」という答えが出たのは興味深いですね。間違いを犯して滅ぶ危険性についても人間とメイガス双方が孕んでいることも示唆されており、結局のところ両者は対等足りえる関係とも取れる回答になっていました。人間とメイガスの関係が良好である限りは最悪の未来は訪れないだろうとも考えられますし、ヴァイスハイトの目論見をこうして超えていく描写として申し分なかったです。
- その後のドリフターズ
ヴァイスハイトとの戦いを終えた後はイストワールから脱出、ミステルとも一旦お別れしてそのままエピローグへ。ミステルがイストワールに残る決意をしたのは意外でしたが、パスカルとの思い出を考えればまぁ収まるべきところに収まったとも言えるでしょう。ヘッポコといったあだ名を止めて、カナタたちを名前で呼ぶまでに心を許したミステルとの別れには少々涙ぐんでしまいました。しかしカナタたちが新たに「再びイストワールに行ってミステルに会う」という目的を持ったので悲壮感はあまりありませんでしたね。むしろこの先もまた彼らの冒険は続いていくであろう、という爽やかさすら感じられます。世界の文明は大きく後退してしまったものの、そこで生きる人間とメイガスの明るい雰囲気を内包した本作らしい終わり方だった感じています。
カナタとノワール以外のキャラたちにもエピローグで様々な“その後”が用意されていましたが、短い中でどれも濃いものばかりで見どころも満載でした。何か変なDJと化したダニエルさんや追い詰められても仲の良さを発揮するランゲとドルチェ、とうとうマハトと一緒に仮面をかぶり始めたシュネーと笑いどころが多くて本当におかしかったです。中でもエリーがカナタに関してすごい余裕たっぷりな態度を見せていましたが……まさかお前、カナタと行くところまで行ったのか!?と驚きを隠せなかったです。最後の最後でとんでもないものを見せられた気分です。ともかく、憑き物が落ちて自由に行動することになったトキオ含め、それぞれが前向きに行動出来るようになったラストは本当に素敵でした。主人公たちのその後を知って、見ている側も「終わりの余韻」をしっかり噛みしめることが出来て何よりです。
最終回の感想からそのまま簡単な総評をば。発売予定のゲームを原作としたアニメ作品ですが、非常に良質なボーイ・ミーツ・ガール&ロボットアニメとして楽しむことが出来ました。目的がはっきりしている主人公が相棒となるAIの少女に出会い、共に成長していく過程をシンプルかつストレートに描き切ったのは中々に素晴らしいことだと感じています。主人公を取り巻く友人やヒロイン、そしてライバルといった関係もわかりやすく、物語として奇をてらわない・王道を突き詰めた“良さ”に溢れていました。
人間を支えるメイガスの存在も独特で、人間に反旗を翻すところや人間側が機械に依存しすぎるといった問題点にあまり触れず(代わりにそういった危惧するべき部分は敵側が担っていましたね)、良好な関係性を築いていたのも独特でした。そもそもがそういった世界観というのもあるのですが、メイガスが人間の良き隣人となっている土台のおかげですんなりと受け入れることが出来たのも大きかったです。何よりドリフターら人間側がしっかり相棒のメイガスのことを大切にしている描写が多いのも良かったですね。終盤のメイガス一斉機能停止するシーンではモブの人たちもそれぞれのメイガスの名前を呼びかけていましたし、あの世界ではメイガスたちが「個人」としてしっかり認識されていることが伝わってきました。
あと個人的は本作のお気に入りポイントとして、「ポストアポカリプス的な世界観ながらそれを感じさせない明るさ」があります。文明が一度崩壊して怪物や有害な雨が跋扈するようになっているのに、そこで暮らす人々の逞しさには序盤から目を見張るものがありました。カジノや風俗、アミューズメント施設やライブハウスといった娯楽施設が充実しているのも驚きで、発展していた頃と比べて裕福ではないものの楽しそうに暮らしている劇中の人物には圧倒されるばかり。時々挿入される殺伐とした展開も、必死に立ち向かい切り拓いていく主人公たちのおかげでスッキリと見届けられました。こんな住みにくそうな世の中でも、人々は楽しく生きているという事実だけでこちらとしても元気づけられますね。この明るい空気感は上述のわかりやすいストーリーと合わせて、本作の“見やすさ”に直結していたと思います。
では以下、各キャラクターについての所感です。
カナタ
本作の主人公。上述の通りわかりやすい本作のわかりやすい主人公として、非常に好感が持てるキャラクターに仕上がっていたのが特徴的。何といっても性格が素直かつ前向きで、トキオといった周囲の人たちから好かれやすかったのも納得だったと思います。メイガスを家族のように受け入れており、自分の弱さを認めたうえで強くなろうと努力を欠かさない様子は視聴者としても応援したくなる魅力に溢れていました。
戦闘に関しては当初こそドリフターとして未熟な面が目立ちましたが、話が進むにつれ徐々に頭角を現していくようになったのも注目ポイント。ノワールと共に強くなっていく過程も地味ながらしっかり描かれており、最終決戦に加わるのも相応しい実力者になったかと思います。愛機のデイジーオーガにもある程度愛着を持っているようなシーンもあって、ロボットモノの主人公としてどこまでもストレートな良さがありましたね。
ノワール
ヒロインその1。儚げな記憶喪失のAIにしてポンコツメイガスという属性山盛りの美少女でした。日常生活では抜けているところも多くシュールなシーンも担っていたものの、本人的には一生懸命なのでカナタとはまた別に応援してあげたくなるキャラクターでしたね。小動物的な要素でロックタウンの住人たちに可愛がられていたのも納得です。
それでいて自分の存在意義に悩むなど深刻な苦悩を抱えていたのも見逃せないポイント。パートナーであるカナタの役に立てているのか、と常に悩む様子は見ていて非常にやきもきされました。ミステル登場後はさらにその考えに苛まれていたのでハラハラし、周囲の反応とは裏腹に否定的になる過程はこちらも気が気ではなかったです。そのため最終的に自分を肯定するまでになって本当に安心しましたね。
ミステル
ヒロインその2。ノワールの別人格と見せかけて……という驚きの要素が強かったものの、何だかんだで劇中の仲間としてすんなり馴染めていたのが素敵なキャラでした。物言いはキツい一方で言動の節々から悪い子ではないことが読み取れますし、パスカルへの想いの強さもあって1クール目ラストの唐突な登場ながらすんなり受け入れることが出来ましたね。最後の別れは悲しかった一方で、パスカルとの約束を果たせて何よりと思うところでもあります。
シエル
個人的な推しヒロインの1人にして本作の涙腺破壊要員。序盤からカナタに近づく怪しいメイガスとして登場し、スパイとして苦悩する様子が何とも辛そうでしたね。この時点で色々と惹かれるものがあった中、カナタのために機能停止する瞬間は本当にショックでした。ノワール復活のためにボディが使われた後も劇中のカナタ共々尾を引きましたが、ノワールが自分自身の意志で歌うことでシエルのお別れを果たせたと信じたいところです。
トキオ(リヒト・アルター)
主人公を支える気のいい兄貴分。ギャグパートを担うことも多く面白おかしいポジションだったのも序盤まで。1クール終盤ではカナタを相棒と認めるまでの過程を、2クール目からはマハトやヴァイスハイトの因縁込みで色々と濃い存在感を放っていました。気持ちのいいキャラでムートンとの関係含め愉快だった一方、変なところで不器用なのがトキオの面倒くささを出していましたね。まぁそれも含めて良キャラだと言えますが。
黒仮面(マハト・エーヴィヒカイト)
仮面のライバル枠。初登場が風俗の待合室だったのもあり、初っ端からクールキャラ故のズレたギャグが印象に残りました。その後何かとカナタを助けてくれるシーンのおかげで、怪しいけど悪い人ではないんだろうなぁというイメージが定着しましたね。2クールに入ってからはトキオたちの過去もあってお労しい部分も増えましたが、根の真面目さもあって最後まで好感度高めで見ることが出来ました。
エリー
本作の人間のヒロイン枠。彼女に関しては初登場から漂う「負けヒロイン感」の要素が何とも言えない不憫さを醸し出していました。カナタにキツく当たり素直になれない故に、ノワールたちに先を越されそうになるところが可哀想可愛いの極みでしたね。それだけに最終回でカナタと何かあったっぽい雰囲気を出していたのは衝撃でした。最終的に大勝利おめでとうエリー!!スピンオフの漫画でも頑張れよ!!
というわけでシンデュアリティノワールの感想でした。去年の放送開始から毎週楽しんでいた作品で、最終回でも不思議と爽やかな気持ちで見届けることが出来ました。本作はこれで終わりですが、前日譚であるゲームやスピンオフ作品などは色々あるので、そちらの方も機会があれば追ってみたいですね。それくらいの魅力に溢れている作品だと思うので、「知る人ぞ知る名作ロボットアニメ」として知れ渡っていってほしいです。
ではまた、次の機会に。
↓以下、過去の感想が書かれた記事一覧です。