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牙狼<GARO> ハガネを継ぐ者 感想(総評)

希望の中の純粋な欲望を

久々の正統派牙狼、非常に楽しめました!

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 約4年ぶりの牙狼シリーズ最新作として放送された『ハガネを継ぐ者』。『闇を照らす者』以降度々登場する道外流牙を主人公とした本作では、従来の牙狼らしさを踏襲しつつ、ハガネというこれまでスポットが当てられなかった存在などに触れていく挑戦的な内容となっていました。一方で作品としてかなりつっときやすくなっており、牙狼に触れたことのない人にとっての入門編的な作品になりうる要素を兼ね備えているのが興味深いです。

 

 

 先に評価点について語りたいと思います。

 本作はまず流牙と創磨のW主人公体制だったのが特徴的。黄金騎士として成熟してきた流牙をベテラン枠に据えつつ、もう1人の主人公である創磨に成長していく展開を用意するストーリーはシンプルながらよく出来ていました。強くて安心感のあるヒーローとしての牙狼を推しだしながらも、流牙編で見られる若者の葛藤とそれを乗り越えていくカタルシスを別の騎士に担ってもらうので、それぞれを堪能したいファンにとっては願ったり叶ったりだったと言えるでしょう。流牙ファンの身としても、落ち着いた様子で創磨を見守る流牙の姿には安心感と満足感を覚えしたね。

 そんな創磨をはじめとしたハガネの騎士たちをしっかり描いていた点も好印象。名無しの騎士として存在そのものは知っていたものの、はっきりと登場したことのないハガネの鎧を纏う魔戒騎士が複数名出てきた時は驚きました。さらに名無しの鎧について何を考えているのか、彼らはどうやって戦っているのかなどにフォーカスしたエピソードも多く非常に興味深かったです。劇中で登場する騎士のほとんどが称号持ちの中、そうではない一般的な魔戒騎士の様子を見せてくれたのは喜ばしい話です。

 そのうえで彼らハガネが抱えるコンプレックスなどにも焦点を当て、そこに誇りを見出す辺りも一貫していました。劇中で流牙が「鎧に上も下もない」と語っていたように、称号のあるなしが騎士の優劣を付けることはないとはっきり明言してくれたのも嬉しかったですね。おかげで父の鎧が継げずともハガネとしての誇りを手に入れた創磨と、最後にイグスの鎧を纏って戦った流牙で騎士は皆対等な関係である・ハガネも立派な魔戒騎士の1人であることがキチンと伝わってきました。そのうえでハガネを守りし者の“原点”として描くことで、従来の牙狼の本質を突いたストーリーになっていた点も見事です。

 

 続いてストーリーの進み方に関してですが、全12話という短さもあってかなりスピーディー。過去作のほとんどが2クールだったのも物足りなさを感じるところもありますが、本作ではむしろ1クールであることの強みを活かしてハイテンポに進め切った印象を受けますね。余裕がないからこそストーリーで重要な要素を詰め込みつつ、息を尽かせぬ間に展開していくので非常に見やすくなっていました。牙狼シリーズにありがちな中盤以降の中弛みというのもほとんどなかったのも、こうした尺の短さが功を為した結果だと思います。そのため単発エピソードを挟み込まずに縦軸を進める作品においては、これくらいのスピードがちょうど良さそうな気もしてきました。

 内容が至極ストレートな点も見やすさに繋がっていましたね。印象的なのが1話で、序盤から流牙とホラーの戦闘シーンを挟むことで魔戒騎士とホラーの関係を端的に魅せ、本作の空気感を早い段階で示していました。その後も「破滅の門を閉じる」を目的に話が進むので、何を見ればいいのか直感的に理解しやすくなっていたかと思います。上述の展開の早さと合わせて、これらは牙狼というのはどういう作品なのか?を知らない初心者にとっては非常にありがたいモノになっていたことでしょう。1クールでさっと見られる要素も相まって、歴代作品の中でも屈指の初心者向け作品になっているかもしれません。

 

 そして特撮作品として外せないバトル・アクション面。こちらは牙狼ということもあって、生身アクションの極致とも言える要素は健在でしたね。騎士やホラーのアクロバティックな動きと剣を使った殺陣、魔戒法師が使う術のエフェクトマシマシ演出など、過去作と遜色のないレベルのアクションをこれでもかと堪能することが出来ました。特に本作は後述の点もあって生身のまま戦うアクションシーンが多く、演者たちの動きの良さに惚れ惚れする場面も多かったです。(特に栗山さんは相変わらず素晴らしい動きのキレとブレない体幹の持ち主で魅了されっぱなしです)

 鎧を着たアクションに関しては最小限。しかし鎧を着てからはほぼ一撃必殺の攻撃で決着する場面が多く、おかげで鎧の切り札・必殺技としてのイメージが強く印象付けられるものとなっていました。同時に閃光剣舞という必殺技が存在しているのも面白かったですね。シリーズでは珍しいエフェクトとバンク映像を駆使した技で、これまでにはない新鮮な気持ちで見ることが出来ました。そんな閃光剣舞にまつわるエピソードを挟むことで、その技の特別感や習得することの意義をハッキリと示していたのもグッド。

 本作のホラーのビジュアルも見逃せません。本作では着ぐるみの代わりに生身の人間に特殊メイクを施したホラーがほとんど(回想シーンのジガルスは例外として着ぐるみでしたが)で、過去作と比べてもおどろおどろしい見た目ばかり。生身故に動きも機敏で人間的な部分が残っているからこそ怖い・おぞましいと感じる場面も多かったです。全体を通してホラー映画の怪物・悪霊のような生々しさがあるので、個人的には従来のホラー以上にゾッとしましたね。

 

 

 

 

 さてここからは本作での不満点と問題だと思った点。見たくない方はブラウザバックを推奨します。

 本作に関しては上述の通りスピーディーな展開がウリになっていますが、それが同時に物足りなさに繋がっていると感じる部分も多々ありました。騎士同士で模擬戦をしたり料理を作る場面などはあれど、個人個人で戦う様子は少ないので劇中のキャラの印象がどうしても薄く感じてしまう面は否めなかったです。中でもアゴラの三剣士は見せ場こそしっかり用意してあるものの、もう少し掘り下げてほしいと感じてしまいましたね。この辺りは彼らの単発エピソードが挟めない尺の短さ故の弊害とも言えます。

 また序盤と比べて終盤の展開の新鮮味の無さも目立ちました。裏で暗躍していた敵や裏切り者の存在は大体予想が付くものかつ、正体が明らかになった後も既視感を覚える要素がまばらに感じられましたね。そもそも裏切ったあるいは闇堕ちした騎士や法師が事件の発端というのは過去作でうんざりするほどやってきたので、長くシリーズを見続けた人ほどまたか……という感想になりがちです。(ただこの辺りはこうでもしないと話を広げられない「牙狼シリーズの設定の自由度の低さ」が根本的な原因とも考えられますが)

 終盤に関しては9話から12話まで、ずっと同じ場所で戦っていたのも正直どうかと思いました。話の進み方に関してもムツギ法師の真意→闇を乗り越える創磨→最終決戦と1話1話をじっくりやっているので全体的には遅々として進んでいません。そのため冗長に感じる部分も多く、盛り上がりに欠けるところも少なからずありました。

 

 アクション面の不満点で言えばホラー戦の少なさも挙げられます。3話、4話とホラーと戦わない回が序盤から続いたのは問題と感じましたし、登場ホラーの数の少なさも引っ掛かりました。戦闘そのものの質は高く満足度もあるのですが、そこに至るまでの流れにヤキモキさせられましたね。ドラマを重視している分、爽快感に繋がるバトルは控えめになっていたという印象です。

 あとは上の評価点である鎧の扱いですが、鎧でのアクションをもっと見たい人にとっては物足りないと感じるところもありました。出た瞬間勝負がつく場面がほとんどなので、じっくり見る暇もなかったのはある意味で惜しいと思います。CGやVFXによるハイスピードなアクションも少ないので、鎧を着てからはあまり動かないことが多いのも気になりますね。基本的に必殺技の如く一閃で勝負を決めるバトルを是とするかで、本作の鎧のアクションの評価が二分されるかもしれません。

 

 

 総評としては「パッと見られる初心者向け牙狼」といったところでしょうか。古くからのファンほど、過去作と比べても短い内容にどうしても物足りなさを覚える作品ではありました1話1話の短さにもう終わり!?と驚き、気が付けば完結してしまった印象は否めなかったです。(結局莉杏が最後まで出なかったのも個人的には不満点)

 しかしその分短い中で的確にストーリーをまとめており、ハガネと守りし者の関係を大きく描き切ったのは素晴らしいの一言。伝えるべきもの・やるべきことをしっかり果たしたうえで作品のテーマを寄せつつ、牙狼の1作として仕上げたのは本当に見事でした。上述でも触れましたが、牙狼シリーズを知らない初心者が最初に見る作品になりえると思うので、個人的にもおすすめしたいところ。何より久々に蘇った本格的な牙狼ということで、この先に繋がるよう応援していく所存です。

 

 

 では以下、各キャラクターについての所感です。

 

 

道外流牙/黄金騎士 牙狼

 本作の主人公その1。『闇を照らす者』から3作目のテレビシリーズということもあり、ベテラン騎士としての貫禄を十分に兼ね備えた流牙の登場に大きく驚かされることとなりました。それでいて他者とのコミュニケーション能力の高さや面倒見の良さ・茶目っ気などは健在なので、ファンが期待している流牙を見られたのも好印象。何よりあの若者が今やこうして後輩の騎士を導く側に回るとは……と親戚のおじさんのような目線で感動させられるものがありますね。

 劇中ではそのメンタルの強さも相まって安心して見ることが出来ました。未熟な創磨とは対照的に守りし者としての使命感や誇りなどが既に完成されつつ、従来の流牙らしいポジティブな姿勢が相まって安定感は段違いです。闇照の頃から流牙を見て応援してきたものとして、本作の流牙ほど見ていて喜ばしいものはなかったとつくづく思います。

 

 

白羽創磨/ハガネ

 本作の主人公その2。成熟した流牙に対する、発展途上の若き騎士として物語を盛り上げてくれました。1話からツンケンかつ生意気な態度で仲間たちの輪を乱しており、序盤から波乱の要素満載だったのが印象深いです。しかし父・ゴドウに対する背景なども早い段階から明かされており、彼なりの事情を知ったうえで見ることが出来たのも面白かったです。時々イラっとさせられるものの、基本は応援してあげたくなる魅力があったと思います。

 中盤以降は父へのコンプレックスもあってメンタルの弱さが目立っていましたが、だからこそ何とか乗り越えていきハガネの騎士としての誇りを獲得していく流れは見事。幻覚のシーンでは仲間や父の言葉に傷付きながら、それらを発していた自分自身を斬ることで闇を克服するのが最高でしたね。まだまだ問題が多い中で、しっかりと成長してみせた過程はもう1人の主人公として申し分なかったです。

 

 

コヨリ

 本作の若き法師枠。創磨の幼馴染兼家族という、絶妙なポジションで彼を支えてくれる名キャラクターでした。メンタルに関しても中々に強く、10話で闇堕ちしかけていた創磨とは対照的にムツギ法師に一言申した姿はカッコよかったです。技量的にはまだまだな一方で、精神的には守りし者としての覚悟を備えた立派な法師として活躍してくれたと思います。

 

 

ムツギ

 ベテラン法師にして裏切り者枠。序盤はイグスを宥めたり創磨とコヨリに対する母性を見せたりと心優しい一面が目立っていただけに、真相を知った時はかなりショックを受けました。ただ心が荒んでしまった理由もわからなくはないので、どちらかというと同情を寄せてしまいますね。同時に序盤と終盤のキャラクターのギャップも印象的な人物で、ベテラン俳優の演技力の高さを実感させてくれる役回りだったのも良かったです。

 

 

イグス/ハガネ

ロン/ハガネ

オビ/ハガネ

 本作の中盤を盛り上げてくれたアゴラの三剣士。登場当初はいきなり3人も出てきてかませ役にされないかと不安を覚えましたが、そんなことは無くてホッとしました。出番こそ短いもののその出番でしっかりと活躍しており、ハガネの鎧召喚と合わせてサブ騎士の活躍としては不遇ではなかったと感じています。シリーズには扱いの酷い騎士もチラホラいますからね……またハガネとして達観したロンやミーハーなオビなど、それぞれのキャラも立っていたのも素敵で気付けば全員愛着が湧いていましたね。

 

 

白羽ゴドウ/光斬騎士 斬冴

 創磨の父にして流牙の師匠枠も務めた魔戒騎士。物語の開始時点からほぼ故人であり、基本回想シーンの身の登場でしたがその存在感はしっかりとありました。8話で判明したキャラクターも騎士として立派な人で、イグスたちが尊敬するのも納得とわかりやすかったのも良かったですね。だからこそ死んだ……裏切り者の可能性を仄めかしつつ、そんなことは全くなかった騎士の鑑にして、創磨が超えるべき壁としての役割もキチンと果たしてくれました。

 

 

 というわけで牙狼ハガネの総評でした。何だかんだありましたが、久々の牙狼はかなり楽しめましたね。魔戒騎士のアクションやホラーの怖さ、シリーズ特有のファンタジー要素など牙狼だからこその部分を存分に味わうことが出来て大満足です。久しぶりの感想も大いに筆がのりましたし、3カ月間充実した牙狼ライフを送れたと感じています。この先の牙狼は続いていくのかという不安もありますが、ひとまずは本作を作ってくれた制作陣に感謝を。そしてこの先を楽しみにしつつ、新たな牙狼を気長に待っていたいと思います。

 

 

↓以下、過去の感想一覧です。

 

 

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