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GARO -VERSUS ROAD- 第12話(最終話)「VERSUS ROAD」感想

闇の中に輝く”想い”の光

希望となりて苦界にて生き残れ、牙狼GARO>!!

Versus Road ~非現実的サバイバル~

Versus Road ~非現実的サバイバル~

  • 発売日: 2020/06/24
  • メディア: MP3 ダウンロード
 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

  • 無情の決着と最後の戦い

 前回の終盤、涼介と激戦を繰り広げた結果彼を下した世那。振り上げた剣をそのまま彼に向けるのかと思いきや、結局剣を下ろし葉霧との違いを見せてくれてホッとしました。前回剣を振り上げた姿が過去の葉霧と重なった中、世那は彼のように非情な戦いに屈服することはなかったということがわかります。しかし業を煮やした葉霧によって涼介を殺されてしまうという無情な展開には心が打ちのめされましたね。

 そうして牙狼の鎧から溢れてきたダークメタルから「ベイル」なる鎧が登場。腰のローブなど重厚感があるデザインからラスボスとしての雰囲気はバッチリと言えます。ダークメタルという名称といい、ソウルメタルから反転したデスメタルで構成されている暗黒騎士との関係性が気になるところです。

 そんなベイルを纏い世那に迫る葉霧に対し、世那も突如落ちてきた牙狼剣を抜くことでついにガロの鎧を纏った瞬間は非常にテンションが上がりました。青いラインが入った機械的かつ近未来なデザインのこの牙狼のデザインは以前からかなり気に入っていて、何よりここまで生身で戦ってきた中でようやく鎧が出てくることに感動を覚えますね。円を描かず鎧が浮かび上がってくるような変身プロセスもまた新鮮で面白いです。

 

 

  • 黄金騎士・牙狼(ガロ)

 ついにガロの鎧を纏った世那とベイルを纏った葉霧との直接対決が勃発。VRのようなサイバー感溢れる世界に突如移動して行われましたが、軽やかな動きに加え、蛇腹剣を使うベイルなどぬるぬると動くCGをフル活用した戦闘は非常に見応えがあります。15年前の1作目からのVFXの進化というものをここにきて実感しました。ただ剣を使っての斬り合いは序盤だけで、途中から剣を使わずプロレスのような戦闘に入ったのには「また剣を捨てて拳で戦う牙狼かよ・・・・・・」と苦笑いしてしまいました。*1

 しかし主題歌が流れてから世那が脱落していった参加者たちの技を次々と繰り出してベイルを追い詰めていく流れは最高に熱かったです。この戦いを通じて様々な人物たちの思惑や感情に触れてきた世那だからこその戦法ですし、何より「人の想いを受け継ぐ」という牙狼シリーズの根本的なテーマの1つを違った形で見せてくれたことに感心を覚えます。最後に剣を取った葉霧に対し、最後の最後まで武器を取らず拳で戦い抜いた世那という構図もまた2人の上手いと感じましたね。

 

 

  • 世那の選択

 そうして葉霧を倒した世那は彼に手を下さないという選択をし、最後の最後まで自分は葉霧とは違うことを見せつけてくれます。対する葉霧はガロに選ばれなかったこと悔しさを吐露する姿が哀れに感じました。彼なりに死んでいった仲間たちの想いを受け継ごうとしたのでしょうが、戦いに屈して人を手にかけた時点でガロになる資格は失われたのだと考えられます。

 そんな中2人の戦いを見物していたアザミが葉霧を手にかける展開はある程度予想していましたが、その後何もせずに世那の元を去るのは少し驚きました。ここにきてアザミの目的は明かされるのか、彼女とどう決着をつけるのかと思いきや何もしないというのは少し拍子抜けです。

 そして世那がガロを受け継がず、あくまで1人の人間として生きる選択をしたシーンはこれまでの彼の言動からしてとても納得のいく行動でした。願いを叶えるために戦ってきた多くの人間を見てきて、そのうえで命の奪い合いを最後まで否定した彼の選択はとても潔く見ていて気持ちがいいです。そのまま地面に突き刺さった牙狼剣を抜くことのないまま、振り返りもせずに去って行くラストは広大な雪景色の迫力もあって壮大さと物悲しさを残してくれました。

 

 

 結局唯一生き残った主人公が「ガロにはならない」という形で終わった本作。決してグッドエンドではありませんが、バッドエンドかと言われるとそうでもないように思えます。ある意味でビターエンドとも言える終わり方は意外ながらも斬新で、何より残酷な世界や戦いの虚しさを存分に見せつける中、それでも一筋の光を信じてこの世界で生きるという人の強さを見せてくれた本作はまさしく『牙狼』だったと言えます。ぶっちゃけ今回の話を見るまで『神ノ牙』のような救いようのない悲劇で終わってしまうのではないかと戦々恐々だったのでこうして救いがある終わりになったことに安心を覚えています。

 とはいえアザミとの決着の持ち越しなどモヤモヤする要素があったのも事実。この辺りは次回作で解決してくれるだろうと期待したいところです。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

GARO -VERSUS ROAD-』総評

 

 牙狼15周年記念作品として作られた本作。「牙狼でデスゲームをやってみた」とも言える内容で従来のシリーズにはない要素てんこ盛りかつ過去作のお約束が通用しない世界観を構築しており、良くも悪くも先の読めない展開が気になる作品でした。

 

 先に評価点について語りたいと思います。

 本作は魔戒騎士でも法師でもない普通の人間たちが主役の物語だけあってどこまでも人間臭い物語が展開されました。自分の願いのために他人を蹴落とすという人間ならではの業の深さや信じることの出来ない弱い心をこれでもかと見せつける一方で、それでも誰かを助けたり信じようとする優しさと強さを全面に押し出す内容には心打たれました。特にメインキャラクターの1人である「翔李」は最後まで根っからの善人として彼の死が主人公の成長に繋がったと考えると興味深いです。

 また主人公の「世那」をはじめとした登場人物の多くが善人とも悪人とも言えない点を抱えていたのも良かったです。翔李以外の参加者は他人を陥れてしまう弱さもあればそれを悔いる善性も持ち合わせていて、その中途半端さは実に人間らしく描かれていて見ていて愛着が湧いてきました。本作は完全無欠な善人でも非情な悪人でもない”普通の人間の物語”だったのだと実感します。

 それでいて『牙狼』のテーマそのものから外れているわけではないのが素晴らしいです。上記で触れた「人の想いを受け継ぐ」「人の強さ」以外にも、「”守りし者”になるにはどうすればいいのか」といったシリーズの原点にも切り込んでいました。最終話の冒頭、ゲームの進行役である「朱伽(しゅか)」が「ガロとは競うものではない。選ぶものでも与えるものでもない」といった発言をしましたが実にその通り、最後まで他者を想い、誰かのために戦おうとした世那が牙狼剣を抜く様はまさに牙狼でした。ある意味で本作は牙狼のテーマに忠実だったと言えます。

 

 またアクション面に関しても評価点をあげたいところ。鎧を纏っての戦闘は最終話のみで、生身の戦闘が主体となっていましたがその戦闘シーンがどれもずば抜けていて非常に見応えがありました。プロレス技を主体とした涼介や連打が得意な貴音などそれぞれ異なるアクションスタイルでキャラ付けする点も面白かったですし、特に殺人鬼の日向は演じている人がトリッキングなる競技で実績を残しているだけあって頭1つ抜けたアクションを毎回見せてくれて楽しかったです。最終話のCGを存分に使った騎士同士の対決も最後だけあって迫力があり、何よりここまで溜めに溜めた分見ている側として「これを待っていたんだ!」という感激が押し寄せるほどでした。

 

 

 

 

 

 さてここからは本作での不満点と問題だと思った点。見たくない方はブラウザバックを推奨します。

 まず本作は非常に陰鬱とした内容だったため、過去のシリーズにあった爽快感といったものが皆無だったことがあげられます。これは放送前に公開されたあらすじの時点である程度予測出来るものでしたが、牙狼がヒーロー作品である以上、敵と戦って勝つという要素がほとんど見られなかったのは少しもったいないと思います。

 人の心の強さを見せる一方で弱さや醜さを見せつけてくる構成は非常にしんどかったです。それ故の最終話のカタルシスに繋がったのはとても興奮したものの、そこに至る11話までの道のりが険しかったのはいただけませんね。中盤辺りでスカッとする展開があればまた違ったかもしれません。

 肝心のデスゲーム部分も基本プレイヤー同士で戦い合うものばかりで大味だった印象を受けました。ルールも雑なところがチラホラ見受けられましたし練り込みが甘いと感じてしまいます。

 

 他にも上記の通り生身アクション主体で鎧を纏った戦闘がほぼなかった点も既存のファンからしたらかなり残念なところ。森の中や廃工場で『クローズ』や『HiGH&LOW』のような男同士の泥臭い殴り合いが展開される様子は異質すぎてヒーロー作品を期待していた人にとってはガッカリするでしょうし、牙狼を知らない新規の人にも取っつきづらかったのではないかとつい疑問を呈してしまいます。

 またガロの鎧が全然動かない点に関しても不満が残ります。予算の都合などの問題があるのはある程度察することが出来ますが、せめてガロの鎧は数話に1回動かしてほしかったです。新しいデザインの牙狼が個人的に気に入っていただけにほぼ彫像と化していたのは非常に惜しかったです。

 

 

 総評としては「人を選ぶけどこれもまた1つの”牙狼”だった」ですかね。人によって完全に好みが別れる内容でしたし「こんなの牙狼じゃない」という人たちの意見も非常によくわかります。しかし最後まで見て作品の伝えたいことがはっきりと理解出来ましたし、何より登場人物に愛着が湧いて何だかんだで好きになった作品でした。今の牙狼の体力的に次回作を作るのは難しそうですが、小説などでもいいのでアザミの件などにケジメをつけてほしいところです。

 では以下、各キャラクターについての所感です。

 

 

久遠世那(クオン・セナ)

 本作の主人公。基本的に善人として描かれていて他人を見捨てられないお人よしなのですが、ゲームの中で助けた人びとに平気で裏切られたり親友に対して疑心暗鬼に陥ったりとどこか脆い人間性を抱えたキャラクターでかなり好感を持てました。親友の翔李が死んでから完全にヘタれた状態が数週にわたって続いたのは少しキツかったですが、その後自分の答えを見つけて「ガロにはならない」選択をしたことに驚きと感動を覚えます。友の死を乗り越えて非常に主人公らしくなったので、何かしらの形で再登場してほしいですね。

 

 

天羽涼介(アモウ・リョウスケ)

 世那に次ぐ準主人公ポジションとして描かれているキャラクター。かなり描写が多くその多くが腐れ縁の大とのやり取りに集中しているので2人の一言では言い表せない関係性が良く理解出来ました。一方で世那とのやり取りは後半になるまでほとんどなかったのは惜しいと感じました。序盤から世那とがっつり関わっていれば決勝戦の対決の趣がより深くなったと思うだけに少し残念です。

 

 

南雲太輔(ナグモ・ダイスケ)

 動画投稿をしている参加者。2回戦で自分を虐げるスポンサーの男を見殺しにするなど黒い一面もちらほら見られた一方で、ゲームの真相を探って恐怖を紛らわそうとしたり世那のお人よしぶりに感化されて彼に激励を送ったりするなど根っからの悪人とも言えない絶妙なバランス感覚が癖になります。消滅する直前「死にたくない」と本音を漏らすなど本作で最も「人間臭い」キャラクターだったと言えます。

 

 

香月貴音(コウヅキ・タカネ)

 ジェンダーレスなモデル。その中性的な容姿故に序盤から目立つ存在でしたが物語が進むにつれサイコな一面を露にするという狂気的なキャラクターでした。心情描写もぶっちぎりで多くその抱える闇を全面に押し出しており、役者の演技力も相まってかなりのインパクトを残してくれたと思います。ただ肝心の過去に関しては断片的に描かれるだけで全貌が明らかにならなかったのは少し惜しいですね。

 

 

星合翔李(ホシアイ・ショウリ)

 主人公の親友。途中実は黒い何かと抱えているのではないかという疑惑が次々上がってくる中、実際は非の打ちどころのない善人だったというオチにはまんまと騙されました。最後まで世那の身を案じ彼のために自分を犠牲するシーンは涙なしでは見れませんでした。中盤の退場から物語の緊張感を一気に出してくれた名キャラクターだと思います。

 

 

奏風大(カナタ・ダイ)

 本作を不良の喧嘩テイストに押し上げた張本人。半グレであることからくる「世の中の生き辛さ」を感じさせてくれる性格をしていて、その喧嘩っ早さから誰よりもこのゲームにのめり込んでいく様子はかなり印象的でした。涼介との奇妙な友情もあって独特の空気感を形成していましたね。

 

 

日向蓮(ヒュウガ・レン)

 殺人鬼。本作トップクラスの危険人物として描かれておりその「ヤバい人感」は貴音に次いで高かったです。躊躇なく他人に手をかけるシーンなども爽快感がある一方でかなり恐ろしかったです。演者の身体能力の高さもあってアクションの迫力は参加者の中でもピカイチでしたね。

 

 

朱伽(シュカ)

 この子は結局何だったんだろうか?という疑問が真っ先に来てしまうキャラ。人型魔導具など様々な予想がつきますが単にゲームの進行役としてか特に説明がなかったことには少しがっかりしました。最終話の意味深な発言をした理由なども明かされないまま退場してしまったのは非常に残念です。とはいえ基本男だらけのゲームの貴重な女の子だったので場面場面の華やかさを保ってくれる数少ない存在だったと言えます。

 

 

伽堂アザミ(カドウ‐)

 黒幕その1。母の胎内にいた頃に闇に触れていたという恐ろしい経緯の持ち主だけにその性格も残忍極まりなく描かれていてかなりゾッとします。人間的な弱さを見せる葉霧に対して何を考えているのかわからない点も恐ろしいです。最終話でダークメタルのみ回収して去っていきましたが、今後彼女の目的が明かされるかどうかが気になります。

 

 

葉霧宵刹(ハギリ・ショウセツ)

 黒幕その2。当初は謎の男として不気味な印象を残していましたが、元騎士候補だと判明してからは「ガロの選ばれなかった哀れな人物」という側面が出てきて一気に味わい深いキャラになったと思います。良くも悪くもいつもの牙狼に出てくる「堕ちた騎士」としてどこか哀しく描かれていたので一気に好きになりましたね。

 

 

 さて今年は牙狼15周年ということもあって他にも何か記念的な作品やイベントはないかと期待したいところ。そろそろソードが主役の劇場版なども見てみたいですね。

 

 

 ではまた、次の機会に。

 

 

↓以下、過去の感想が書かれた記事一覧です。

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*1:名前に「剣」が入っているのに全然剣を使わない黄金騎士をつい思い出してしまいます