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華衛士F8ABA6ジサリス 感想(簡易総評)

どこかの世界で君と

その美しき運命に、酔いしれよ

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 『仮面ライダーディケイド』の主演で活躍し、現在はAICライツの代表取締役を務める井上正大氏。その氏が提案した「YouTube上で展開する特撮ドラマ」を実現するために始動した「PINKの特撮」企画で完成した作品が『華衛士(センティカ)F8ABA6ジサリス』です。YouTube上で無料公開される作品としてはかなり高クオリティであり、毎週その映像には驚かされました。ストーリーそのものは難解だったものの、雰囲気自体は決して悪くないので楽しめたのも大きいです。今回はそんなジサリス全12話*1についての感想をまとめようと思います。

 

 

  • その“絵”を読み解くとき

 本作の魅力を一言で表すなら“”でしょうか。毎回(2話に1話)に異なる世界を舞台に物語が展開されるのですが、見ている中でそれが「違う世界だ」と感じられる描写が随所に見られました。住人の異質さや謎の現象のシーン、そもそも世界ごとに舞台(撮影場所)が異なるのもあって、別世界にいる感覚を何となくですが軽く味わうことが出来ます。予算の問題といった大人の事情をひしひしと感じる面も少なくありませんが、創意工夫で世界ごとに異なる光景を構築出来ていたと思いますね。

 そこに何のためか使命を果たさなければならないアユカと、彼女を導くジサリスが関わることで世界観が構築されていくのが特徴的でした。わけもわからず何かをやらされているアユカの様子は見ていてジサリスたちへの憤りを覚えるものの、自分のやるべきことを懸命にこなそうとするアユカに落ち着かされます。ここからは「全てを把握出来ていなくても、目の前の事柄を取り組む姿勢を大事にする」というテーマのようなものが垣間見えますね。アユカを通してみていると、まずは行動するべし!という言葉が浮かんできそうです。

 さらにジサリスたちが語る世界の危機などが加わり、物語はより深みへ。詳しいことは何も説明されないものの、登場人物の目的ははっきりしているのでジサリスたちを意識して追えば十分間に合う可能性があるのが面白いですね。意味不明に感じるところも多々ありますが、雰囲気で感じ取れることは出来るので、そういった雰囲気に潜むモノへの感覚をより理解出来ます。見えないモノにも目を向けて、わずかな隙で正体を突き止める……過程はさながら初めて見た絵を見つめ、そこに込められた作者の想いなどを読み解いていくかのようです。

 あとはやはり戦闘シーン。CGのクオリティや殺陣の動きはYouTubeで無料で見れる範疇ではなく、高水準の映像には毎回見入るばかりです。携帯変華のぶっ飛んだ変形プロセスとその後繰り広げられる戦いは、何だかんだでどれも楽しかったですね。何が起きているのかよくわからない問題を抱えている作品ながら、そこにどのような作者の意図が隠されているのか……個人的にはそんなところに本作の絵画のような作品性を見出すことが出来ました。

 

 

 このように雰囲気を楽しむ作品であり、それを理解すれば十二分に世界観を堪能出来るジサリス。とはいえ本作の散りばめられた謎に対する姿勢には、思うところがないわけではありません。ここから先は批判が多いので見たくない方はブラウザバックを推奨します

 

 やはり本作の最大の問題は説明不足ですね。センティカとは何なのかといった専門用語から、何故アユカの世界が滅びかけているのかなどの理由に具体的な説明がないまま話が進んでいたことにやはり唖然となります。最後まで明かされないまま終わってしまった謎も多く、描写だけで読み取るにはかなり無理があります。

 そんな説明不足はキャラ描写にも及んでおり、中でもジサリスのキャラクターを掴む難しさが際立っていました。何も説明しないままアユカを巻き込み、様々な方法で殺して別の世界に連れて行く……主人公とは思えない悪趣味なやり方には序盤ほど見ていてどこか懐疑的になってしまいます。ジサリスなりの考えがあることを察することが出来る一方で、それを視聴者に把握させないままドンドン進んでいくのは結構不親切と言わざるを得ません。

 絵画のように楽しむ作品であると上述したものの、それが難しい人にはやはり本作は合わないのかもしれません。最低限ジサリスたちが何を考えているのかや、アユカや彼女の世界の秘密などを断片的にでいいから語ってほしかったです。

 

 

 では以下、各キャラクターについての所感です。

 

 

ジサリス/センティカ ジサリス

 本作の主人公。何かと不敵な態度を取り、アユカをこの手この手で導いてから殺すという意味不明な行動に終始翻弄されました。懲戒免職を受けて携帯変華出来なくなった経緯があるけど)何も明かさずただただヒロインを手にかけるばかりなので見ていてフラストレーションが上がった一方で、彼女に対する並々ならぬ執着と重い感情を魅せており、個人的にも特に把握するのが難しいキャラクターだったと言えます。

 話が進むにつれ彼が抱える問題や苦悩が少しずつ分かっていくので、咀嚼するたびに理解が広がっている主人公でもありました。特に9話と10話で見せたジサリスの名前に対する想いは、彼が世界とアユカのためであると同時に自分のアイデンティティを守るために戦っていることが何となく察せられます。突然消滅するという衝撃の最期を迎えたジサリスですが、あの後彼がどうなったのか気になるばかりです。

 

 

アユカ

 本作のヒロイン。わけもわからないまま様々な世界に飛ばされ、わけもわからないままジサリスに何度も殺されるかなり不憫な立場に同情が止まらなかったです。視聴者と同じくらい本作の説明不足に振り回されており、ジサリスに導かれるばかりの旅は見ていて何度も気の毒に思えました。

 そんな状況でも他人を気遣ったりする優しさを見せるのが何とも素敵。個人的には5話と6話での吼太郎との関係性・やり取りがかなりお気に入りで、どんな状況だろうと他人のために歩み寄れる少女であることが伝わってきました。そんな彼女がジサリスを殺す際に涙を流したのも、旅の中でジサリスの心に寄り添っただからなのかもと今になっては思います。

 

 

ラドキーパー

 本作の「結局お前は何だったんだ」枠その1。アユカにストーカーするジサリスをストーカーする謎の男として1話からずっと出ていましたが、無言でただ見つめるだけのキャラには大いに困惑させられました。ただでさえ松田悟志さんが何も喋らないだけで面白いのに、訪れた世界によってパズルだったり仮面だったり持ち物が変わる演出が余計シュールさを加速させます。

 最終回でジサリスに微笑む以外では徹底して無反応だったので何者だったのかわからずじまいでしたが、今となっては「制限時間の擬人化」だったのかもしれないと思うようになりました。各世界でいられる残り時間をジサリスに伝える役割を持った歩く砂時計として、彼の旅を見届けてくれたのでしょう。そう考えると大分ロマンチックな気がしてきますね。

 

 

フォボス/センティカ フォボス

 ストリートギャング出身らしい若者。アユカたちに親切な面とジサリスに向けた狂気的な笑み、それぞれを両立させた中々に趣深いキャラ。しかし結構柔軟な思考の持ち主らしく、後述のセンティカ2人と比べてもジサリスや彼のやることに理解を閉めてくれていたのが興味深かったです。まだ若いからといった側面もあり、世界の維持に固執する者たちよりも好意的に見ることが出来ました。

 そして9話以降は割と便利なサブキャラとして目立っていました。説明不足な本作では貴重な説明要因として色々話してくれていましたし、ジサリスにとってもアユカにとっても視聴者にとってもありがたかったです。チャラいけどその分厳格さがないので取っつきやすい……そんなイメージを抱きました。

 

 

ヴァニタス/センティカ ヴァニタス

 ジサリスの先生でもある男。その経歴と風格から本作屈指のベテラン戦士という趣きでしたが、いざ本編を見てみるとあまりにも融通の利かないキャラクターが印象に残りました。アユカやジサリスに常に怒りをぶつけているかのような態度は、事情はありそうと察せられるものの中々に厄介でしたね。(それでいて一度ジサリスを倒すくらいには強いのがまた厄介)

 しかし彼がいる世界や家族の真実には愕然となりました。家族よりも任務を優先した自分を罰するかのように、娘たちの最期を見続けることを選択したくだりはあまりにも悲しすぎます。過去の過ちから頑なになるあまり、自分も他人も傷つけてしまう存在になってしまったのかもしれません。

 

 

ジール/センティカ デジー

 センティカの中でも偉い人。世界を1つ治めるほどの支配者ながら、その実態は悲しい暴君というキャラクターがまた絶妙でした。欲望を捨てた人類を導く使命に没頭するあまり、自身が支配者としての欲望を抱いてしまったという構図はあまりにも皮肉に満ちています。それでいて彼も自分なりにそのことを理解しているのが、デジールというキャラの哀れさをよりわかりやすくしていました。

 戦闘に関しても序盤ラスボスに相応しい強さを発揮していたものの、最終話でパワーアップしたジサリスにボコされるなど微妙に不遇気味。とはいえ最初は善良だったであろう人物が落ちぶれてしまった結果と考えると、この扱いにも納得はいきますね。厳格そうな見た目に反して、自分の矛盾に誰よりも苦しんでいたのかもしれません。

 

 

ゼーゲン

 本作の「結局お前は何だったんだ」枠その2。元老院と思われる場所に佇む最高指揮官、悪の大玉っぽい雰囲気を醸し出しながら、最後までジサリスと合わないまま終わったことにかなり衝撃を受けました。栗山航さんが今度は悪役をやっているのか?という期待に反してただ見ているだけで終わったので、個人的にもガッカリ度はかなり高めです。

 ただ嬉しそうにエア指揮者して周りの幹部連中に引かれるなど、笑いどころもあって要所要所でまぁ印象に残る存在にはなってくれていましたね。せっかくの配役もこのままではもったいないと思うので、続編では今度こそジサリスの前に立ちはだかってほしいところです。

 

 

 というわけでジサリスの感想でした。どういう話なんだコレ!?という疑問に頭を抱えることになりましたが、まぁ何とか書き上げることが出来て今少しだけ安心しています。本作は1から10まで地の分で詳細に書かれた小説や漫画ではなく、1枚の絵で世界を魅せる絵画のような作品であると仮定して進めてやりきりました。難しかったものの見ていて面白かった作品でもあるので、こうして自分なりの本作への想いを書けくことが出来て本当に良かったです。

 さてこうして書き終わって気になるのはやはりジサリスの続編。あの衝撃的なラストや突然出てきた新センティカといい、終わらせない気満々な内容でもあったので否が応でも期待してしまいます。続編の決定は現在の本編の再生数次第とのこと*2なので、個人的にもまた何度か見返しながら貢献していきたいです。

 

 

 ではまた、次の機会に。

 

 

 

↓以下、過去の感想が書かれた記事一覧です。

 

 

 

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*1:奇数話と偶数話で1つのエピソードの前後編となっているため、実質的には全6話と捉えることも出来る。

*2:作品公式Twitterアカウントのツイートを参照。https://twitter.com/JISARIZ/status/1683382773812449280