新・メタレドの楽しんだもん勝ち!

様々な作品について語ったり語らなかったりするサイト

ウルトラマンデッカー 感想(総評)

輝け弾けろ

飛び出せ迸れ

デッカーッ!!

安定して熱い、若者たちの「未来」を勝ち取る物語だった

.

.

.

.

.

.

.

.

.

.

 ウルトラマンシリーズ最新作である『ウルトラマンデッカー』が完結してから1週間ほどが経過しました。『ウルトラマントリガー』の直接的な続編として世界観を共有した本作は、トリガーとは打って変わって「友情・努力・勝利」を提唱する熱血作品としての王道を行っていた内容だったと思います。同時に『ウルトラマンダイナ』を意識した作品としても、ある種熱い一面を通じた構成のようにも感じましたね

 

 

 先に評価点について語りたいと思います。

 何といっても本作は非常に丁寧な人物描写が見事な作品でした。主人公のカナタをはじめとした主要人物にフォーカスした内容となっており、新生GUTS-SELECTのメンバーそれぞれをメインにしたエピソードをしっかりと用意したうえで彼らのキャラクターを掘り下げていったのが素晴らしかったです。カナタという親しみ深いキャラを据えている中、それ以外のメンバーにもキチンとフォーカスを当てている細やかさには舌を巻くほどです。

 その人物描写から発展して「未来」をテーマにした物語が展開されていたのも大きなポイントです。スフィアに冒された地球での苦しい生活やアガムスという悲劇を背負ったヴィランの登場など、先行きの見えない未来への不安を煽りつつ、その問題提起に如何なる答えを出すかのストーリーが描かれていました。(現実でコロナ禍で閉塞した環境が形成されている現代だからこそ出来た内容とも言えます)マザースフィアの目的である「全てを1つに」も、言い換えればその未来の悲しみに対するある種のアンサーの1つだったと、今となっては思います。

 しかしそのスフィアたちに対してカナタたちは間違いを認め、その悲しみを乗り越えていく強さを手にしていくことを示すのが見事でした。他人との違いを理解しつつ、自分たち自身で未来へ進む意志をはっきりと出すことこそ本作の答えだったと言えます。一見ウマの合わない仲間やAIとも心を通わせて、最終的には違うもの同士で力を合わせる考えは見ていて何とも気持ちがいいものです。トリガーが「過去」の決着をつける物語なら、デッカーはその先にある「未来」へと繋いでいく物語だったのかもしれませんね。

 

 また本作は意外な展開やサプライズが多かったのも印象的。中でも15話のデッカー・アスミ出現や21話のダイナの客演などは、放送当時とてつもない衝撃を与えたことが記憶に新しいです。話の主軸に別の要素を入れておき、予告でもサプライズを伏せてギリギリまで隠しておく構成もお見事でした。

 アガムスの正体が明かされるシーンなどはその最たる例だったと言えます。それまでの描写でアサカゲ博士に不穏な要素を入れつつ、視聴者が想像していた展開の斜め上をいく裏切りを見せたことには驚愕しました。テラフェイザーがスフィアに乗っ取られるかもしれない……といったありきたりな予想に視聴者を誘導していたように感じますし、おかげもっと別の展開が用意されていた!といった感覚で楽しむことが出来ました。

 これらのサプライズ要素は上述の丁寧な人物描写も相まってより大きな衝撃を受けられたのだと個人的には考えています。物語自体の下地があらかじめしっかりしていたからこそ、いざという場面で驚きも大きくなっていました。堅実な物語だからこそ、時々挿入される意外性が光っていましたね。

 

 そして前作トリガーの扱いについて。『エピソードZ』でも健在となったケンゴたちをどう活躍させるのか、その辺りの塩梅が実に絶妙でしたね。まずケンゴやアキトといった強すぎる味方は火星にいて、地球はバリアで隔離されてしまった状況を作り出すことで手を出せないようにした設定には膝を打ちました。時には助けに入ることもあるけれど、そう簡単には頼れないことで今地球にいる戦力だけでどうにかする光景が出来上がっていました。

 そんなケンゴが力を貸してくれる回はどれも最高のストーリーでした。かつての激闘を戦い抜いた英雄として強く、活躍している間は安心感が半端なかったです。カナタのメンタルが不安定な時も落ち着いていたケンゴが諭すシーンなども、先輩ヒーローらしさに溢れていました。最終回でも光の力の受け渡しという理想的なバトンタッチを果たし、その後も生身で戦ってくれたケンゴは理想的な前作主人公になっていましたね。

 他にもトリガーの物語の補完がされていた点も見逃せません。初めてケンゴが再登場した7話と8話のエピソードでは、闇に囚われたままのカルミラを救い出す展開がされたことに心底驚かされました。前作の時点である程度救われていたと思われていたカルミラを、さらにそこから救い出したのは見事としか言いようがありません。さらに謎の多かったルルイエの正体など、前作で消化不良に終わってしまった要素も綺麗に回収してくれていました。ある意味でトリガー真の最終回を見せてくれたことには感謝しかありませんね。

 

 

 

 

 さてここからは本作での不満点と問題だと思った点。見たくない方はブラウザバックを推奨します。

 まず個人的に気になったのがカナタ自身の悩みの問題。自分が何を目指せばいいのかはっきりしないまま戦っていたカナタが、何のために戦うのかを考えていく過程が序盤から描かれていました。それ自体はよくある展開だったものの、その内容とカナタが出した答えについては色々と首を傾げるところがあります。
  前半に関してはカナタが悩みを様々な人に相談していく様子が描かれていましたが、良くも悪くも似通った光景が展開されていたのが残念でした。相談する相手こそ違うもののカナタが悩んでいる内容は基本的に同じなので、答えが出ないまま何度も同じ内容を見せられているように感じてしまいます。その回のメインの片手間で行われていたのもあって解決の話も遅々として進まず、正直見ていてじれったいと思ってしまいました。
 後半からはアガムスの問題など色々な要素が加わったものの、カナタが悩むパートがどれも同じように見えてしまう点は変わっていませんでした。カナタが悩んでいるところに周囲の仲間が駆け寄り、何かしらのきっかけを得て解決へと繋がっていく流れが何度も行われていたように思えてなりません。他の主要キャラがある程度答えをしっかりと持っていた分、カナタの中々答えが出ない様子が目立っていたようにも思えます。

 

 そしてその悩みに対するカナタの答えにも問題を感じました。特に後半からは「何もわからねぇけど」と目の前の問題を解決することに専念して終わる話が多かったです。これに関してはカナタらしいと思う反面、ワンパターンに見えて仕方なかったです。基本的に真っ直ぐな主人公が様々なことを知る中で頭を抱えて考えて、その結果が毎回毎回「わからない」で終わってしまうのは何とも拍子抜けに思えてなりません。

 快活な主人公がウジウジと悩むこと自体は決して悪いことではないですし、カナタのキャラクターを知る上でも非常に重要なことだと思います。しかし同じような内容を何度も繰り返し、その答えをはっきりさせないまま解決したかのように話を進めることには色々と苦言を呈したくなりました。カナタが明るく好感が持てる主人公だったからこそ、彼にキチンとした答えと言葉を用意してほしかったと考えずにはいられなかったです。

 

 他にもメインヴィラン以外の怪獣や宇宙人の描写がやや薄味だった点も気になりました。この辺りは前作から大きく改善しているものの、スフィア関連ではない怪獣の脅威が若干感じられなかった話がいくつかありました。(ただしそういった話ばかりではなく20話のラゴンのようにその怪獣にスポットを当てた回は非常に面白かったです)スフィアも人間も怪獣を道具のように扱ってしまうエピソードなどもほんの少しだけで終わってしまったのが惜しいです。

 ミクラスたちディメンションカード怪獣の活躍が中途半端だった点、そして前作と同じく『ダイナ』との関連性を仄めかしたもののほとんど明かさじまいな点にも不満を覚えます。特にデッカーの力の根源について不明のままであることには色々と仰天させられました。こちらが期待しているだけかもしれませんが、やはりどうしても目についてしまいます。(ただデッカーの正体に関しては続く劇場版で明かされる可能性もあるので期待したいところです)

 

 

 総評としては「答えが見えずとも突っ走った熱血漢の物語」といったところでしょうか。カナタの答えなど釈然としない点は確かにあったものの、それを王道の成長物語をじっくり描くことで気にせずやり切ったような感覚を覚えました。むしろその辺りが丁寧だったからこそ、視聴者側も気持ちよく見られたのかもしれません。

 尖った要素などはほとんどなかったものの、だからこそ安定した内容を送ることが出来た作品だったと言えます。このウルトラマンとしてのスタンダードな作品作りはオマージュ元である『ダイナ』を彷彿とさせる点もあって、ダイナらしさも感じられますね。これもまたウルトラマンらしさに溢れているとして、半年間楽しんで見ることが出来ました。

 

 

 では以下、各キャラクターについての所感です。

 

 

アスミ・カナタ/ウルトラマンデッカー

 本作の主人公にして「努力の天才」。何に対しても全力で取り組む、わかりやすい熱血青年でした。誰とでも正面からぶつかってわかり合おうとする気持ちよさを持っており、その想いが最後までブレなかった点でも好感が持てる人物に仕上がっていたと思います。

 一方で考えなしではなく、意外と考え込む一面を抱えていたのが興味深いところ。悩みに関しても誰かにすぐ相談するのではなく、1人で抱えてしまいがちなところがあって実際はかなりナイーブな内面が描かれていたように感じます。しかし上述の正面からぶつかる性質だからこその悩みがちなキャラとも取れますし、何だかんだでそれがまた素敵な主人公でしたね。

 

 

キリノイチカ

 ヒロインにして「真っすぐの天才」。明るく心優しい存在として描かれており、そういった点ではカナタよりも一般的な感覚の持ち主でした。最終回でカナタの正体と彼が無理していることに意義を唱えるシーンに関しても、「普通の人ならそういう反応になるだろう」として視聴者の代弁を務める役割が多かったように感じます。

 またスフィアのせいで夢を奪われたという経緯から、他人に寄り添う活躍を見せることもありましたね。自分と同じように未来を閉ざされてしまった人たちに対して「あなたは1人じゃない」とはっきりと言ってくれる優しさには見ていて感極まってしまうこともありました。目立ちすぎず影も薄すぎない、良い塩梅の活躍だったと思います。

 

 

リュウモン・ソウマ

 カナタ&イチカと共に戦い抜いた「見つめる天才」。完璧主義者で何でも合理的にこなそうとするライバルキャラ感溢れる人物というのが当初の印象でした。しかしただの頭が固い性格ではなく、相手の意見にも耳を傾ける柔軟性も兼ね備えているのが魅力的。カナタと多少の衝突はあれど、すぐに互いの考えを尊重し合ったことには感心させられました。

 ぶっきらぼうなようでいて気配りも忘れないキャラは終盤になればなるほど輝いていたように感じます。特にカナタがデッカーであることを知ってからは、彼の戦いを後押ししてくれるナイスなフォローを見せてくれていました。最終的にはカナタの優しさとは正反対なものの彼と想いを共有する、素晴らしき理解者として完成していましたね。

 

 

カイザキ・サワ

 新生GUTS-SELECTの副隊長。新人3人が心身ともに若かった分、隊長と共に彼らを導く思慮深さを見せてくれていました。それでいて綺麗で若い女性扱いされないことであからさまに拗ねるなど、案外可愛いところも多く見せていたのが素敵でしたね。

 しかし他のキャラと比べると若干影が薄かったようにも感じてしまいます。主役回と言えるものが1つ(第20話も含めれば2つ?)しかないのも、副隊長個人の活躍の無さを表しているように思えてなりません。怪獣の権威という特徴をもっと活かしてほしかったところです。

 

 

ムラホシ・タイジ

 新生GUTS-SELECTをまとめあげた隊長。近年どころかウルトラシリーズおいても屈指と言えるほどの素晴らしい上司でした。各隊員のことをよく観察し気遣いながら、優しい口調で時には叱咤激励しつつ導く良きリーダーだったと思います。1話の不穏な発言は何だったのか、と思えるくらいの良識に溢れた人でした。1話でムラホシ隊長のことを疑っていた人は隊長に謝ろうね!疑ってごめんなさい!!!

 また隊員だけでなく他の人たち、果ては別の星から来た異星人にさえも手を差し伸べる優しさには感動させられます。料理が得意など親しみやすさも抜群で、最後まで人格者としてその暖かな存在感を放っていましたね。

 

 

HANE2(ハネジロー)

 カナタたちを支えたAIユニット。『ダイナ』のハネジローと似た見た目とネーミングから最初は可愛いマスコットを想像していたものの、蓋を開けてみればガッツリ男声のAIとして出てきたので驚きました。しかもカナタに対しては(カナタ自身が望んだものの)敬語をかなぐり捨てた気安いタメ口になるのでギャップも激しかったですね。

 しかし話が進むにつれそんなキャラにも魅力を覚えました。回を重ねるごとにカナタの想いを理解したうえで成長していき、最終的には彼のパートナーとして立派に成長したと思います。そしてどんどんAIらしからぬ脳筋の道へ……ガッツホークやテラフェイザーを操縦してデッカーの相棒を務めあげた点も見事の一言です。AIの枠組みを超えた熱血ぶりにも感動させられましたね。

 

 

アガムス(アサカゲ・ユウイチロウ)

 GUTS-SELECTのメカニック担当、そして本作のヴィラン当初はどこかぎこちないものの悪い人ではないという印象を与える科学者だった中、後半にその正体を明かす流れには本当に衝撃を受けました。ある程度不穏な要素を感じ取っていたものの、彼こそがスフィアを連れてきた事実はあまりにも予想外でしたね。
 ただその後は如何にも苦しそうな語り口や悲しい過去が明かされ、一気にお労しい存在として同情を寄せることに。レリアの件から自罰的になって、無理をして悪役を演じている感が否めなかったです。終盤まで本当に痛々しかったものの、最後にはカナタに夢を託して救われて良かったと思います。

 

 

 さてデッカーの物語は来月公開される劇場版、最終章へと続きます。半年以上続いたカナタの物語のフィナーレとして、どのような結末を見せてくれるのか非常に楽しみです。デッカーの正体や今後の展開が明かされる可能性にも期待しつつ、公開を楽しみに待っていたいと思います。

 

 

 ではまた、次の機会に。

 

 

↓以下、過去の感想一覧です。

 

 

metared19.hatenablog.com

metared19.hatenablog.com

metared19.hatenablog.com

metared19.hatenablog.com

metared19.hatenablog.com

metared19.hatenablog.com

metared19.hatenablog.com

metared19.hatenablog.com

metared19.hatenablog.com

metared19.hatenablog.com

metared19.hatenablog.com

metared19.hatenablog.com

metared19.hatenablog.com

metared19.hatenablog.com

metared19.hatenablog.com

metared19.hatenablog.com

metared19.hatenablog.com

metared19.hatenablog.com

metared19.hatenablog.com

metared19.hatenablog.com

metared19.hatenablog.com

metared19.hatenablog.com

metared19.hatenablog.com

metared19.hatenablog.com

metared19.hatenablog.com

metared19.hatenablog.com

metared19.hatenablog.com

metared19.hatenablog.com

metared19.hatenablog.com